試合レポート

岩倉vs日大鶴ヶ丘

2022.10.09

センバツ優勝の経験ある東東京の実力校・岩倉がコールド発進 169センチのエースが日大鶴ヶ丘を2安打に封じる快投

岩倉vs日大鶴ヶ丘 | 高校野球ドットコム
岩倉先発・島崎 健太郎

<秋季高校野球東京都大会:岩倉8-1日大鶴ヶ丘>◇9日◇1回戦◇江戸川区

 甲子園に春夏通算2回出場、優勝経験もある東東京の実力校・岩倉が初戦突破。2022年夏の西東京大会で8強の強豪・日大鶴ヶ丘相手に中盤で試合をひっくり返して勝利した。

 1点ビハインドの3回に追いつくと、4回には1死満塁から7番・篠原 大捕手(2年)、8番・圓浄 琥太郎内野手(1年)が連続でスクイズを成功させて逆転。6回も7番・篠原が1死一、三塁からセーフティースクイズを絡めながら一挙4得点。リードをもらった先発・島崎 健太郎投手(1年)は7回被安打2、失点1にまとめると、8回に1点を加えて8対1とコールドが成立。岩倉日大鶴ヶ丘を破った。

 強力・日大鶴ヶ丘打線を相手に、2回以降はヒットなしと、岩倉・島崎が調子を上げていき、攻撃陣にリズムを作った。相手の日大鶴ヶ丘・木嶋 康太外野手(2年)は試合後、「勝負どころではストレートのギアが上がり、スライダーもキレがある。失投が少ない投手でした」と脱帽した。

 島崎は決して最初から制球力が高い投手ではなかった。東久留米シニア時代は外野手兼投手。岩倉に進学して投手の比重が増えてきたというが、この試合で光った制球力は自他ともに認める課題だった。

「上体が突っ込んでしまうことで、頭も下がってしまい、コントロールが悪くなってしまいました。そこで、シャドーや体重移動を見直して筋力をつけたことで、左足を踏み出した時に踏ん張ることができ、頭の上下運動が減って、コントロールが良くなりました」

 豊田監督の目から見ても「危機感をもって練習に取り組んでいました」という練習の成果が実り、練習試合を重ねるごとに制球力が改善された。四球でランナーを出したところで、ストライクを取りに行って失点するケースが多かったというが、「コースに対してしっかりと腕を振って投げられて楽になりました」と安定感が出てきた。

 コンパクトに左腕を折りたたみながら素早くトップを作って、思い切り振りきる。直球を軸に、縦横のスライダーを右打者には内外の両コーナー、左打者には外の出し入れを丁寧に続け、凡打の山を築いた。

 気後れしないメンタルに、投球技術が追いついてきたことで、1年生ながらも、豊田監督はエースナンバーを託した。実績ある岩倉の背番号1に対しても「やってやろう」と持ち前のメンタルに火が付き、この試合も日大鶴ヶ丘を2安打に封じる快投を見せた。

 体は小さくても、球威のある直球を投げられるヤクルト・石川 雅規投手(秋田商出身)や、DeNA・今永 昇太投手(北筑出身)が憧れだという。現在、直球は130キロ程度だが、まだ1年生ということを考えれば、伸びしろは多い。169センチの将来性豊かなサウスポーが、 この秋にどのような結果を残すのか。次戦の投球も注目したい。

(記事=田中 裕毅

[page_break:5安打8得点で8回コールド勝ち 岩倉がバント攻撃で日大鶴ケ丘を下す]

5安打8得点で8回コールド勝ち 岩倉がバント攻撃で日大鶴ヶ丘を下す

岩倉vs日大鶴ヶ丘 | 高校野球ドットコム
得点に歓喜する岩倉ナイン

<秋季高校野球東京都大会:岩倉8-1日大鶴ヶ丘>◇9日◇1回戦◇江戸川区

 岩倉はヒットはわずか5本だが、バントを巧みに使って手堅く試合を運んだ。精度が高く、バントがしっかり決まるため、攻撃のテンポが良く、守備もリズムに乗りやすい雰囲気ができていた。攻守がかみ合い、堅実な試合展開で主導権を握れたのも、夏の敗戦のおかげだと豊田監督は言う。

「夏の大会はバントではなく強攻して点数が取れず、そのまま負けてしまったんです。その教訓があったので、秋は1点ずつ重ねていく方針にしています」

 夏の初戦敗退のみならず、2021年の夏の東東京大会で5回戦まで勝ち上がって以降、「東東京ベスト16に入れるだけの実力はあると思っても、大事な試合で負けてしまっている」と勝ち切れないことが続き、豊田監督のなかでその危機感は大きくなっていた。

 2021年の秋は都立小山台に4対5、そして夏は都立文京に5対6と1点差で敗戦。あと1歩で苦汁をなめてきたからこそ、「1点ずつ積み重ねる」バント重視に方針転換をした。

 練習ではバント練習に多くの時間を割いて、精度を高めてきた。「精神的には幼いですが、落ち着いて持てる力はしっかりと出せるのが今年のチームです」と、成功したバントはすべて一発で決まっていた。新チームになって磨いてきた武器がきっちり機能して、試合の主導権を握ることができた。

 1年生が4人スタメン出場していることもあり、「来年の春以降に向けて経験を積ませたい」と1つでも多く勝ち上がりたいという思いを語った豊田監督。東東京の実力校がどこまで勝ち進むか注目だ。

(記事=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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