試合レポート

早稲田実業vs関東一

2017.10.25

守備の人・横山の2ラン!早稲田実、強豪対決を制する

早稲田実業vs関東一 | 高校野球ドットコム
本塁打の横山を迎える早実ベンチ

 優勝候補同士の注目の対決は、早稲田実業のベテラン・和泉実監督をして、「初めてですね。難しい環境の中でよくやってくれました」と語るように、雨で3度も中止になった末に実現した。当初の神宮第2球場から、町田市小野路球場に移ったことで、千葉県白井市に合宿所がある関東一の米澤貴光監督は、朝4時に起きて、午前9時の試合開始に備えた。

 関東一には石橋康太早稲田実業には野村大樹という、ともに3番打者で捕手という強打者を擁する。1回は、両者でその明暗が分かれた。

 1回表、二死後打席に立った関東一の石橋は、レフトに大きな打球。これを早稲田実業の左翼手・齋藤恵太がフェンスを背にして好捕。得点を許さない。

 その裏早稲田実業は二死後、3番の野村がレフトの大飛球。打球は関東一の石橋よりフェンスの高い位置にボールが当たり、二塁打。続く4番・齋藤の打球は三塁ベースに当たり打球の方向が変わるラッキーな二塁打で早稲田実業が1点を先制する。

 それでも関東一は、4回、石橋のレフトへの打球を早稲田実業の左翼手・齋藤が、グラブに当てながらも、足を滑らせ後逸。石橋は二塁に進み、相続の犠打と内野ゴロで生還し、同点に追いつく。

 1回裏に不運な失点をした関東一の先発・平川巧であるが、2回以は立ち直り、得点を許さない。強豪同士の1点を巡る、激しい攻防が予想された。しかし、1対1の均衡は、意外なところで崩れる。

 関東一が同点に追いついた直後の4回裏、中前安打の5番・生沼弥真人が、6番・中川広渡の犠打で二塁に進み、打席には7番・横山優斗が入る。「バッティングは期待されていないので、守備で貢献したい」と言う横山であるが、「前の打席で、カーブで三振を取られたので、絶対来ると思っていました」と言うカーブを叩くと、ライトフェンスを越える本塁打となり、2点が入った。


 この2点は大きかった。早稲田実業の先発・雪山幹太は、夏の大会の経験を経て、堂々とエースの風格が出てきた。この試合では、ストライクゾーンを幅広く使い、関東一打線を封じる。早稲田実業は6回裏にも雪山の二塁打などで1点を追加する。

 しかし7回表は、関東一の5番・野口洋介の左前安打、8番・大久保翔太の右中間への二塁打などで二死二、三塁となったところで、早稲田実業は雪山を三塁手にし、マウンドに1年生の伊東大征を上げた。

 関東一の米澤監督が「伊藤君の方が、キレがありました」というように、力強いストレートと、最後はキレのいいスライダーで代打・谷口龍汰を三振に仕留め、早稲田実業はピンチを脱する。

 早稲田実業は8回裏にも敵失に乗じて1点を取り、5対1で強豪対決を制した。

 7番打者である横山が本塁打でチームの勝利に貢献した形になったが、清宮幸太郎が抜けた分、粒が小さくなったのは確かで、野村大樹は「つなぐ野球をしたい」と語れば、和泉監督も「高校野球に戻った感じ」と語る。ただし、雪山、伊藤という投手陣がしっかりしており、その分、前のチームに比べ、安定感がある。

 早稲田実業にとっては、一難去ってまた一難。次の相手も強豪である国士舘。雨の影響で、10月もあと1週間という段階でようやく2回戦が終わるという、かつてない遅いペース。ここからの、コンディションの持って行き方も重要になってくる。

 関東一は、5年前の秋に初戦で敗れて以来、最低でも8強以上の成績を収めていたが、早稲田実業の前に2回戦で敗退した。それでも関東一の米澤監督は、「チームとして完敗でした。もう一度鍛え直したい」と語った。二松学舎大附に続き、関東一も春はノーシードで戦うことになる。ひと冬超えた関東一は、他校にとって、一層驚異の存在になるに違いない。

(文=大島 裕史

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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