試合レポート

早稲田実業vs法政大高

2017.07.21

早稲田実・清宮先制ソロ!法政大高・折橋 魂のスローボール力尽きる

 注目の清宮幸太郎早稲田実)が、この夏、[stadium]神宮球場[/stadium]に初登場。平日の朝とあって観客は5000人と、西東京大会の5回戦としては、それなりの数字ではあるものの、早稲田実の試合としては、やや少ない感じがする。それでも、清宮が持ってくる球場の熱気は、やはり特別なものがある。

 対する法政大高としては、まともに勝負しては、勝機は薄い。遅い球をいかに効果的に使い、相手を翻弄できるかがカギになる。そうした面では、法政大高の前身である、法政一には、いい手本がいた。

 超スローボールを武器に、1984年の西東京代表として甲子園大会に進んだ時のエース・岡野憲優だ。もちろん、今の選手が生まれるはるか前の選手である。それでも、この日先発した身長170センチのエース・折橋祐樹をみていると、岡野は下手投げ、折橋は横手投げの違いはあるものの、伝統は生きていると感じさせる内容だった。

 
1回表早稲田実の攻撃で、法政大高の折橋は、慎重にコーナーを突こうとするあまり制球が定まらず、清宮をはじめ3人に四球を出したが、6番・福本翔を三ゴロに打ち取り得点を与えない。

 
一方早稲田実の先発・雪山幹太の球速130キロ台後半の力のある球に、法政大高打線はほぼ完全に抑えられる。

 
それでも法政大高の折橋は、1、2回と早稲田実に得点を与えない。しかし3回表の先頭打者である清宮が4球目を叩いた右中間の飛球は意外と伸びて、中堅寄りの右中間スタンドに入る本塁打となった。高校通算106号というよりも、早稲田実にとって貴重な先制アーチとなった。

 
5回表には、2番・西田燎太の中前安打に続き、3番・清宮がライト線の二塁打。4番・野村大樹の三ゴロで西田が還り、1点を追加した。得点が必要な場面で、点に絡む活躍をするのが、清宮の良さだ。

 
雪山に抑えられた法政大高にとって、数少ないチャンスとなったのは、7回裏の攻撃だ。一死後、四球の金行智之佑を一塁に置いて、5番・佐藤航太郎とのヒット・エンド・ランが決まり、佐藤の右前安打で一死一、三塁。しかし後続が倒れ、得点に結びつかない。

 
それでも法政大高の折橋もスローボールを駆使した粘りの投球をし、早稲田実に追加点を許さない。
となると思い出されるのが、清宮が入学する前の、3年前の秋季都大会の準々決勝で対戦した早稲田実vs法政大高の試合だ。この時は、3対3で進んだ延長10回、法政大高が当時のエース・小松陽真の本塁打でサヨナラ勝ちしている。

 この試合でも、早稲田実の雪山が好投しているとはいえ、猛烈な暑さの中で行われているだけに、疲れも出るだろう。そこが法政大高の狙い目でもあった。

 
しかし夏の暑さが影響を及ぼしたのは、法政大高の折橋の方だった。早稲田実の強力打線相手に、1球、1球、魂を込めての投球は、8回が終わった段階で148球。その疲労度は、球数だけでは、測れないものがあったはずだ。

 
9回表のマウンドで、折橋は快調に二死を取ったものの、熱中症の症状で、突然足が吊り出した。一旦ベンチに戻り治療を受けた後、マウンドに上がったが、早稲田実の1番・橘内俊治に左前安打、2番・西田には四球と、あと1つのアウトが取れず、降板。まさに力尽きた感じだ。

 
折橋に代わり登板した椿拓朗から清宮が右翼に高く上がる飛球。これを右翼手が捕球できず三塁打となり、貴重な2点を追加。清宮も暴投で還り、9回表早稲田実は3点を入れた。

 
その裏雪山は、法政大高の攻撃を3人で抑え、5対0で早稲田実が勝ち、準々決勝に進出した。
この夏背番号1を背負うことになった雪山であるが、すっかりエースとしての貫禄がついてきた。早稲田実は投手力が課題なだけに、雪山の台頭は大きい。ただ打線は9回表の3安打を除けば6安打。本塁打、三塁打、二塁打を打った清宮以外は、パッとしなかったが、準々決勝を前に、いい経験になったのではないか。

 
一方、敗れた法政大高は、前評判は高くなかったものの、甲子園出場経験のある伝統校らしく、魂のある戦いをした。エースの折橋は最後力尽きたが、この粘投を、後輩たちも目に焼き付けてほしい。

(レポート=大島 裕史

【 この試合のイニングスコアをチェック! 】

【西東京大会】
詳細日程・応援メッセージ
トーナメント表

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.14

大阪体育大の新入生に兵庫大会8強の145キロ右腕、金光大阪の1番センター、近大附の4番打者など関西地区の主力が入部!

2024.05.14

【春季東京都大会総括】日大三、二松学舎大附など強豪校がノーシードの波乱! 新基準バットでも9本塁打の帝京が驚異の打力で王者に

2024.05.14

【2024夏全国ノーシード校一覧】二松学舎大附、履正社、智辯学園、沖縄尚学などビッグネームがノーシードで夏に挑む

2024.05.14

広島「今季新戦力の現状通信簿」、新外国人の復活はなるか!?

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.14

大阪体育大の新入生に兵庫大会8強の145キロ右腕、金光大阪の1番センター、近大附の4番打者など関西地区の主力が入部!

2024.05.09

プロスカウトは190センチ超の大型投手、遊撃手、150キロ超右腕に熱視線!この春、浮上した逸材は?【ドラフト候補リスト・春季大会最新版】

2024.05.09

【熊本】九州学院は城北と文徳の勝者と対戦<NHK旗組み合わせ>

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?