試合レポート

市立呉vs安芸府中

2019.07.24

市立呉、沼田の好投で準々決勝へ

 ナイター照明のない広島県総合グラウンドは基本的に日没が近くなると野球が出来ない。しかし、日程が詰まると話が別だ。特に23日はすでに二日の順延を経ており、予備日もほぼなかったせいか中止することなく、第二試合の市立呉安芸府中の試合は行われた。市立呉は去年今年と二年連続の選抜出場を果たし、県内でも指折りの選手たちがそろっている。特にエースの沼田仁(3年)は昨年のセンバツで初勝利した際にも登板経験があり、今春のセンバツでも開幕戦で力投した。特徴は制球力。大崩れしない投球が持ち味だ。

 総合グラウンドではほぼ異例の午後五時半試合が始まった。すでに太陽は沈みかけ、暗くなりかけているが、そんなことはこれから試合に出場する選手たちには些事に違いない。

 試合は初回から動き始める。先攻を取った市立呉は一死から二番の上垣内俊早(3年)がショートの深い所に達する内野安打で出塁すると、安芸府中先発の住吉尽(2年)のワイルドピッチで一気に三塁まで進塁する。続く三番の田邊舜治(3年)のセンターへの犠牲フライで上垣内が生還、初回からゲームの主導権を得る。

 安芸府中の打線は市立呉のエース沼田の力投の前にまったく打開策を見いだせない。持ち前の制球力でコースを広く使う投球術。ストライクゾーンのギリギリを出し入れし、スライダーなどを織り交ぜた配球に手も足も出ない。その間にも市呉打線は住吉を攻め立て三回までに4対0と試合を優位に進めた。

 安芸府中は四回からエースナンバーの[player]幹田流星[/player](3年)をマウンドに送る。するとそれが吉と出たのか、市呉打線の勢いをぴしゃりと止めた。だんだんと暗くなり、ボールがますます見づらいためか両チームとも守備のスタートが遅れたりといった弊害も見受けられたが試合は順調に回を進めていく。

 九回、雌伏の時を続けていた市呉打線がついに幹田に牙をむいた。二死を簡単に取られたものの、そこから一番塩田開都(3年)、二番上垣内がシングルヒットで続き、二死一、二塁から三番田邊がセンターを超える二塁打を放って六点目を入れる。その後も沼田の二塁打なども飛び出し、幹田がついに力尽きた。市立呉はこの回打者一巡の猛攻を安芸府中に浴びせて五点を追加、9対0とし、試合を決めた。

 市立呉の右腕エース沼田は結局最後の最後まで安芸府中打線に付け入るスキを与えなかった。奪った三振は四連続奪三振などを含めて、ちょうど十個。打たれたヒットはわずか三本と素晴らしい安定感を万座の前で見せつけた。安芸府中打線は初回二死から三番の石丸功樹(3年)がライトオーバーの二塁打を放つなど得点機を作ることは作ったが、後続が沈黙しそのチャンスを生かすことが出来なかった。

 二年連続での選抜出場はやはりフロックだけによるものではない。事実朝から球場入りしていた市立呉は七時間近く待たされている。それだけの時間、集中するのは不可能だ。その時間に合わせて集中の波をピークに持ってきた。それが出来るだけのチームになっているという成熟度を見ることができた貴重な試合だったと思う。

(文:編集部

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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