足首の硬さとスプリント能力
走るときの接地時間が短くなるとスプリント能力は向上する?
皆さんの中には足首がどうしても硬くて、うまくしゃがみ込めない、低い姿勢で体を保持することがむずかしい、という人がいるかもしれません。足首は地面からの反力を受け、その力が体に伝達することによってスポーツ動作につながっていきます。ところが足首が硬いとどうしても膝や股関節、腰背部などに負担がかかりやすくなり、膝痛や腰痛の原因が足首にあったということも考えられます。ケガ予防の点からみると足首は柔らかく、力を分散させるようにすることが求められます。
一方でランニングなどスプリント能力、いわゆる速く走ることが問われるとき、大きなパワー(力×スピード)を生み出すことが必要です。さまざまな研究からスピードが速くなるに伴って、地面との接地時間は短くなることが指摘されており、速く走るためには接地時間を短くして、足の回転速度を上げるようにすることが求められます。ここで足首の柔軟性を考えてみると、接地した瞬間に足首は関節を曲げることで力を吸収し、そこから前への推進力を生み出しますが、足首が硬い状態は関節があまり曲がらないため、よりダイレクトに力を受けて推進力を生み出すことになります。ブレーキのかかりやすい踵着地ではなく、つま先着地やミドルフット(中間部)着地を実現させるために、足首をロック(固定)した状態で、アキレス腱やふくらはぎの筋肉などを使ってバネのように力を伝達させるといった方法で走ることもあります。足首の硬さはとらえようによってはパフォーンマンスアップに貢献するかもしれません。
ただし足首が硬い、もしくは足首をロックして走ることは、アキレス腱やふくらはぎの筋肉をはじめ多くの部位に負担をかけることになります。このような動作を続けてもケガをしないようにするためには、大きな外力にも耐えられるだけの筋力をつけることが必要不可欠です。特にアキレス腱、ふくらはぎ部分、太もも部分などはトレーニングを継続的に行うようにしましょう。またバネのようにしなやかな動作を実現させるためには筋力とともに筋肉の柔軟性も高める必要があります。足首が硬い選手はその特性を活かしつつ、ケガ予防の観点からは筋力強化、柔軟性の向上が大切であることを覚えておきましょう。
文:西村 典子
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