Column

青山学院高等部(東京)【後編】

2016.01.22

 前編では青山学院の選手たちの自主性を培った練習法を紹介してきた。後編ではこうした練習を通して、どんな選手になっていきたいのか、そして選手たちが目指す野球とは何だろうか。

求めるは野球(ゲーム)が上手い選手

実戦練習では選手同士で話し合い(青山学院高等部)

 日々の練習メニューは安藤 寧則監督ならではの発想であるが、これらの練習内容から見てわかるように、常に選手自身で考えて動くスタイルのメニューが時間いっぱい繰り返される。

 キャプテンの石野田 颯馬は、
「一人ひとりが誰かに言われて動くのではなく、自分で考えて『こうなりたい!』と自分で考えて動ける。そういうチームが青山学院だと思っています」と話す。
しかし、それは選手たちにとって苦しいことでもある。

「すごくきついです。管理される指導なら、言われたことをただやっていればいいけど、管理されてなくて、手を抜こうと思えば、自由にそれが出来てしまう環境というのは、自分たちで考えてやるべきことをやっていかないといけないので、実は管理されてないほうが辛いんです。でも、勝ちたいっていう思いが一人ひとりあれば、そういった練習がプラスになっていくと思っています」そう語る2年生部員たち。

 そんな選手たちに、安藤監督が求めているのは、「野球(ゲーム)が上手い選手になる」こと。

「野球(ゲーム)と技術は違うということはいつも話しています。練習でも試合でも、アウトを常に探している感覚があるかどうか。どうやって3つのアウトを取ることを考えているのか。走塁でも、積極的に走れているか。相手の隙をついたプレーができるか。最低限のことは、チームで決めて、あとは自分の判断で動ける選手になってほしい」
安藤監督は「3つのアウト」と話したが、選手たちは、こんなことを言っていた。

「実戦の時に、自分たちは3アウトで終わるのでなく、4つ目のアウトも取ろうということを話しています。3アウトを取ったあとでも、ランナーが塁を回っていれば、そのランナーも刺しにいくけど、それを『4つ目だから』と思っているようなプレーをした選手がいたら、その時はみんなで強く言います。でも、トライしようとしている姿が見えた中でのミスなら強くは言いません」

 トライしようとしている姿が見えたら「良し」とする。
その言葉に青山学院野球の真髄が垣間見える。彼らは、決してスマートさを求めているわけではない。

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[page_break:僕たちは野球の質で勝ちたい]

僕たちは野球の質で勝ちたい

部員たちで盛り立てながらトレーニング!(青山学院高等部)

 安藤 寧則監督が全幅の信頼を置く茂久田 裕一コーチは、監督の口癖を教えてくれた。
「『良い子、良い子が本当に良い子か?』これはよく選手たちに言っています」
学校でも、先生に良い子と評価される生徒が本当に良い子なのか?と、選手に問いかけているのだが、ゲームに勝てる選手とは、果たしてそうだろうか?

 野球に置き換えれば、実戦練習の中で、選手が危なげない走塁をすれば、安藤監督はすぐに練習を止める。
「なんやセーフか!次の塁でアウトにならんかい!ここぞという時にしびれるようなプレーが出ないような意気地なしはいらんぞ!」

 終盤3点ビハインドの場面でもダブルスチールが出来るような走塁を。
その1プレーが決まれば、チーム全体の力が湧き出てくるような、そんなプレーが出来る選手になってほしいと考えている。その1チャンスをモノにするためのベストな判断を下せる力。それこそが、青山学院野球部が磨き続けているもの。この力を高めることで、青山学院の選手たちは、入部時は越えられないと思っていた壁も、次第に越えていくことができるようになった。

「僕たちは野球の質で勝ちたいんです」

 そう話してくれた青山学院の選手たちに、「具体的にどんな…」と投げかけた言葉に対して、すぐに明快な回答が返ってきた。

「もし、二塁ランナーのホームに還るタイムが他の高校よりも1秒遅いとしても、その1秒分を打った瞬間の打球の判断を早めることで、他の高校と同じレベルになれます」
「守備でも、ランナー一、二塁でフライが上がった時に、一塁ランナーも二塁ランナーもどちらもハーフウェイを取っていた場合、どちらに投げれば確実にアウトが取れるかを即座に判断することが出来ればピンチがしのげます」
 

 彼らの言葉に、迷いはない。
それは常に、日々の練習で自ら考え、動き、実践しているからだ。

(文=安田 未由


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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