Column

帝京はなぜ9年ぶりの優勝ができたのか?1年間の軌跡を振り返る

2020.08.09

 独特の雰囲気で始まった東東京大会は帝京の優勝で幕が閉じた。多くのOBから帝京の優勝が祝った。そんな帝京がなぜ優勝できたのか、1年間の軌跡を振り返っていきたい。

転機となった加田拓哉 主将就任

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東東京大会で優勝を果たした帝京

 まず今年の帝京にとって大きな転機になったのは主将・加田拓哉。大阪出身の加田は中学時代も主将経験があり、主将はやりたくなかったという。

 それでも、「やるからには中途半端はやりたくない」と決意を固め、同学年でも厳しく指摘しあう雰囲気を作った。前田監督から加田のキャプテンシーを高く評価している。

 「良い働きをしています。今まで加田みたいなキャプテンはなかなかいません。悪いものは悪いと、そのメリハリがついていますし、最近の主将では一番。甲子園に出場した時の主将を見ているようです。

 選手の行動を変えるには、指導者よりも同級生からの指摘が一番だと思うんです。だけれど気持ちが優しいのか、傷つくことを恐れて、指摘はなかなか難しい。加田はそれができる。私が言いたいことは全部いってくれますし、頼もしいですよ。今までの主将は悪いわけではありませんが、どこか物足りなさがあった。加田は本当にいいです」

 そして秋の大会まで強打を磨き、秋6試合で合計8本塁打。手ごたえをつかんで、冬の練習に入り、順調に今シーズンへ向けて準備を進めていた。

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帝京もコロナで長期の活動自粛 強打から1点を大事にする野球へ

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練習を見守る前田三夫監督(帝京)

 帝京は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2月末から休校になり、6月1日まで活動ができなかった。前田監督は準備不足を不安点に挙げ、その影響は否めず、帝京は打者の仕上がりが遅く、持ち味の強打が発揮できなくなっていた。

 打の中心である加田、小松涼馬も大会中、思うような打撃ができずに悩んでいた。そこで、帝京は足、小技を絡めた攻撃に転換。今年から急浮上した俊足・杉本直将毅を中心に果敢に盗塁。また準々決勝の日大豊山戦では6対0の場面でもスクイズをして、点をもぎとった。この場面について前田監督は「1点の重みを理解してほしい」と語った上での作戦決行だった。

 それは準決勝の東亜学園戦でも生きて、8回裏、2対3の1点ビハインドの場面で、代打・菊池祐汰がスクイズ。これが成功し、点をもぎ取った。また決勝戦の関東一戦でもスクイズで同点に追いついた。勝負所でスクイズを決める選手の勝負強さが素晴らしかったと言える。

 こうした野球ができるのは盤石な投手陣にある。188センチの長身から130キロ中盤の速球と2種類のツーシームで勝負する大型左腕・田代涼太、140キロ近い速球とカットボール、ツーシームで勝負する柳沼勇輝、そして140キロを超える速球で圧倒する右腕・武者倫太郎の3枚看板で大量失点を防ぐことで堅実な野球が実践できたのである。

 この世代は本気で甲子園を狙えるチームだった。それも中止となり、前田監督は3年生全員に電話を行い、励まし、そしてここまで支えてきた両親に感謝しなさいとメッセージを送った。

 そして8月8日、最高の形で結果を収めることができた。

 8月10日、西東京大会優勝の東海大菅生との東西決戦を残すのみ。激しい戦いを制し、正真正銘の東京王者となる。

(記事=河嶋宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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