試合レポート

神村学園vs岩国

2014.03.21

影のヒーローとなった神村学園の9番打者

 最終的には点差こそついたが、開幕戦にふさわしい見所満載の一戦だった。

 最速140キロのストレートを見せ球にスライダーをどの場面でも使える岩国柳川 健大(3年)。
 一方、90キロ台カーブ、110キロ台チェンジアップ、120キロ台スライダーなどを投げ分ける軟投派と思わせて、最速136キロのストレートにも威力があった神村学園東 務大(3年)。両投手による序盤の行き詰るような投手戦。

 一転、中盤以降は前評判に違わぬ神村学園の猛打ショーに。7回表・「狙ってはいなかった」と言いつつも、巻き込むようにスライダーを捉え、試合を決める大会第1号3ランを放った3番・山本卓弥(2年)はもちろん、2安打に鋭い外野ライナー2本の高校通算30本塁打の4番・小島千聖(3年)など各打者のスイングスピードは驚異的ですらある。

 また、4回の先制点・6回の勝ち越し点に至る柳川の暴投までのプレッシャーのかけ方や、「ずっと研究はしていた」(小田大介監督)という相手の打球方向と甲子園の風をしっかり頭に入れた神村学園の守備位置取りも印象的。「平常心にさせてあげられなかった」と、岩国・河口雅雄監督は敗戦の責任を一身に背負ったが、4回裏先頭打者6番・亀谷勇太(3年)の二塁打から、河村凌輔(3年)犠打、木原勇人(3年)の犠牲フライまで同点劇は鮮やかだっただけに、その後の展開が悔やまれる。


 そして、この試合には「影のヒーロー」が存在する。神村学園の9番打者・野崎大成(3年)だ。

 まずは守備面。5回裏の岩国先頭打者は1番・川本拓歩。同点の勢いに乗って初球を捕えた打球は右中間へと思った瞬間に、50メートル走6秒1の俊足を駆って脱兎のごとく出てきたのは「岩国のDVDを見ると川本くんはライト線の当たりがなかったので、はじめから右中間よりに守っていた」野崎であった。センターすぐ横まで走っての間一髪キャッチは「あれは大きかった」と指揮官も認めるビッグプレーとなった。

 打っても3回表の第一打席ではチーム初安打となるショート内野安打。第二打席も二遊間へのヒットと二盗で流れを引き寄せ、第三打席は犠打で3ランへの呼び水作り。そして圧巻だったのは8回表の第四打席であった。遊撃手・中堅手の間に落ちるテキサスヒットを放つと「ベースカバーがいないのが見えたので」ノンストップで二塁へ。しかもその後のコメントが心憎い。

「三塁もベースカバーがいなかったので、最初は狙おうと思っていました」

 試合が見え、野球を知っているからこそこういったプレーができることが随所にうかがえる。

 こうして、2年ぶり4回目の選抜出場で一致団結して昨年7月就任の小田監督に甲子園初勝利をプレゼントした神村学園の選手たち。2回戦・福知山成美戦でも野崎のような「影のヒーロー」が現れれば、野上亮磨(日産自動車→埼玉西武)をエースに初出場で準優勝を成し遂げた2005年・第77回大会のような大躍進再びも決して夢ではない。

(文=寺下友徳

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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