Interview

投手人生スタートは高校から。社会人屈指の速球派・宮川哲(東芝)が154キロ右腕になるまで【前編】

2019.10.11

 今年の社会人野球で速球投手ならばナンバーワンと呼び声が高いのが宮川哲だ。常時140キロ後半・最速154キロの速球は空振りを奪え、カットボール、フォーク、カーブを織り交ぜ、速球投手でありながら変化球も高水準の本格派右腕だ。1年目から日本選手権で活躍し、今年は都市対抗登板を経験した宮川はいかにしてドラフト上位候補と注目される存在になったのか。その軌跡を追っていきたい。

投手として大きく成長させてくれたのは上武大の環境、指導者

投手人生スタートは高校から。社会人屈指の速球派・宮川哲(東芝)が154キロ右腕になるまで【前編】 | 高校野球ドットコム
宮川哲(東芝)

 奈良県出身の宮川が野球を始めたのは5歳から。ただ投手を始めたのは遅く、生駒ボーイズ時代は投手ではなく、内野手だった。そして甲子園へ出場したい思いで県外に出て野球をすることを決意した。
「当時は激戦区の大阪に進むよりも、東北の学校に進んだほうが甲子園にいく確率が高いと思いました。その中で東海大山形からお誘いをいただいたので、東海大山形に進むことを決めました」

 高校から本格的に投手をはじめ、外野手を兼任しながら、試合出場を目指した。当時の実力について宮川は、
「ストレートとスライダーのコンビネーションで勝負する投手でした。ストレートでカウントを取って、スライダーで空振りを奪うという感じの投手でした」
 ストレートのスピードは当時から優れ、高校2年時に最速143キロを計測するなど、速球投手として頭角を現し、最後の夏はベスト8進出。着実にステップアップしていった。

 さらなる上達を目指して上武大に進学。ここから宮川は投手1本で実力を磨くことを決意する。上武大の環境について、
「すごく恵まれた環境ですし、野球をやる分には申し分ない環境でしっかりと勝負できると思いました」

 さらに指導者にも恵まれた。上武大初のプロ野球選手となった菊地和正(元北海道日本ハムなどに所属)コーチからトレーニング法を学んだ。宮川はピッチング練習の合間に体幹トレーニングを欠かさずに行う。これは大学時代から継続しているものだ。

 そして菊地コーチや谷口監督から打者心理で投げる重要性を教わった。
「打者心理。このカウントの場合、打者はこう考えているということを教えてもらいました。この4年間で大きく成長できましたし、とても充実していたと思います」と振り返る。

 自慢のストレートは大学4年間で、最速149キロまでレベルアップ。「肩のスタミナには自信がある」と語るようにリーグ戦では第1戦で先発し、2戦目以降はリリーフで待機とフル回転した宮川。2年秋からの明治神宮大会で全国デビューを果たし、大学選手権を合わせ計4回の全国大会に出場。
 8試合に登板して、好投を続け、評価を高めていった。自信をつけてプロ志望届を提出した宮川だったが、惜しくも指名漏れ。東芝で実力をつけ、2年後のプロ入りを誓った。

[page_break:力感がないフォームから150キロを投げる]

力感がないフォームから150キロを投げる

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宮川哲(東芝)

 ただ入社して直後、社会人のレベルの高さを痛感する。入社してすぐの3月の東京スポニチ大会で最速150キロをマークするなど、自慢の速球を投げ込んだが、思い通りの結果が出ない日々が続いた。
「大学と比べてレベルが上がっていて、自分の思い通りのボールが投げられれば抑えられますが、甘い球を投げてしまうと、確実に打たれてしまいます。投げていく中で、自分への物足りなさと甘さを実感しました」

 大学時代は勢いのまま力で押すピッチングで勝負していた。しかし社会人では通用しなかった。
「打者から打ちやすいといわれたので、昨夏からフォームを改善するための取り組みを行ってきました」

 宮川の言葉通り、大学時代の映像と社会人時代の映像を見比べると、別人のように体を使う意識がみられる。具体的にどう変えたのか。
「以前は勢いのあるフォームだったので、力感のない、ゆったりとした動きの中で、速いボールを投げることを大事にしました。下半身、上半身の使い方で変えた部分はあまりありません。ただ大事にしていたのは、左足を挙げた時に、軸をしっかりと作ること。そうすれば、自然と下半身と上半身も使える意識で僕は投げていました。投げるときは軸をしっかり作ることを意識していました」

 このフォームにしたことで打者の感じ方は変わった。
「今までのように力いっぱい投げているときもよいボールは投げられていました。ただ打者にとっては130キロぐらいのボールしか投げなさそうなフォームの力感から150キロを投げることができれば、差し込むことができるので」

 その感覚をつかんだ宮川は、日本選手権では新日鉄住金広畑戦では7.1回を投げて、3失点の力投。最速152キロをマークし、2年目へ手ごたえを実感する投球だった。脱力して投げる感覚をつかんだ宮川はオフシーズンもその感覚を失わせずに投げてきた。

 そして宮川のピッチングを語る上で、欠かせないのが高い精度を誇る変化球だ。大学時代と比べてもその引き出しが大きく広がった。その投げるポイントについては次回で紹介していきたい。

(取材=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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