試合レポート

都立東大和vs駿台学園

2016.04.06

執念みせた東大和、8回に追いつき9回サヨナラ勝ち

都立東大和vs駿台学園 | 高校野球ドットコム

東大和・田中英輝君

 夏のシード権をかけての戦いは、序盤の様子を見合った展開から、中盤は点の取り合いと守り合いという見ごたえのある内容となった。

 序盤はお互いに相手の探り合いというような感じになっていた。ともに四球の走者を出すと、積極的に走らせてみるという動きも見せていた。

 東京都の春季大会は前半が連戦となることが多いが、都立東大和はエースの藤原君の負担を極力少なくしたいという福島靖監督の考えもあり、背番号10の田中英輝君が先発した。思惑としては、6回までは、何とか藤原君を使わないで戦えればというゲームプランはあった。

 その期待に応えて、3回までは、田中君は何とか自分の投球ペースでのらりくらりと交わしていたが、4回先頭の4番菅君に中前打されると神谷君、吉川君、堀越君と4連打となって2点が入った。

 なおも無死一二塁という場面で、福島監督はたまらず右下手投げの青柳将也君を送り出した。スピードがあるわけではなく、力で抑えられるという投手ではない。

 それでも、「自分で工夫して頑張る子ですし、頭のいい子ですから…。振ってくる相手にはハマれば面白いんですよ」という思いもあった。幸運だったのは、代わったすぐに、いきなり捕手の大谷君が牽制で二塁走者を刺したことだった。さらに、8番伊藤智大君に対しても上手に打たせて絵に描いたような内野ゴロ併殺となった。

 続く5回は、低めに集めて3人を飛球で打ち取った。これで、都立東大和に流れが来た。その裏都立東大和は二死走者なしから、その 青柳将也君が一二塁間を破ると、内野ゴロ失策もあって一二塁となる。

 ここで、「入ってきたときには身体も細いヤツだったんですけれども、これまで2年間一生懸命に一番バットを振った男」と福島監督も評価する藤村君がしぶとく一二塁間を破ると、二走の 青柳将也君はやや足にハンデがあるのだが、一生懸命に走ってホームイン。なおも二三塁となった場面で、2番神山君が右前へクリーンヒット。2者が帰って都立東大和は逆転に成功した。

 


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駿台学園・伊藤智大君

 ところが、駿台学園もすぐに反撃。6回二死走者なしから、神谷君内野安打、吉川君が左中間二塁打すると、堀越君が左前へはじき返して2点適時打。青柳将也君の球が、いずれも少し高く入ってしまい、打ち頃のコースとなったところを振りの鋭い駿台学園打線が捉えた。連続安打が出る爆発力は駿台学園の打線の特徴と言ってもいいだろう。

 こうして、再び駿台学園はリードを奪ったのだが、3イニングを逃げ切れなかった。
 都立東大和は8回には青柳義徳君と4番錦戸君の安打で一死一三塁から、大野君の右犠飛で生還。同点となった。一死一塁から、左前打で三塁まで進んだ青柳義徳君の好走塁が、結果的に犠飛を導き出した。この積極性も鮮やかだった。

 延長も視野に入ってきた展開となったが、都立東大和は9回先頭の大谷君が四球で出ると、福島監督は「こういう時のためにベンチに座らせている」というチーム一の俊足選手の漢那君を代走として送り出す。

 7回からリリーフしていた藤原君はきっちりと送ると9番の代打小林君は四球で一死一二塁。ここで1番藤村君だが、狙いすましたように中前へはじき返すと、俊足の二塁走者漢那君は歓喜のサヨナラホームインとなった。

 福島監督としては、最後は思惑通りにイメージしていた形でのサヨナラとなったことを心底喜んでいた。
 個々の力としては上回っていたかとも思われた駿台学園は、確かにスイングは鋭かった。集中する爆発力も素晴らしかったが、「課題はずっと投手力だったんですよ。結局、四死球が多すぎて、試合をまとめきれなかったですね。他に変えられる投手も作り切れていませんでした」と、川口将司監督は残念がった。

 新3年生30人、新2年生23人という駿台学園だが、学校としては専用のグラウンドを保有しておらず、狭いスペースを活用しての練習だ。その分、ティバッティングなどで振り込んでいる。振りの鋭さは、東大での監督経験もある三角裕前監督(現責任教師)が独自の打撃理論で徹底的に振らせているということもあって、強い打球も打てる。しかし、川口監督としては、「攻守に、精度という点ではまだまだですね。たまたま連打は出ましたけれども…、もっと確実さが欲しいです」と夏へ向けての課題を確認していた。

(取材・写真=手束 仁

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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