試合レポート

大阪桐蔭vs履正社

2017.10.14

大阪桐蔭緩む様子なし 根尾・柿木の投打の柱が活躍し2年ぶりの優勝

大阪桐蔭vs履正社 | 高校野球ドットコム
柿木蓮(大阪桐蔭)

 今年三度目の宿敵対決。ただ西谷浩一監督は「このチームになってから初めて履正社さんと戦う」とあくまでリセットを強調。先発マウンドに登ったのは柿木蓮。西谷監督からは、「春、夏、国体で経験したことを生かして投げてこいといわれて、しっかりと投げてやろうと思いました」と柿木はエースにふさわしい勝てるピッチングを見せた。

 初回、大阪桐蔭は1番藤原恭大、2番宮崎仁斗の連打で無死一、三塁のチャンスから、3番中川卓也の犠飛で1点を先制。柿木は「自分は立ち上がりが悪いので、1点を先制しても、0対0のつもりで投げた」と気を引き締めて投げた初回だったが、二死一、三塁から5番井上の適時打を浴び、同点を許してしまう。しかしここからは切り替えて柿木は常時130キロ~138キロのストレート、スライダー、カーブ、フォークをコンビネーションに抑える。ストレートの調子については、「ストレートの走りは甲子園の時ほどではないですし、調子は悪く、打たれ過ぎ」という。しかしそれでも抑えることができるのは、経験がものをいうのだろう。一方、履正社の先発・清水大成(1年)は、巧みなピッチング。テークバックをコンパクトにとり、しっかりと左オーバーから投げ込む直球は、125キロ~133キロと突出して早くないのだが、角度があり、さらに、120キロ前後のスライダーの切れもよく、110キロ前後のチェンジアップ、100キロ台のカーブを投げ分ける技巧派左腕。いずれは、140キロ台の到達も期待できる左腕だが、今はテクニックのうまさで大阪桐蔭打線に立ち向かい、5回まで1失点。1対1のまま5回を折り返す。

 6回表、大阪桐蔭が清水をとらえ、一死から5番青地 斗舞、6番井阪 太一の連打で一、二塁のチャンスを作り、清水は降板。右サイドの美野田雄介が登板。125キロ前後の速球、110キロ前後の曲がりが大きいスライダーで勝負する投手だが、8番小泉航平にストレートを振り抜かれ、二塁打に。勝ち越しに成功する。さらに7回表、一死一、三塁から5番大阪桐蔭 山田健太が甘く入ったスライダーを逃さずレフト前適時打。一死満塁から7番井坂の適時打で2点を追加。投手交代して、3番手には、120キロ後半の速球、スライダー、フォーク、カーブを武器にする植木 佑斗(1年)が登板する。植木も小泉に犠飛を浴び、6対1と点差をつけた。


 そして8回表、一死一、二塁のチャンスから打席に立ったのは4番根尾昂。根尾は粘りに粘って、7球目だった。128キロのストレートを振り抜くと、打った瞬間、本塁打とわかる今大会第3号となる3ラン。打球はライト場外へ飛び込むホームランとなった。根尾は「ファール、ファールで粘っていたので、ストレートをしっかりと振り抜けました」とコメント。本塁打を打てた要因として、1打席目の反省を生かしたことを挙げた。
「第1打席は相手投手に合わせすぎて、体が硬くなっていたんです。だから体を柔らかく使おうと思っていて、ベンチから『柔らかく、柔らかく!』という声が飛んでいましたので、それを意識してから、第3打席目にヒットを打ったようにだんだん自分の感覚が良くなってきました。体をどう柔らかく使い、しっかりと振り抜くことを意識しています」
根尾は高校1年生の時から強く振ることを意識している。ただ体をひねり過ぎて、コンタクト率は低かったが、体の使い方を意識して、コンパクトな体の使い方で強い打球を打つことを意識している。高度な打撃を実現しようとしている。来年のドラフト候補として強くアピールした打撃となった。

 柿木は8回裏、6番三木彰智に適時二塁打を打たれてしまうが、「後半の方が、良い意味で力みが抜けた」と話すように、ストレートのスピードが140キロを超えるようになったのは7回から。しかも球数が100球超えてからだった。7~9回で140キロ以上が4球。そして最後の打者を打ち取ったボールがこの日、最速142キロ。9安打打たれながらも、2失点完投勝利で、2年ぶりの優勝に導いた。ドラフト観点から見れば、不調ながらゲームメイクしたことは評価できる。前エース・徳山壮磨の同時期よりストレートの勢い、球威は格段に上である。まだまだ強いストレートを投げられる可能性は秘めている。西谷監督は「夏、国体の経験が良く出ました。特に国体では花咲徳栄さんと対戦して、日本一の打線はこういうものだと肌で感じたと思います。そういう経験がこの決勝戦の投球に現れたと思います」と柿木の力投をたたえた。

 柿木は、「正直、9安打は打たれ過ぎですし、成績上、粘ったように見えますが、僕はまだ粘りが足らないと思います。それでも甲子園の時ほどストレートが走っていなくても、勝てたのは経験が生きているのかなと思います」
勝利しても納得していない様子を見せているのは、大型左腕・横川凱の存在がある。横川は準決勝の近大付戦で1失点完投。ここまで3試合の先発でKOされることなく、しっかりとゲームメイクに徹し、柿木を脅かす存在となってきた。
「一緒に1年生の時からやってきたやつですし、最近は調子も上がってきていますし、奪ってやろうという思いをひしひしと感じます。でもエースナンバーは渡したくないです」
エースナンバーを奪われる危機感を感じながらマウンドに立っている。そういう競争の激しさが大阪桐蔭の強さを築いているのだろう。
大阪の頂点に立った大阪桐蔭だが、全く緩む様子はない。試合後も西谷監督が選手たちを集めてミーティング。今度は近畿大会である。
「近畿大会は勝負の大会。相手ももっと強くなると思いますし、気を引き締めて戦いと思います」(西谷監督)
大阪大会でも隙の無い試合運びで頂点に立った大阪桐蔭。10月21日から開幕する近畿大会でも力強い戦いを見せてくれそうだ。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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