早稲田実業vs法政大高
早稲田実・清宮先制ソロ!法政大高・折橋 魂のスローボール力尽きる
注目の清宮幸太郎(早稲田実)が、この夏、[stadium]神宮球場[/stadium]に初登場。平日の朝とあって観客は5000人と、西東京大会の5回戦としては、それなりの数字ではあるものの、早稲田実の試合としては、やや少ない感じがする。それでも、清宮が持ってくる球場の熱気は、やはり特別なものがある。
対する法政大高としては、まともに勝負しては、勝機は薄い。遅い球をいかに効果的に使い、相手を翻弄できるかがカギになる。そうした面では、法政大高の前身である、法政一には、いい手本がいた。
超スローボールを武器に、1984年の西東京代表として甲子園大会に進んだ時のエース・岡野憲優だ。もちろん、今の選手が生まれるはるか前の選手である。それでも、この日先発した身長170センチのエース・折橋祐樹をみていると、岡野は下手投げ、折橋は横手投げの違いはあるものの、伝統は生きていると感じさせる内容だった。
1回表早稲田実の攻撃で、法政大高の折橋は、慎重にコーナーを突こうとするあまり制球が定まらず、清宮をはじめ3人に四球を出したが、6番・福本翔を三ゴロに打ち取り得点を与えない。
一方早稲田実の先発・雪山幹太の球速130キロ台後半の力のある球に、法政大高打線はほぼ完全に抑えられる。
それでも法政大高の折橋は、1、2回と早稲田実に得点を与えない。しかし3回表の先頭打者である清宮が4球目を叩いた右中間の飛球は意外と伸びて、中堅寄りの右中間スタンドに入る本塁打となった。高校通算106号というよりも、早稲田実にとって貴重な先制アーチとなった。
5回表には、2番・西田燎太の中前安打に続き、3番・清宮がライト線の二塁打。4番・野村大樹の三ゴロで西田が還り、1点を追加した。得点が必要な場面で、点に絡む活躍をするのが、清宮の良さだ。
雪山に抑えられた法政大高にとって、数少ないチャンスとなったのは、7回裏の攻撃だ。一死後、四球の金行智之佑を一塁に置いて、5番・佐藤航太郎とのヒット・エンド・ランが決まり、佐藤の右前安打で一死一、三塁。しかし後続が倒れ、得点に結びつかない。
それでも法政大高の折橋もスローボールを駆使した粘りの投球をし、早稲田実に追加点を許さない。
となると思い出されるのが、清宮が入学する前の、3年前の秋季都大会の準々決勝で対戦した早稲田実vs法政大高の試合だ。この時は、3対3で進んだ延長10回、法政大高が当時のエース・小松陽真の本塁打でサヨナラ勝ちしている。
この試合でも、早稲田実の雪山が好投しているとはいえ、猛烈な暑さの中で行われているだけに、疲れも出るだろう。そこが法政大高の狙い目でもあった。
しかし夏の暑さが影響を及ぼしたのは、法政大高の折橋の方だった。早稲田実の強力打線相手に、1球、1球、魂を込めての投球は、8回が終わった段階で148球。その疲労度は、球数だけでは、測れないものがあったはずだ。
9回表のマウンドで、折橋は快調に二死を取ったものの、熱中症の症状で、突然足が吊り出した。一旦ベンチに戻り治療を受けた後、マウンドに上がったが、早稲田実の1番・橘内俊治に左前安打、2番・西田には四球と、あと1つのアウトが取れず、降板。まさに力尽きた感じだ。
折橋に代わり登板した椿拓朗から清宮が右翼に高く上がる飛球。これを右翼手が捕球できず三塁打となり、貴重な2点を追加。清宮も暴投で還り、9回表早稲田実は3点を入れた。
その裏雪山は、法政大高の攻撃を3人で抑え、5対0で早稲田実が勝ち、準々決勝に進出した。
この夏背番号1を背負うことになった雪山であるが、すっかりエースとしての貫禄がついてきた。早稲田実は投手力が課題なだけに、雪山の台頭は大きい。ただ打線は9回表の3安打を除けば6安打。本塁打、三塁打、二塁打を打った清宮以外は、パッとしなかったが、準々決勝を前に、いい経験になったのではないか。
一方、敗れた法政大高は、前評判は高くなかったものの、甲子園出場経験のある伝統校らしく、魂のある戦いをした。エースの折橋は最後力尽きたが、この粘投を、後輩たちも目に焼き付けてほしい。
(レポート=大島 裕史)
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