都立府中東vs都立新宿
8回、一度は追い着いた新宿だったが突き離せず苦杯
十亀(府中東)
お互いにもう一つ決め手を欠いていたと言えば、そういうことが言えるかもしれない。しかし、新チームが出来て1カ月半の間で、「このチームで何がやれるのだろうか」「どういうチームにしていこうか」という試行錯誤がある中で、チーム作り途上の秋の新チームの序盤の公式戦らしい戦いだったという印象でもあった。
結果的には終盤にもつれて、接戦の末に8回裏に貴重な得点を貰った都立府中東が、そのまま逃げ切ったという形になった。その結果に対しても五江渕好正監督は、「夏休みに根今までよりも辛い練習をしてきたのだけれども、成果を結果として出すことができてよかった」と素直に喜んだ。と言うのも、それまでは、休日も半日練習だったものをこの夏は、1日練習というメニューにして、選手たちにも負荷がかかっていたのだ。だけれども、それを耐えきれたことで、選手たちも逞しくなれたということが結果として表れたのだった。
展開は前半は都立府中東のペースで、初回は先頭の岡村蓮君が安打で出しながらもバントで進めきれないでいたのだが、四球と盗塁で相手悪送球もあり幸運な先制。さらには、4回は死球とバントが安打になるという形でチャンスを広げ、一死二三塁から8番投手の十亀大地君の中前打で2者を帰した。自身のタイムリーでもあり、十亀君は、気をよくして好投していたが7回に失策で1点を失う。
さらに8回にも失策の走者が5番遠藤煕隆君の二塁打で帰り1点差、さらに小幡哲央君のタイムリーで同点として、都立新宿としてはいい流れも作っていた。
この失点をした回の守りに関しては、野手が太陽に目を奪われたこともあったが、「そのための準備は十分にしてきていて、何度も言っていたことなので、それはボーンヘッドだと言いました」と、五江渕監督は厳しさも示していた。
遠藤熙隆(新宿)
それでも、都立府中東は粘り強かった。
同点とされた8回、その裏は代打などで仕掛けたが、一死で3番酒井俊君が四球で出ると、4番の金井俊也君にもあえて送らせて二死二塁とする。さらに、相手の遊撃手がノーマークだったということに気付いて三盗を仕掛けて成功。これで相手バッテリーにプレッシャーをかけていくのだが、ここで捕逸があって三塁走者が生還。結果的には敢えて送ったことも思い切った盗塁も効いたということになった。そして、これが決勝点となったことで選手たちも仕掛けていくことの姿勢が自信となったのではないだろうか。
試合の流れとしては、後半からは明らかに都立新宿に傾きかかっていた。それだけに、田久保裕之監督は攻め方を悔いた。
「監督の采配ミスです。作戦としては、何が出来るのかということではなくて、これは出来ないからやめておこうということで消去法的な采配になっていました。これは自分自身の反省です。もっと、選手を信頼してあげないといけないのでしょうね」
しかし、「これから、このチームを逞しく作り上げていきます」と切り替えて、早くも先を見据えていた。
大都会のど真ん中に位置する進学校でもある都立新宿。限られた環境であることは否定できないのだけれども、その中で「何が出来て、どうしていけばいいのか」ということを練習面でもスキルの面でもこれから一冬超えてどれだけ作り上げていかれるのか…。前任の小山台では助監督として、21世紀枠代表校として[stadium]甲子園[/stadium]に導いていく一助も担った田久保監督である。一冬超えたところでどのような形にチームが作られているのか、来たるべきシーズンへの期待は大きいチームでもある。
(文=手束仁)
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