三重総合vs鶴崎工
大分野球の未来が見えた
長年にわたり大分県高校野球のメイン球場として親しまれてきた新大分球場が拡張リニューアルした。
両翼は従来の91mから100mとなり、中堅も120mから122mに。
新たに「[stadium]別大興産スタジアム[/stadium]」と名乗る同球場は、ようやくそのスペックが国内の標準基準に追いついたと言っていいだろう。
このことで、大分の高校野球は変わると言われている。
ラッキーパンチによる柵越えの危険性が少なくなったために、バッテリーは果敢に打者の内角を攻めてくる。コースを広く使えることによって、昨年までのような外一辺倒の配球パターンから、フィニッシュに至るカウントの組み立て方にバリエーションが見られるようになった。
死球が増えたのもその一例である。
大会第13日目までの本塁打数はわずかに1。極端な減少だ。
外野手のポジショニングは難しくなった。この日の第2試合で戦った別府青山の伊藤弘明監督は言う。
「指示していなくても、外野手は無意識にフェンスの引力に引かれて、定位置から3mは下がっていますね」
頭を越される恐怖感から、外野手は深めに守備位置を取る。その結果、大会を通じて内外野の間に落ちるポテンヒットが大幅に増加した。
スピードのある外野手は不可欠となり、右左中間を破られた際の打球到達速度、カットプレーの精度など、よりダイナミックで正確性の高いプレーを求められるようになる。
さらに難しいのは走塁の勘ではないだろうか。
塁上の走者や打者走者は、外野へ飛んだ打球に対して、迷うことなく先の塁を陥れようとする。これについては何の問題もないプレーなのだが、もともと外野手が深めに守っているということは、打球への到達スピード、距離が短縮されているということなのである。つまり、走者だけでなくベースコーチにも、より高度な判断が求められるというわけだ。
この試合だけでも三重総合の1番角田智洋が右中間の打球で一挙に本塁を陥れようとして失敗したプレー(記録は三塁打)、4番・甲斐友也が先制のタイムリー二塁打を放った直後に、三塁を狙い三塁で憤死するというプレー(記録は二塁打)があった。
今大会では、各チームが新球場の様々なデータを実戦の中で収集し、それが来年、再来年、さらに先のチーム作りへと受け継がれていくことになる。
まずは外野手のスピード化が急務となり、投手は直球系の内角攻めがスタンダードとなるかもしれない。打者はさらなるパワー化が進み、内外野の連係プレーはより精度の高さを求められるはずだ。
ひとまず広い球場がもたらす効果が現れてくるのは、来年以降になるだろう。
(文=加来 慶祐)