試合レポート

明石vs智辯和歌山

2012.05.28

明石vs智辯和歌山 | 高校野球ドットコム

明石 3回に5番舩山がスクイズを決めて2点目

手堅い野球

頑なまでの手堅い野球を実践する明石の野球を見ながら、前日に勝利を挙げた報徳学園・永田裕治監督の言葉を反芻した。

「(比叡山みたいに)振ってくるチームは県大会でもほとんどない。ええ勉強させてもらいました」

激戦区・兵庫県で、そんなはずはないだろう。
東洋大姫路報徳学園など、手堅い野球を身上とするチームが多いのは確かだが、とはいえ、兵庫に振るチームがないはずはない。永田監督の言葉を聞きながら、昨日は、そう思っていた。

しかし、この日の第1試合に登場した明石の野球は振ってくるチームではなかった。実に手堅い野球を身上とするチームだった。

「一気にたたみかけた方が勢いに乗るんでしょうけど、うちのチームとしては、取れる時に得点を取っておく。走者を進めていく野球をしているんです」。
明石・角野友昭監督は、チームが実践する野球をそう説明してくれた。

事実、甲子園の常連・智弁和歌山を前にして、試合を制したのは、その手堅い野球にあった。

智弁和歌山のバッテリーミスにより、2回1点を先制すると、3回裏、明石は持ち前の攻撃を見せる。

 1死から4番・福山大貴(3年)がセンター前ヒットで出塁すると、盗塁と暴投で1死三塁の好機をつかむ。すると、5番・舩山和馬(3年)がスクイズを成功。2点目を上げた。
5回裏に2死からの連打で2点を追加すると、6回裏は先頭の出塁を犠打で送ると、4番・福山のタイムリー二塁打で1点。7回裏も、死球の走者を犠打で送って二死二塁から9番・浦崎剛士(3年)のセンター前タイムリーで1点を加えたのである

小刻みに得点を重ね、じりじりと智弁和歌山との差を広げていった明石


明石vs智辯和歌山 | 高校野球ドットコム

明石 智辯和歌山を破りリリーフの福山は大きく拳を突き上げる!

 もっとも、明石打線に打力がないわけではない。1番・川原健吾(3年)は俊足好打が光り、3番・栗林隼平(2年)、4番・福山の打撃は確実性が高い。スクイズを成功した5番・舩山だって、脚力のある好打者だ。普通に打って出ても、申し分のない打線だ。

 それでも、と角野監督はいう。
「3、4番でもバントをさせます。やはり、高校野球は負けられないですから、1点でも多くって考えると、そういう野球になりますよね。8回表の守備で、ウチは普通のライト前ヒットを後逸して三塁打にした。そのあと、タイムリーを浴びて1点を失いました。野球って、本当に何が起こるか分からないので、終盤にはなるべくアドバンテージがあった方がいいと思っています。今日の1勝は大きいです。練習ではなかなか進歩しない部分も公式戦を経験しただけ、だいぶ変わりますからね」

明石が10安打だったの対し、智弁和歌山は9安打も放っていた。
ほとんど差は変わらないのに、ゲームは明石の完勝。
見事なまでの手堅い野球が結実しての結果だった。

 そして、指揮官の口を突いて出てくる反省も、また手堅い。
「厳しい相手との戦いがこの夏には待っている。それに勝っていくためには、もっとバントの精度を上げないといけない」

今年の兵庫の野球は実に手堅い。

冒頭に記した報徳学園・永田監督の言葉は、確信に近いものなのかもしれない。

スターティングメンバー
智辯和歌山
8沼倉健太、4阪本将太、5大倉卓也、6嶌直広、7吉川雄大、3髙垣和真、9西健太朗、2長壱成、1土井健太郎
明石
4川原健吾、9櫻井拳人、7栗林隼平、2福山大貴、5舩山和馬、8池田圭吾、3久保周平、1松原史弥、6浦崎剛士

(文=氏原英明)
(写真=松倉雄太)
(写真=試合シーン63~101・中谷明)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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