長崎南山vs五島
佐々野(五島)
海を渡って
今大会の予選は、長崎地区、中地区、佐世保地区という3地区に分かれて開催されている。
とはいえ、全国で島の数が一番多い長崎県では、各離島のチームが海を渡って予選にやってくることになる。
五島のある福江島は、長崎港から約90キロ離れた東シナ海に浮かぶ五島列島最大の島である。
長崎地区の予選へはフェリーに揺られること3~4時間。地区予選とはいえ長旅だ。
同じ五島列島に位置する上五島との初戦を制した五島は、一度、フェリーで福江島に戻り、今日の準々決勝が第一試合ということで、泊まりがけでやってきた。
試合は、長崎南山が初回に3番・大野の中前適時打などで一挙4点、終始リードを奪い、投げては、内田、江口の継投で、五島打線を1失点に抑え、7回コールドで準決勝にコマを進めた。
試合後、敗れた五島の山口一守監督は「『接戦に持ち込んで終盤で勝負』と思っていましたが、序盤にやられましたね」と話した。
ただ、今大会を経験することは離島にある五島にとって貴重なものとなった。
「(同じ五島列島の)上五島さんや五島海陽さんとは練習試合をしますが、他のチームとはなかなか試合することがないので、経験ということ意味では大きいですね」(山口監督)
さらに強打のクリーンアップトリオの一人、高校通算11本塁打を記録する3番・中里洋亮はこう話す。
「相手のピッチャーは、速かったので見慣れないと簡単には打てない。離島では経験できないことなので今日の経験を生かしたいです」
第一打席で痛烈な左前安打を放った中里であったが、チーム全体で7安打、得点は1点のみに終わり、持ち味の攻撃力を十分に発揮したとは言い難い内容だった。それでも最後まであきらめず、必死に食い下がる五島ナインの姿が印象的だった。
試合には敗れたが、一戦一戦を噛みしめて戦う五島。
今日の負けを無駄にしないためにも夏までの残り少ない時間、島でしっかりと鍛え上げ、再び海を渡って長崎港に上陸する。
そう、この夏、離島旋風を巻き起こすために。
(文=PNアストロ)