試合レポート

【春季東京大会】低反発バットで9本塁打!帝京優勝もサヨナラ3ランで決める! 打った富浜「ホッとした」

2024.04.29


サヨナラ3ランを放つ帝京・富浜琉心

【トーナメント表】 春季東京都大会 結果一覧

<春季東京都高校野球大会:帝京8-5東海大菅生>◇28日◇決勝◇スリーボンドスタジアム八王子

夏を思わせる暑さの中、帝京東海大菅生という東西東京を代表する強豪同士の対戦で、決勝戦が行われた。

東海大菅生の先発は宮本 恭佑投手(3年)、帝京黒木 大地投手(2年)という、ともに背番号1の投手が先発して試合が始まった。

先制点は意外な形で入った。2回、東海大菅生は、二塁打の勝俣 柊星内野手(3年)が犠打で三塁に進み、黒木のボークで生還した。東海大菅生は3回、2四球、1安打で2死満塁とし、前の打席で二塁打を打っている勝俣が、今度は三塁打を放ち、3点を追加した。勝俣はオリックスなどでプレーした勝俣 翔貴(現日本製鉄かずさマジック)の弟。勝負強い打撃は兄譲りだ。

東海大菅生に4点をリードされたが、慌てずどっしり構えているのが、この春の帝京の強さだ。3回、帝京は9番・黒木の二塁打に続き、2番・西崎 桔平内野手(3年)も二塁打を放ち1点を返し、西崎も3番・奈良 飛雄馬内野手(3年)の中前安打と敵失で生還する。奈良は続く4番・丹羽 心吾捕手(3年)の二塁打で三塁に進む。ここで東海大菅生は投手を宮本から、左腕で今大会エース級の活躍をしている上原 慎之輔投手(2年)に交代した。上原に対し、帝京は5番・富浜 琉心内野手(3年)の二ゴロで奈良が生還。帝京はこの回3点を挙げ、1点差に迫る。

6回、帝京は2死二塁から2番・西崎がまたも二塁打を放ち、同点に追いつく。

7回からは遊撃手の西崎がマウンドに上がる。主将であり、攻守の中心選手である西崎が登板すると、流れが一気に帝京に来るような雰囲気になる。しかし東海大菅生には、そうした空気を打ち破る力がある。この回、四球の走者が牽制の暴投により二塁に進み、4番・高西 航輝内野手(3年)が二塁打を放ち、1点を勝ち越した。「打球を上げたらいけないと思って振りました。この時は、勝てると思ったのですが…」と高西は言う。高西は準決勝でも打点となる二塁打と三塁打を放っている。冬の間しっかりトレーニングを積んで、パワーアップもしてきた成果を出している。

主将が登板しての失点。重い1点になる場合もあるが、帝京には負ける感じがない。東海大菅生は7回からは、今大会先発登板することが多かった小島 葵投手(3年)が登板し、必死の逃げ切り体勢に入る。

1点をリードされている帝京は、9回は西崎から攻撃が始まる。西崎はフルカウントから中前安打を放った。「冷静に球をみながら打てました」と西崎は言う。続く奈良は死球で一、二塁となり、4番・丹羽の左前安打で西崎が還り、同点に追いつく。なおも一、二塁に走者を置いて、5番・富浜が左翼席に飛び込む3ランを放ち、劇的な幕切れで帝京が2年連続15回目の優勝を決めた。

「感触は完ぺきでした。打った瞬間はホッとしました。ホームランどころか、サヨナラヒットも初めて打ちました」と富浜は言う。

帝京は昨年の春も優勝しているが、この時は大会を通じて本塁打が0。ところが低反発バットになったこの大会では、9本の本塁打を放っている。その出発点になったのは、1回戦の1回裏に富浜が放った2ランだった。帝京の本塁打攻勢は、富浜に始まり、富浜に終わったことになる。

新基準のバットになっても、強打の帝京はむしろ強化された。「(強打のチームを)諦めたくないと思い、フィジカルを鍛えました」と金田優哉監督は言う。帝京の選手のがっちりとした体が、トレーニングの強さを物語っている。そうしたトレーニングをする活力になったのは、昨年秋の1次予選で二松学舎大附に0対8の7回コールド負けた悔しさだった。「あの負けは忘れられないし、忘れてはいけません」と西崎主将は言う。

かつて帝京は東の横綱と呼ばれるほど、強い時代があった。しかし強い帝京が生まれる前に、幾多の悔しい敗戦を経験してきた。負から這い上がる強さは、帝京のDNAに刻み込まれているのかもしれない。「負けた悔しさを、いい方向に持っていきました」と、前監督の前田三夫氏は語る。

帝京は秋に本大会に進出できなかったので、この春は1次予選からの出場だったが、1次予選から勝ち上がったチームが優勝するのは、2014年の成立学園以来、10年ぶりになる。準優勝の東海大菅生も、昨年の秋より全体的にパワーアップし、今大会も一戦一戦強くなっていた。若林弘泰監督は「最後は力尽きたけれども、よくやりました」と語る。

帝京東海大菅生は関東大会に出場する。関東地区の中で、東京の存在感を見せる戦いを期待したい。

【トーナメント表】 春季東京都大会 結果一覧

この記事の執筆者: 大島 裕史

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