樟南vs沖永良部

谷口佑歩(樟南)

　沖永良部は4回、暴投と1番・平雄馬（1年）のスクイズで2点を先取した。

　5回表は一死満塁と畳みかけるチャンスを作ったが、5回からリリーフした樟南・谷口佑歩（2年）が連続三振で打ち取り、沖永良部に傾きかけた流れを絶った。

　その裏、樟南は相手のエラーで1点差とし、なおも一死満塁で6番・松崎仁龍（2年）が二遊間をしぶとく抜いて逆転に成功した。

　6回は3番・折尾昂靖主将（2年）のライト前タイムリーで突き放し、7回に再び1点差に詰め寄られたが、その裏に9番・西平幸四郎（2年）のセンター前タイムリーで再び2点差とし、粘る沖永良部を振り切った。

　沖永良部は、今春に完封負けした樟南と2季連続初戦での対戦だった。「先輩たちの悔しさは晴らす」（山元隼風主将・2年）意気込みで、押し気味に試合を進めていたが、金星にはあと一歩届かなかった。

　名前負けしそうな名門校が相手でも、堂々と落ち着いて野球ができたのは「先輩たちから受け継いだ伝統」（山元主将）があるからだ。春は樟南と互角の投手戦を繰り広げ、夏はシード鹿児島城西に競り勝った3年生の「ＤＮＡ」は新チームにも引き継がれていた。

エース勝間海斗（2年）は丁寧な投球を心掛け、守備は堅実に守り、攻撃ではファーストストライクから積極果敢に打っていく。序盤は無失点でしのぎ、先に2点を先取し、一気に畳みかけそうな展開にまでは持ち込むことができた。

　それでも2点差で敗れたのは「ここぞという場面で、あと一本が出たかどうか」（前田直紹監督）の差だった。5回表一死満塁と一気に畳みかける好機を作りながらも、沖永良部は連続三振で生かせなかったのに対して、相手はその裏一死満塁で勝ち越し適時打が野手の間をしぶとく抜けた。そこに指揮官は「伝統校の見えない力」を感じた。

　「まだまだ鍛え方が足りないということ。冬場は吐くまで練習する」と前田監督。何を鍛えればいいかは、この試合の中にヒントがある。「常にピンチを想定して守り、常にチャンスを想定して打撃をすること」を山元主将は具体的な取り組みに挙げていた。

（写真・文＝政純一郎）

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