Interview

「打倒大阪桐蔭」に燃える!大阪電通大高の144キロ右腕はシンデレラボーイになれるか

2022.06.27

 7月9日に開幕する第104回全国高校野球選手権大阪大会で注目投手の1人に挙げられているのが、大阪電通大高的場 吏玖投手(3年)だ。185センチの長身から最速144キロの速球を投げる本格派右腕で、春の府大会でも関大北陽相手に20奪三振完封、大阪桐蔭相手に8回3失点と好投を見せている。

 プロのスカウトからも注目を浴びている的場にこれまでの野球人生や今後の目標などについて聞いた。

1日12合の米でスピードアップ

「打倒大阪桐蔭」に燃える!大阪電通大高の144キロ右腕はシンデレラボーイになれるか | 高校野球ドットコム

 大阪府寝屋川市出身の的場は、2人の兄がやっていた影響で小学2年生の時に寝屋川スカイヤーズで野球を始め、中学では軟式のジュニアセブンに所属。元々は遊撃手を守っていたが、「ピッチャーがいなかったので、強制的になりました」と2年生の終わりに投手転向。「フィールディングであまりミスをしない」と現在も遊撃手の経験は生かされているようだ。

 中学時代の球速は125キロほどで、公式戦でもなかなか勝てなかったという。実績が皆無だった的場に目を付けたのが大阪電通大高の岡野 穂高監督だった。当時の的場の印象を岡野監督はこう語る。

「ピッチャーで出ている時もありましたが、基本的にはショートで試合に出ているイメージがあり、センスはあるなと感じながら試合は見ていました。挨拶や指導者の方と話している姿を見たら、人間的にも良い子なんじゃないかなと思って、声をかけさせて頂きました」

 家族を通じて岡野監督から誘いがあることを知った的場は進学を即決。1年夏から公式戦のマウンドを任された。

 特に飛躍のきっかけとなったのが1年生の冬。約1ヶ月間、全体練習から離れて米を1日12合も食べる日々を続けた。大阪電通大高では有望な下級生投手に集中して米を食べさせる習慣があり、取材日も2年生と1年生の投手が1人ずつ練習に加わらず、ひたすら食事を摂っている光景が見られた。それにより的場も体が大きくなり、力を入れてきた体幹トレーニングの効果も相まって、140キロを超える直球を投げられるようになった。

 大阪電通大高のグラウンドは40メートル×60メートルの広さしかないため、遠投をすることができない。投手としての能力を上げるには不利な環境だが、「近い距離で相手の胸に投げることできるようになりました」と逆に投げる距離が近い分、制球力の向上には役立っているようだ。

 グラウンドにマウンドはないため、足元が人工芝の移動式マウンドで日々の投球練習を行っている。限られた環境の中でも工夫を凝らした練習で着実に力を伸ばしていった。

[page_break:強豪私学相手に20奪三振でリベンジ]

強豪私学相手に20奪三振でリベンジ

「打倒大阪桐蔭」に燃える!大阪電通大高の144キロ右腕はシンデレラボーイになれるか | 高校野球ドットコム

 昨夏は背番号11ながら全試合で先発を任されるなど、主戦として活躍する。学校史上初の8強入りに大きく貢献。「高校の歴代初で嬉しかったです。自分も力が付いたんだなと思いました」と自信を深める大会となった。

 最上級生となり、更なる飛躍を期待されたが、秋は初戦で翌春の甲子園で8強入りすることになる金光大阪と対戦。「初回に甘く入ってしまった」と序盤の失点が重く、1対4で古川 温生投手(3年)との投げ合いに敗れてしまった。

「真っすぐがメチャクチャ伸びていて、変化球もキレキレで打てないなと思いました」と古川の印象を語る的場。「まだ下半身を使えていなかったので、しっかり下半身を使えるように走り込みやメディシンボールトレーニングをしました。冬を越えてから球速が少し伸びました」とコロナ禍の影響で全体練習がままならなかった冬場も順調にトレーニングを積み、春の大会に臨んだ。

 春の府大会では、「真っすぐも変化球も通用した」と4回戦まで無失点で勝ち上がる。特に4回戦では前年夏に1対7で敗れた関大北陽に対して20奪三振完封。「嬉しかったですし、春のベスト16で夏のシードを取れたので良かったです」と喜んだ。

 5回戦ではセンバツ王者の大阪桐蔭と対戦。課題の初回に松尾 汐恩捕手(3年)に2ラン本塁打を浴びたが、2回から7回までは無失点に抑えた。「真っすぐをコースに投げられていたり、変化球が決まっていたら抑えられると思いました」と手応えをつかんだ様子。夏に向けては、「どこが相手でも0点で抑えられるピッチャーになりたい」と意気込んでいる。

 直球に注目の集まるが、好きな投手は多彩な変化球を操る日本ハム・金子 千尋(長野商出身)だという。自身も変化球に興味があり、カーブ、スライダー、カットボール、フォーク、スプリットを投げることができる。「真っすぐを見てほしいです」と話しているものの変化球を起用に操る投球も必見だ。

 プロのスカウトからも注目されているが、「まだ体ができていない」と現時点では大学進学の意向を示している。身長185センチに対して体重は70キロと線が細いため、4年かけてスケールアップを目指すことは賢明な選択だろう。将来性抜群の右腕の今後が楽しみだ。

 まもなく最後の夏を迎える。初戦は7月16日に山田箕面自由学園の勝者と戦うことが決まった。「調子が悪くても試合を作れる投手を目指して、大阪桐蔭にリベンジしたいと思っています」と目標を語る的場。大阪桐蔭と対戦するには少なくとも4回戦まで勝ち上がらなければならない。まずは大阪桐蔭と戦うまで一戦必勝で戦っていきたいところだ。

 強豪私学が集う大阪に現れた新鋭校の好右腕。夏の大阪大会を盛り上げる存在になることは間違いないだろう。

(取材:馬場 遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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