天理vs近江
吉村(天理)
打って繋いで、4番が“魅せた”意識の高さ
序盤から着実に得点を重ねた天理が、近江の投手陣に13安打、11点を挙げ大勝。昨秋、今春と、3季連続の近畿大会制覇に王手をかけた。
最後まで攻撃の手は全く緩まなかった。初回に近江の先発・広瀬亮太から鮮やかに2点を先制。3回には広い舞洲ベースボールスタジアムの最深部に突き刺さるソロアーチ。5回はヒットと四球でつないで3点を奪うなど、近江にまったく主導権を渡さなかった。その得点にいずれも絡んでいたのが4番の吉村昴佑だった。
新チーム結成直後から不動の4番に座ってきたものの「これまで納得のいく結果を残せたと思える試合がなかった」と吉村。
県大会では打撃が振るわず、自主練習では遅くまでバットを振りこんできた。近畿大会に入り、初戦の立命館戦、準々決勝の大阪桐蔭戦ではいずれもタイムリーを放っているが、橋本武徳監督は「4番ではなくて、4番目のバッターですよ」と、あえて突き放した。
だが、吉村にも天理の4番としての意地がある。「県大会の決勝で智辯に負けて、もっと1球に食らいつく気持ちがないとダメだと思いました。自分が何でもいいから出塁すれば、後ろに打てるバッターが控えていますから」(吉村)。
その意識が象徴されていたシーンが5回。一死・二、三塁で打席が回ってきたのだが、ファウルで粘り続けた球数が何と16球を数えたのだ。「なかなか前に飛ばなくて大変でした」と本人は苦笑いしたが、1球1球に粘っこくすがられると投手が嫌がらないわけがない。結局、根負けした山田の直球が抜けて四球に。その球を捕手が後逸して1点を追加した。5番の船曳翔が倒れた後に、6番の木村秀が四球で続き、7番の漆原広樹が打った二ゴロが二塁手の失策を誘い、さらに2点をもぎ取った。
吉村(天理)
吉村の意識が、1打席、1打席でもろににじみ出てつかんだ勝利。今日は3打数3安打4打点と、4番らしい打棒を見せつけた。「新チーム結成時に比べて、1球に対するこだわりや、走者がいる時の打撃が変わったと思う」と、吉村は成長を自負している。
だが、これで満足してはならない。次戦の決勝で戦う智辯学園には、県大会の準決勝で0-8と大敗を喫している。
吉村自身も、4打数無安打と、智辯学園のエース・青山大紀にまったく歯が立たなかった。
「明日勝つのと負けるのとでは全然違う。明日は全員で勝ちに行きます。今日の結果を意識せず、明日もしっかり繋いでいきたい」。
約1ヵ月前、大敗した自分たちとは違う。その意地を、明日の決戦で見せつける準備は整った。