試合レポート

東海大相模vs鹿児島実

2011.04.01

東海大相模vs鹿児島実 | 高校野球ドットコム

エース・近藤(東海大高輪台)

柔よく剛を制す エース近藤、手応えのピッチング! 

柔らかいピッチング―――。

準々決勝2日目、第2試合。
今大会初の先発マウンドにあがった東海大相模のエース近藤 正崇が強打の鹿児島実打線を5安打完封。故障で出遅れていたエースが、この大事な試合で大仕事をやってのけた。

そんなエースのピッチングを、門馬監督は「柔らかいピッチング」と称したのだ。

柔らかいピッチングとは――。

「ストレートもそんなに速くないし、変化球でストライクを取れるわけでもない。だから、変化球を見極めて、ストレートを打ちに行こうと思っていました」。

鹿児島実の主砲・濵田竜之祐は試合前に、エースの近藤をそう見立てていたという。濵田の指摘はそう多く間違ってはいない。近藤には驚くほどのストレートがあるわけでもなく、変化球が特別キレるわけでもない。もちろん、故障明けだということもある。しかし、実際は濵田が下を巻いているよう、「変化球が結構切れていたし、コーナーに上手く投げられた」のが今日の近藤のピッチングだったのだ。

門馬監督はいう。
「速い球でなくても抑えられるピッチング。速いストレートはボール球で使い、ストライクゾーンに柔らかい球を投げる」

つまり、ストレートの多くは釣り球で、変化球をストライクゾーンに投げることで、打ち気をそらしていくのだ。


鹿児島実打線は強力だ。昨秋九州大会を制したというだけでなく、今大会でも有数の「振りきれる」打線は多くの自信を有している。初球からでもガンガン振っていけるのだ。いわば、各個人に打ちに行く意識が強い。そういう打線にはストレートと変化球のすみ分けをこなしていくことで、交わしていける。

今大会、好調だった鹿児島実の5番・揚村 恭平は「変化球は、結構、甘いところに来ていた」と証言している。だが、それを捉えきれなかったのは自身の「気負い」と「相手投手のテンポが良さ」にはまってのものだ。ボール球のストレートに意識が行ったために、甘めの変化球を打ち損じてしまう。近藤はカウントを取る変化球のコントロールも絶妙だったから、まさに、術中にはまっていた。揚村は第2打席で、初球を変化球で入られて追い込まれ、最後は釣り球のストレートに手を出して三振を喫している。宮下監督も、「まっすぐを待ちながらでも、変化球に対応できると思っていましたが、(近藤は)高めのストレートよく切れていた」と悔しがった。

近藤は今日のピッチングを「勝つピッチング」と言い切った。好投に周囲は「まだまだスピードが出るのでは?」と声を懸けられたりしたが、彼の表情からは勝つために必要なことを見つけ出した自信に充ち溢れていた。

門馬監督は「意味のある試合ができた」と言った。攻撃面では課題が残ったが、「柔らかいピッチング」を体現したバッテリーに、手ごたえを感じたのではいだろうか。

「速いストレートでなくても抑えられる」。

この1勝は大きい。

(文=氏原 英明)

(撮影=中谷 明)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.22

【愛知・全三河大会】三河地区の強豪・愛知産大三河が復活の兆し!豊川を下した安城も機動力は脅威

2024.05.23

春季関東大会でデビューしたスーパー1年生一覧!名将絶賛の専大松戸の強打者、侍ジャパンU-15代表右腕など14人がベンチ入り!

2024.05.22

【宮城】仙台育英は逆転勝ち、聖和学園が接戦を制して4強入り<春季県大会>

2024.05.22

【北信越】帝京長岡の右腕・茨木に注目!優勝候補は星稜、23日に抽選会

2024.05.22

【秋田】明桜と横手清陵がコールド勝ちで4強入り<春季大会>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.05.17

「野球部や高校部活動で、”民主主義”を実践するには?」――教育者・工藤勇一さん【『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.5】

2024.05.20

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在31地区が決定、宮城では古川学園、仙台南、岩手では盛岡大附、秋田では秋田商などがシードを獲得

2024.05.19

【東海】中京大中京がコールド勝ちで17年ぶり、菰野は激戦を制して23年ぶりの決勝進出<春季地区大会>

2024.05.20

【春季京都府大会】センバツ出場の京都国際が春連覇!あえてベンチ外だった2年生左腕が14奪三振公式戦初完投

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.29

【岩手】盛岡中央、釜石、水沢が初戦を突破<春季地区予選>

2024.04.23

床反力を理解しよう【セルフコンディションニングお役立ち情報】

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?