試合レポート

東海大相模vs山村学園

2019.05.22

強打だけではなく、守り勝てる東海大相模。好投手・和田を攻略し、2年ぶりの決勝へ

東海大相模vs山村学園 | 高校野球ドットコム
和田朋也(山村学園)

【熱戦の模様をギャラリーでチェック!】

 関東大会準決勝の山村学園vs東海大相模の一戦どちらも打力が高いチームだが、試合はロースコアの投手戦となった。ロースコアを持ち込んだのは山村学園のエース・和田朋也の好投が大きいだろう。

 これで4試合目の登板。だが、疲れを感じさせない素晴らしいピッチング。テークバックを大きくとった独特のフォームから繰り出す直球は常時120キロ後半~130キロ中盤(最速133キロ)と決して速くない。ただ棒球は少なく、精度のあるストレートを常に投げられて、真ん中に集まることはない。

 非常に上手いのが、球速差をつけた2種類のスライダーの使い分けがうまいことだ。まず120キロ前後のスライダーは左打者のアウトコースぎりぎりに投げられるので、強打者・巧打者揃いの東海大相模打線も打ちあぐむ。さらに、110キロ前後のスライダーは低めに集まり、何より遅いストレートの軌道から手元で小さく曲がっていく。そのため東海大相模の打者は頭が突っ込み、腰砕けのフォームとなっている。うまくタイミングが取れず、内野ゴロ、フライが多くなる。

 遅いスライダーは、タイミングを外すだけではなく、緩急をつける意味でも大きな効力を発揮しており、この遅いスライダーから、130キロ前後のストレートはより速く見える。

 制球力は非常に高く、高校生としては上級クラスの技巧派左腕だ。

 その和田の持ち味を引き出したのが正捕手の橋本大樹である。橋本は全球種をバランスよく使いながら、東海大相模打線に勝負する。何より良いのは、試合の雰囲気を見ながら、マウンドによって投手のもとへ駆け寄り話しができること。観察力の高さも光る。

 またキャッチングを見ると、左ひじを支点として、フレーミングを使う意識が見られる。柔軟なキャッチングができていて、投げやすさを感じる。また二塁のスローイングタイムは最高で1.88秒で、平均して、1.90秒~2.00秒前後と速い。

  打っても1回裏、一死二塁の場面から痛烈な右前適時打を放つ。橋本の打撃はシンプル。スクエアスタンスでグリップの位置を見ると肩の位置に置いてバットを立てて構えている。そのため、速球、変化球に対して柔軟に対応ができるのだろう。

 初回に失点した東海大相模の先発・冨重 英二郎(3年)は左オーバーから常時120キロ後半~133キロの直球、110キロ前後のスライダー、カーブ、チェンジアップと縦の変化を使える好左腕。6回を投げて、4安打に抑える好投を見せた。


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勝ち越しの三塁打を放った金城飛龍(東海大相模)

 反撃を狙う東海大相模、7回表、無死満塁のチャンスを作る。ここで8番松本 陵雅の併殺崩れで同点に追いつく。だが、ここで和田は踏ん張り、二死三塁のピンチから代打・谷川を本日最速の135キロのストレートで空振り三振に打ち取り、ピンチを切り抜ける。

 試合は後半戦に突入する。

 東海大相模は7回裏、2番手に左腕・野口裕斗を投入。野口は左腕から常時130キロ~135キロ前後の速球、120キロ台のスライダー、縦のスライダーを低めに集める投球で、山村学園打線を封じる。

 試合は延長戦となり、10回表、一死二、三塁から2番金城飛龍が右中間を破る適時三塁打を放ち、勝ち越しに成功。そして3番遠藤成の犠飛で4対1と点差を広げた。

 2番手の野口は山村学園打線を三者凡退で試合終了。2年ぶりの決勝進出を決めた。

 今大会の東海大相模は着実な試合運びで勝ち上がっている。県大会で見せた一発長打はないが、接戦の展開となっても、守りのミスがないので、盤石の試合運びで勝てる。かなり価値が高い勝利だといっていいだろう。

 敗れた山村学園は持てる力はぞんぶんに発揮した。思えば県大会初戦はサヨナラ負け寸前までいったチーム。そのチームが関東屈指の強豪に大接戦を演じたこと思うと、感慨深いものがある。

 ぜひ関東大会の経験を夏に生かしてほしい。

(文・=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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