試合レポート

ふじみ野vs川越東

2017.09.23

劇的逆転の3ランで逆転のふじみ野、勝負強さを示す

ふじみ野vs川越東 | 高校野球ドットコム
吉田啓人(ふじみ野)

 昨秋の県大会で公立校唯一のベスト8進出を果たしているふじみ野。一方川越東は、近年安定して上位進出を果たしている私学の強豪校だ。この春から、坂戸西で実績のあった野中 祐之監督が就任した。この秋の新チームがどのように作り上げられてきたのか、注目したいところである。そんな興味深い対戦となった。

 川越東は初回、一死から連続四球でチャンスを貰うと二死となってから前多君が中前打を放ちあっさりと先制した。しかしその裏、ふじみ野も先頭の吉田健太郎君が四球で出ると、続く松尾君の一打は左前にポトリと落ちる。二死一二塁となった後、5番粟田君が左前へタイムリー打を放ってたちまち同点とした。

 試合はそのまま、1対1で進んでいく。川越東は2、3、5回と得点できそうな場面もあったが、バント失敗や走塁死などでチャンスを潰していく。吉田啓人君の粘りの投球も光った。これに対して川越東の小笠原君は2~5回は一人の走者も許さず完璧に抑えていた。

 そんな小笠原君の好投を後押しするかのように6回、2点を追加する。

この回の川越東は、無死の走者をまたしてもバント失敗など進めきれず、チャンスを潰しかけたが、その後にふじみ野吉田啓君が制球に不安のあるところを露呈してしまい、押し出し。2番手として急遽リリーフした林聖雅君も四球で連続押し出しとなり、この回2点が入る。川越東としては、貰った形の2点となった。しかし、その2点を守り切れなかった。

 その裏のふじみ野は先頭打者を死球で出すと、丁寧に攻めて一死一三塁から4番福室君がチョコンと上手に左前に落として1点差とする。


 そして8回、ふじみ野は2番松尾君以下、大野君、福室君と3連打で満塁とする。ここで、さすがに小笠原君を諦めた川越東野中 祐之監督は、リリーフとして大澤君を送り出す。粟田君は、そのファーストストライクを叩いてを左犠飛として同点。さらに、一死一二塁という場面だったが、6番永井君の一振りは、センターやや左の大きな打球でそのままスタンドに入る3ランとなった。ここまで、まったく当たっていなかった永井君だったが、ふじみ野の浅野裕太監督は、「打率はあまりよくないんですけれども、意外性というか、時に長打も出るので、代打も考えましたがここは任せました」と言うが、まさにその期待に応えた一打となった。

 結局、この一打で試合をひっくり返したふじみ野が、9回の守りでは、2度も雨による中断があったものの、3人目となった梅澤君が集中を切らさず好投。肩の故障で長いイニングが投げられない状態なので、リリーフに回っていたが、エースナンバーを背負っているプライドを示す力投だった。

 浅野監督は、「明るく、元気にいこうということだけを言っていたのですが、選手たちは強い相手にも堂々と向って行ってくれました」と、素直に喜んでいた。この秋の新チームから、チームの指揮を執ることになった浅野監督だが、実は講師時代の一昨年は坂戸西でコーチとして指導していた。当時の坂戸西を率いていたのが、今日の川越東の野中監督だったのだ。そんな因縁もある試合でもあった。それだけに、両者ともに複雑な思いもあったようである。

 結果的に敗者となってしまった川越東。野中監督は、「この子たちには、せめてベスト8くらいまでは行かせてあげたかったし、それくらいの能力のある子たちだと思うんですよ。それが出来なかったのは、(監督である)オレの責任なのかなぁと思います」と、肩を落としていた。それでも、「もう一度チームをシャッフルして、何をどうしていったらいいのか、考えながら作り直していきます」と、再起を期していた。

(文・写真=手束 仁

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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