試合レポート

堺東vs福井

2015.09.06

雨天による中断をものともせず堺東が7回コールド勝ち。誰より大きな声を出した福井の背番号21

リリーフのマウンドに上がった丸瀬翔琉(堺東)

 3者連続の四死球で無死満塁。雨の降る中、堺東の先発・井上知磨(1年)がいきなり大ピンチを作ると井上孝介監督は早くも丸瀬翔琉(2年)をマウンドに送る。
「さすがの彼も緊張していた。よく練習する子なんで彼ならばと託したんですが」井上にとっては新チーム初の公式戦で結果が残せず苦い思い出となったが、この経験は今後に活きるはずだ。

 無死満塁、雨が降り続きぬかるむマウンド、打席にいるのは福井の4番・林荘太朗(2年)とかなり厳しい場面での登板となった丸瀬は元々コントロールの良いタイプだったが最近は乱れることが多く「集中してストライク入れて投げよう」と丁寧に投げ、林をライトフライに打ち取る。右中間よりのやや浅めのフライに3走・首藤倭(2年)は自重したが、スタートを切ったと勘違いした2人のランナーが飛び出してしまい、挟殺プレーの間に弾き出される形で首藤がホームを狙うがタッチアウト。二死一、二塁で5番・古里優樹(2年)もセカンドゴロに倒れ無得点。走塁ミスで絶好の先制機を潰してしまった。

 福井の先発マウンドに上がったのは背番号6のキャプテン・新宅省太郎(2年)。背番号からわかる通り本職は野手だが8月上旬に行う毎年恒例の岡山合宿中、練習試合で投手が足りなくなり登板すると好投。そこから投手もするようになった。中学時代は捕手も含めてどこでも守れたオールラウンドプレーヤー。投手歴1ヶ月で公式戦の先発マウンドを任された。


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2015年秋季大会

本塁打を放った福岡誠琉(堺東)

 今夏大阪ベスト8の堺東打線は初回、ブルペン投球をノック前に終わらせノックの際にはショートを守っていた急造投手に先制パンチを浴びせることに成功する。旧チームからレギュラーの1番・福岡誠琉(2年)が右中間へのツーベースで出塁し三盗を決めると2番・土山泰知(2年)が四球で歩く。ここで雨が強くなり試合は一時中断。水取り、土入れを行い約50分後に再開されると坂口啓太(2年)がレフトへタイムリーツーベースを放ち1点を先制。キャプテンで4番の池藤真史(2年)の打球はセカンドライナーで二塁ランナーも戻り切れず併殺となるが、5番・宗倉祐志(2年)がセンター前にタイムリーを放ちさらに1点。2回にも池藤のライト前ヒットで二塁から土山が還りリードを広げた。

 グラウンドの所々にうっすら水が浮き守備の負担が大きいコンディションの中、丸瀬が好投を続けると、5回に宗倉の2本目のタイムリーと代打・浅野航輝(2年)の2点タイムリーで3点追加。6回は先頭の福岡誠琉が「芯に当たって完璧でした」と打った瞬間にスタンドインを確信するホームランをライトに放ち7点目。
福井は球に力のある古里、背番号1の林をマウンドに送る継投と降板後はショートに入った新宅の好返球で8点目は許さない。コールド成立寸前の7回に二死満塁とチャンスを作ったがあと1本が出ず。最後までホームが遠かった。

 堺東大阪桐蔭をあと1歩のところまで追い詰め、ベスト8と結果を残したが、新チームの練習試合での成績は五分五分といったところ。それだけに投打の噛み合う試合を公式戦で出来た意味合いは大きい。勝ち進めば準々決勝で夏に敗れた大阪産大附と当たる。
打線を引っ張る福岡が「夏のリベンジを果たしたい」と話せば井上監督も「あそことは絶対やりたいなと。そこまでは成長を続けながら」と今後の目標を見据えていた。


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2015年秋季大会

背番号21の小林百奈(福井)

 残念ながら敗れた福井は部員数が少なくベンチ登録は16人。しかし、スタンドには背番号21の選手がいた。
兄の影響で野球を好きになったという小林百奈(2年)は、女子選手は公式戦に出場することが出来ない、という高野連の規則があるためベンチ入りは出来ないが背番号21を背負いグラウンド上の選手と一体となって戦う。

 中学時代はソフトボール部に所属。福井のオープンスクールで野球部の見学に行き、そこで「ソフトボールをやっていました」と伝えると監督から「じゃあ打ってみろ」と声をかけてもらえた。中学時代も野球部に入りたかったが叶わずにソフトボール部へという経緯があっただけに高校ではその思いを諦め切れず、1年時はマネージャーとしてチームを支えていたが、やがて選手兼任に。そして「どっちも中途半端になるのはイヤ」とこの夏の新チームから選手として部員と共に汗を流す。

 最初はどうコミュニケーションとっていいかわからずに、マネージャー相手のキャッチボールか1人でネットに向かって投げることが多かった。他にもグラウンドに立ちたいとの思いから試合前のグラウンド整備に紛れ込もうとしたが球審に「女子部員は黒土部分に入れないから」と止められた過去がある。
「悔しかったんで、応援の声でアピールしよう」と試合中はベンチの部員よりもランナーコーチよりも大きな声で「ランナー、ノーアウト。ライナー気を付けて」と檄を飛ばす。

 今では帰り際に「感動しました」と観戦に訪れた人から声をかけられるほどになった。卒業後は女子プロ野球への挑戦も視野に入れているが、まだトライアウトの1次選考を通過出来るかどうかという段階でまずは自分の技量を磨くことに専念する。それでも野球は続けていきたいと志を立てており、今後の成長と活躍に期待だ。

(文=小中 翔太


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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