県立岐阜商vs津西
好テンポの投手戦は、県岐阜商に一日の長
先発した伊藤航希君(津西)
今年で創立110年、創部90年の県立岐阜商、岐阜県を代表する名門校である。津西は、01年春以来の東海大会進出で、秋は初出場という新鋭校だ。
県立岐阜商は注目の本格派高橋純平君、津西はスラリとスリムタイプの伊藤航希君だが、クレバーな投球が持ち味だ。そんな二人の投げ合いという試合になった。少し緊張した空気を感じさせながら始まった試合は、お互い失策も出たが、両投手が踏ん張って3回までは0対0。試合が動いたのは、4回だった。
この回の県立岐阜商は、先頭の4番後藤君が四球で歩くと、捕逸で二塁へ進み、加藤君がバントで送り一死三塁とする。ここで、6番山田君が右前に落としてタイムリー安打となった。
その後は、津西の伊藤君が踏ん張って追加点を許さなかったものの、高橋君が安定しているだけに、県立岐阜商としては、1点でもリードしたことは大きかった。
高橋君も、強引に三振を獲りに行くという投球ではなく、リラックスした感じで8分程度の力で投げ込んでいた。それだけに球も却って活きていたという印象だった。
そして7回、県立岐阜商は先頭の7番大野君が中前打で出ると、しっかりと坂下君がバントで送り、9番高橋君が振り抜いていった打球は中堅手頭上を越えて三塁打となり、大野君が帰った。高橋君自身のバットで奪った追加点だけに、同じ1点でもさらに価値の大きい1点だったといってもいいであろう。
12三振奪完封した高橋純平君(県立岐阜商)
このリードを高橋君は力むことなく、スイスイと守り切った。
終わってみたら、被安打3で与四球1、三振は12個を奪うという内容での完封だった。球数は122と少し多かったが、これには、高橋君自身も意識していて、「前半はファウルを多く打たれて球数が増えていましたから、その後は走者が出ても、併殺をとれるように投げていきました」と言うように、三振を奪っていくことには特にこだわってはいなかったようだ。
それでも、一死三塁になった場面などでは外野手を下げさせて、あえて三振を奪いに行って思惑通り三振を奪うという、大人の投球も見せていた。
この秋季県大会を前に就任した県立岐阜商の小川信和監督も、「今日は高橋の好投に尽きますね。立ち上がりに少し不安を感じさせたところもあったのですが、2回以降は気持ちも入れ替えて、9月の県大会の時よりもさらに成長を感じさせてくれました」と、投球内容の質が上がったことを評価していた。
進学校の津西は、前日まで試験だったということもあって、必ずしもベストコンディションではなかったというところもあったかもしれない。特に、進学校としては、大事な大会前とはいえ、試験勉強もおろそかにはできない。それでも、チームのモットーでもある「最短時間の最大効率」を実践しながら戦っていた。
村田治樹監督も、「限られた中で、きちんとやることはやれたと思います。ただ、力が及びませんでした」と、残念がりながらも、選手たちのここまでの頑張り、真面目に取り組んできた姿勢に対しては、高く評価をしていた。
(文=手束 仁)