高田商vs香芝
高田商の徹底力
昨夏ベスト4の高田商が11-0の5回コールドで香芝を下し、順当に2回戦進出を決めた。
目立ったのは「脚」。それも「速い」というのではなく、「そつ」がない抜け目のなさが目立った。長打を狙うのではなく、ゴロを転がし一塁まで全力で駆け抜ける。隙あらば、次の塁を狙うのだ。
2回裏の先制の場面では、無死から5番・山口が四球で出塁、中隥が左翼前安打を放ち好機を広げる。犠打で、2人の走者が進み2死となった後、9番・葛上は平凡な遊撃を内野安打にしたのだ。さらに、遊撃手の送球もそれ、二人が生還、2点を先取した。3回裏の追加点の場面でも、好走塁を見せた。1死・1、2塁から6番・中隥右翼へのフライを放つと、二走・池島は三塁へ。これは当然だが、その送球間に1走・山口は二塁を陥れた。通常、こういう走塁は野手の返球が高投した場合に見られる走塁だが、山口は送球が高かったわけではないのに、二塁を奪った。
「今年は打てないので、走塁をしっかりやろうと言ってきました。ただ、今日の走塁は普通のプレーです。ウチはノックでも走者を付けてやるので、自然と積極的な走塁が身に着いているのだと思います。タッチアップの走塁も、Bチームでも、Cチームでもできる走塁ですから」
就任して2年目になる豆越秀人監督の言葉からも、走塁の徹底ぶりがうかがい知れるというものだろう。
また、今日の打撃では徹底したゴロ打ちが走塁を生かしたのは言うまでもない。「ホント言うと、ゴロ打ちを指示するのは嫌だったんですけど、1回裏に、先頭打者がいきなりフライを挙げたので、これは危ないなと思ったんで、ゴロを打たせました」。
香芝はこの試合5失策を喫した。自滅したように思われるが、しっかりとゴロを打ち、全力で駆け抜けた高田商の徹底ぶりが招いたものだ。
高田商は、同校OBの三浦大輔(横浜)の存在で守備型のように思われがちだが、伝統的にはバッティングの良いチームだ。打線の力強さで近年まで上位進出を果たしてきた。その伝統に、昨年は就任一年目の豆越監督がカバーリングを徹底した。そして、今年は走塁に磨きをかけている。
まだ2回戦進出だが、確実にチーム力を高めていこうという姿勢が見える高田商。今大会のこれから先はもちろんのこと、夏、そして、さらに来年以降と……、将来が楽しみなチームであることは間違いない。
(文=氏原英明)