試合レポート

東農大三vs本庄東

2019.07.13

飯島一徹擁する東農大三、昨夏ベスト8の本庄東を振り切り初戦突破!

 MAX145km右腕・飯島一徹(3年)にMAX140kmの長身右サイドの井口真之介(3年)と強力な二枚看板を擁するBシード・東農大三、初戦の相手は、昨夏ベスト8の本庄東である。

 やはりというか、東農大三にとっては一筋縄ではいかない。そんな試合展開になった。

 先発は東農大三・飯島、本庄東瀬田椋平(3年)と共に経験豊富な両エースが登板する。東農大三は、春から内野陣を大幅に代えてきた。まず昨秋からファーストに入ることの多かった二枚看板の一人である井口をショートに入れる。これは驚きであった。

 それによりショートの松本春樹(2年)はサードへ回り、これまでサードを守ることが多かった畔上空斗(2年)が外れ、ファーストには竹田凛太朗(3年)が入る。それにより打線も大幅に組変えた。

 春3番を打っていた加納陸(3年)が昨秋同様に1番に入り、昨秋からずっと5番を打っていた飯島が3番に入る。これにより、春6番、7番を打っていた小島大毅(3年)、松本春が共に一つ打順を上げる。この変更点が攻守にどう機能するのかというのも見どころの一つとなる。

 まずは初回、東農大三・飯島が本庄東打線を三者凡退に抑え、上々の立ち上がりを見せたのに対し、本庄東バッテリーは立ち上がりややバタつく。先頭の加納にレフト前ヒットを浴びると、続く堀大翔(3年)の所でキャッチャーがファンブルし無死二塁とする。さらに一死後、3番・飯島の所で再びキャッチャーがファンブルし一死三塁とされると、結局飯島も歩かせ一死一、三塁と傷口を広げ、続く井口に犠飛を浴びあっさりと先制を許す。

 一方、本庄東の反撃は3回表であった。この回先頭の金井優斗(3年)がレフト前ヒットを放つと、続く瀬田がきっちりと送り一死二塁とする。二死後、1番・野口竜之介(3年)がレフト前タイムリーを放ち本庄東がすぐさま同点に追いつく。

 だが、2回以降立ち直りに兆しを見せていた本庄東・瀬田に対し、東農大三打線が襲い掛かる。
 4回裏、この回先頭の井口がレフト線へ二塁打を放ち出塁すると、続く小島のセーフティ気味の犠打に対し、瀬田がジャックルし無死一、三塁とチャンスが広がる。6番・松本春のセーフティースクイズは失敗に終わり、一死二、三塁となるが、続く竹田がスクイズを決め、まずは1点を勝ち越す。攻撃はこれでは終わらず、さらに8番・山﨑達也(3年)が左中間を破るタイムリー二塁打を放つと、続く西山翔大(2年)もライト越えのタイムリー二塁打を放ち4対1とした東農大三が試合の主導権を握るかに思われた。


 だが、本庄東は5回表、一死から7番・金井がレフトスタンドへソロ本塁打を放ち、すぐに2点差とし、流れを引き戻す。

 対する東農大三もその裏、この回先頭の堀がショートゴロエラーで出塁するが、続く飯島の所で二盗は失敗に終わる。それでも、飯島が四球を選び再度チャンスメイクすると、続く井口も後頭部に死球を受け一死一、二塁とし、瀬田をマウンドから引きずり降ろす。代わった2番手の右サイド玉川拓磨(3年)に対しても、二死後6番・松本春が四球を選び二死満塁とするが、後続が倒れ無得点に終わる。

 すると6回表、本庄東に大きなチャンスがやってくる。
 この回先頭の渡邉雄太(2年)がレフト越えの二塁打を放ち出塁すると、続くバントの構えの木村哲昭(3年)は頭部に死球を受け無死一、二塁とチャンスが広がる。さらに4番・渡邉翔は犠飛を放ち一死一、三塁とすると、続く吉野翔大(3年)の所で一走(臨時代走)野口がすぐさま二盗を決め、一死二、三塁と絶好の同点機を迎える。だが、後続が倒れ得点を奪えない。

 事なきを得た東農大三・飯島は、7回以降は手綱を締め直し相手打線を封じ込める。対する、本庄東・玉川も5回以降は追加点を許さない必死の投球を見せていたのだが、終盤ついに力尽きる。

 東農大三は8回裏、この回先頭の小島がセンター前ヒットを放ち出塁すると、続く松本春がきっちりと送り一死二塁とする。ここで7番・竹田が左中間へタイムリー二塁打を放ち試合の大勢は決した。

 結局、飯島は悪いながらも終わってみれば5安打7奪三振2失点で完投勝利を飾り、東農大三が5対2で本庄東を下し、初戦を物にした。

 まず、本庄東だが、飯島が本来の出来ではなかったとはいえ、打線は一巡目から鋭い当たりを連発し、本塁打を含む2本の長打も放った。凡退した打球も相手の外野シフトに阻まれたものもあり紙一重であった。それだけBシードの東農大三を追い詰めてはいた。だが、あと一本が出なかった。やはり好投手を攻略するには、少ないチャンスを確実に物にしなければ、勝利の女神は微笑まないといった所か。

 今年のチームはバッテリーを含め、昨夏を経験した選手を多く擁していた。それだけに初戦敗退は痛恨であるが、この敗戦を教訓とし更なる高みを目指してもらいたい。

 一方の東農大三であるが、もちろん初戦ということもあり、硬くなるなと言っても難しい部分もあるが、それを差し引いても、この日の飯島は全体的にボールが高く浮き、苦しいピッチングであった。だが、それでも要所を締め2失点でまとめるあたりはさすがだ。打線もこの日は下位打線が活発で、守備もつまらないエラーがなかった。夏の新布陣も攻守にまずまずの成果を上げたのではなかろうか。

 あとは、井口が先発やリリーフで登板した時にどうなるのか。飯島がリリーフに回った時や、その他の投手が先発した時にどうなるのかというゲームマネージメントの細かい修正ぐらいであろう。おそらく、この日スタメンを外れた畔上も、出場時は再度スタメン定着するべくアピールするはずだ。こういう良い循環になれば、春上位シードを獲得したチームにありがちな受け身の姿勢は、自然と払拭できるであろう。

(文=南 英博

2019年 第101回全国高等学校野球選手権大会埼玉大会
■開催期間:2019年7月10~7月28日(予定)
■組み合わせ表【2019年 第101回全国高等学校野球選手権大会埼玉大会】
■展望コラム【今年の埼玉は大混戦!シード校の戦力とシードを脅かすノーシードを徹底紹介!】

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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