履正社vs広島新庄
最後まで自分の野球を貫いた履正社が初の国体優勝!
安田尚憲(履正社)
決勝戦は打撃戦となった。
1回表、広島新庄は1番古川智也が死球で出塁すると、古川が盗塁を決め、犠打で二死三塁となって1番杉永の中前適時打で1点を先制。その後も敵失や7番田中政範の適時打、8番古本幸希の適時打で4点を先制。履正社の先発・竹田祐に対して、機動力を織り交ぜ、攻め立てて4点を取った得点内容は見事であった。小技を駆使する広島新庄野球が存分に発揮されたイニングだった。
だが1回裏、履正社は安田尚憲の犠飛、8番竹田祐の2点適時打で1点差さらに2回裏には野選で同点に追いつくと、さらに3回裏には1年生捕手・溝田晃生の適時二塁打で勝ち越しに成功した。
広島新庄は4回表に、5番河内の適時打で同点に追いついたが、4回裏、履正社は8番西山虎太郎の中前適時打で勝ち越しに成功した。そして5回裏には、四川雄翔の適時打、安田の高校通算42号となる2ラン本塁打で9対5にすると、6回裏には2番北野秀の本塁打などで3点を追加し、12対5とした。
履正社打線が爆発。エース・堀瑞輝が登板していたら状況は大きく変わっていたかもしれないが、打ち損じすることなく、捉えることができているのが素晴らしい。
竹田祐がつかまってしまったが、2番手・山口裕次郎は調子がベストではない中でも粘り強い投球で広島新庄打線を抑え、そして8回表から寺島成輝が2回をぴしゃりと抑え、見事に初優勝を収めた。
場内行進する履正社ナイン
試合後、寺島は率いる岡田監督にウイニングボールを渡したことを伝え、そして報道陣の前では「高校最後の大会。夏で優勝できない悔しさは少し晴らすことができました。国体とはいえ、一応、日本一ですので、うれしいです」と語った。
1回戦から決勝戦まで、つながり始めたら止まらない攻撃力。少しでも先の塁を狙う洗練された履正社の野球スタイルは、夏が終わっても健在であった。国体は夏の試合と比べるとどことなくリラックスをしていて、選手たちも笑顔も見られる。履正社ナインはグラウンドを離れれば冗談を言い合う、面白い性格を持った選手たちばかりであるが、グラウンドに立つと、厳しい指示や声出しも行ったり、たるんだ様子も見せることなく、全力プレーに徹する姿勢を見せて、オンとオフの切り替えが見事な集団であった。
今年の履正社はエース・寺島が注目されるが、野球選手として必要なものが備わった選手が多く、次のステージでも活躍が期待できる選手が多かった。一度、リフレッシュをして、しっかりと準備をして勝負していってほしい。
その3年生の中に混じって、履正社は7人の1、2年生がベンチ入りしていた。笑顔でプレーしていた3年生と比べて、1,2年生はやや硬い様子。新チームで主将を務めている若林将平は「3年生と野球ができる最後の機会ですので、楽しんでいこうと思っていますが、やはり独特の緊張感があります。レベルの高いチームと対戦することができてとても刺激になっています」とコメント。この大会で高校通算16号本塁打を放ち、一定の結果を残した。あとはどれだけ大阪大会につなげることができるか。
また決勝戦まで思うような当たりが出ずに苦しみ、決勝戦で高校通算42号本塁打を放った安田は、ほっとした様子で「良かったです」とコメント。最近は調子を落としているようで、捉えたと思った打球が当たらない、打ち損じることが多かった。これまでまだ本調子ではない。安田も原因は分かっているだけに、中々苦しい時間を味わっているようだ。
履正社に限らず、1,2年生ながら出ている選手たちはどこか緊張感があった。国体は3年生の大会といわれるが、それでも1,2年生が参加するというのは戦力として使ってもらっている、あるいは大きくなってほしい思いで起用されている証拠である。
今回の国体に参加した全選手がプレイヤーの成長のきっかけになることを期待したい。
(文=河嶋 宗一)
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