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両親の愛情に支えられて成長したプロ志望 未来沖縄の二刀流左腕・松竹 嬉竜【後編】

2021.10.01

 先日プロ志望届けを提出した松竹 嬉竜(KBC学園未来沖縄)。誰もが羨む大きな身体を持ち、高校3年間で驚くほどの成長を見せた。今すぐプロで活躍するというわけにはいかないが、将来性を買い、しっかりと下積みを経験させたならば、周囲が目を見張るような選手になる可能性を持つと言っても過言ではないだろう。

 KBC学園未来沖縄野球部監督・神山剛史氏の言葉を交えながら、松竹 嬉竜選手を紹介しよう。

打者松竹嬉竜の進化

両親の愛情に支えられて成長したプロ志望 未来沖縄の二刀流左腕・松竹 嬉竜【後編】 | 高校野球ドットコム
松竹嬉竜(未来沖縄)

神山監督「それまで無かったのに、いとも簡単にホームランを打てるようになった。」

 2020年春の県大会まで、全くといっていいほど打てなかった打者・松竹 嬉竜が、夏に2本の長打(二塁打×2)をマーク。新チームへ移行した秋の大会初戦の相手は、一年前に完膚なきまでに叩きのめされた糸満だった。しかし松竹 嬉竜は3回、二死一塁で回ってきた打席で、[stadium]コザしんきんスタジアム[/stadium]のライトスタンドへ放り込む2ランホームランを放つ。先発したマウンドでは4回を投げ被安打1本と、糸満打線を全く寄せ付けずお役御免の降板。10-1のコールドでチームは勝利した。

 高校野球二度目の冬を越した松竹 嬉竜は2021年の春でも、その打棒を見せつける。二回戦の嘉手納との試合では8回途中から出場すると、9回の第2打席で見事なソロアーチ。追加点が欲しかったチームの勝利に貢献した。

 続く小禄戦でも7回に代打で登場。すぐさまヒットを放つと、9回の第2打席では大きな右越え三塁打をマークした。1点差と詰め寄る小禄に対し、7回裏途中から三番手としてマウンドへ上がると、打者11人をノーヒットに抑え込んだ。先発メンバーとして臨んだ準々決勝の沖縄工戦こそ、翁長、上原の沖縄工両投手から快音は聞こえず、投げる方も9回に2点タイムリーを浴びて負けたが8打数3安打、内2本の長打をマークした。

 4番に座った最後の夏、初戦の南部商戦の第二打席で松竹は魅せる。二死満塁からの2球目を思い切り振り抜くと、ライトの芝生席に弾むグランドスラム。敗れた浦添商戦でも犠牲フライを含む2打点をマーク。2試合6打点の荒稼ぎをしてみせた。

神山監督「入学当時から30kmほどアップしたストレートは現在MAX145Km。ホームランのコツを覚えたように、ピッチングにおいても力の出し方をさらに覚えると、もの凄いボールを投げるんじゃないかと感じています」

 プロの目は、僕らには分からないほど選手を見ている。打者松竹でいくのか投手松竹でいくのか。まだまだ投打ともに未熟で発展途上の嬉竜だからこそ、プロで覚醒したら二刀流も夢じゃない。そんな気さえ起こさせる選手。そんな松竹 嬉竜を支えたのがご両親、そしてKBC学園未来高校沖縄だ。

[page_break:松竹嬉竜の精神と身体を支えた両親。周期的に記録していった指導陣]

松竹嬉竜の精神と身体を支えた両親。周期的に記録していった指導陣

両親の愛情に支えられて成長したプロ志望 未来沖縄の二刀流左腕・松竹 嬉竜【後編】 | 高校野球ドットコム
松竹嬉竜(未来沖縄)

 嬉竜の父は、高校時代バスケットボールで全国準優勝の実績を持つ。主に松竹 嬉竜の精神面をサポートすることで、嬉竜は練習に身が入っていった。同じくスポーツをしていた母は、嬉竜の身体を大きくするサポートに徹した。弁当箱を2つ、時には3つも用意したという。

神山監督「ご両親の支えで、嬉竜は入学時から20Kg以上ウエイトが増えました」

 またKBC学園未来高校沖縄は、チームで定期的に計測している体重や筋肉量がある。他のメンバーが苦戦する中、嬉竜は指導陣が示す数値を必ずクリアしていった。

神山監督「数値をクリアするためには、日頃の食事やウェイトを自主的に実施しないとクリアできないように設定してます」

 つまり、ウェイトトレーニングはもちろん食トレでも気を抜かず自分のためにやりきる気持ちが無ければならないが、そこはまだ高校生。楽をしたい、美味しいものを食べたいと緩んでいると、例え練習で良いものを見せてもKBC学園未来高校沖縄の指導陣には見透される。親、指導陣、そして自分。どこか一角でも満足して止まってしまったら綺麗な三角ラインは出来ない。固く折り合う美しい三角形を崩すことなくやり切る強さは、いまの自分に満足していない飽くなき姿勢があるからこそ。それが松竹 嬉竜

 それゆえ、時には厳しい言葉を投げかけられても、エースとしてしっかりと指導者の言葉を受け止め、何がダメで何をどうすれば自分にとって良い方向に向くのか。常にそれを考えて行動してきた松竹嬉竜。満足しないその芯の強さがプロの世界でも身を結び、さらなる成長を遂げていくことだろう。

(記事:當山 雅通

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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