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全国区の常総学院を霞ヶ浦や明秀日立が追い、土浦日大も復活で混戦【茨城・2018年度版】

2018.03.11

茨城県の流れを変えた常総学院

全国区の常総学院を霞ヶ浦や明秀日立が追い、土浦日大も復活で混戦【茨城・2018年度版】 | 高校野球ドットコム
全国、茨城でも強さを示す常総学院(写真は2015年秋季関東大会より)

 かつては水戸商竜ヶ崎一(竜ケ崎中)などが引っ張っていた茨城県の高校野球。その歴史を変えたのが常総学院だ。というより木内幸男前監督であろう。

 木内監督は土浦一の出身だが、取手二で1984(昭和59)年の夏に、桑田真澄清原和博(ともに当時2年)がいたPL学園を倒して初めての全国優勝を飾る。この優勝の後、請われて常総学院に移ることになる。そして常総学院で結果を出し続け、確実に茨城の高校野球のレベルを上げたということは間違いない。

2003(平成15)年には、早くからこの年で勇退を宣言しながらも、ついに全国で最後まで残ってしまった。全国制覇は01年春に次いで常総学院としては2回目、木内監督自身としては3回目のものとなった。監督としてもここまで甲子園出場は春7度、夏13度、決勝進出は春夏通算して5度あり、通算40勝という数字は光る。

 2001年の春のときは、「今回は、初めて勝てる可能性のある決勝戦でしたから…、もう必死でした」などと言っていた。また03年夏には、「バントのしすぎですかね。だけど、打てない子たちに一つでも多く勝たせてやりたいと思ってっと、バントのサイン出してしまうんですね」など、どこまで本気でどこまでとぼけているのか、そんなマスコミとのやり取りも話題となっていた。

 それらを含めて、「木内マジック」とも呼ばれていたが、それに対しても本人は、「マジックでもなんでもないんです。練習をしっかり見て、選手の調子や性格を見て起用してっから…。皆さんには突飛な作戦に見えるかもしれませんけど、私はバントも、できるヤツにしかやらせてませんから」という答えでかわす。こういうことを甲子園のインタビューでも平気で答える。しかも、意識的と思えるくらいに茨城弁を直そうとせず、インタビューも質問以上のことを喋るリップサービスも面白い。勝利監督インタビューを聞きたいがために常総学院を応援しているという人も少なくなかったくらいだった。

[page_break:明秀日立、土浦日大、霞ヶ浦など第二集団は混戦状態に]

明秀日立、土浦日大、霞ヶ浦など第二集団は混戦状態に

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常総学院を抑える快投を見せた細川拓哉(明秀日立)

 その木内監督が、宣言どおり03年夏を持ってユニホームを脱いで現場を去った。そう思われたのだが、07年夏以降に再度就任。佐々木力監督につなぐ10年までもう一度監督を務めて、08年夏、09年夏と甲子園に進めているのだから恐れ入る。

 やがて、木内監督が正式に引退して、取手二時代の教え子の佐々木力監督に引き継いでからも、常総学院は甲子園の常連校であり続けている。12年夏から3季連続出場して、15年春と16年春夏にも連続出場を果たすなど、県内で最も安定して甲子園に出場しているチームであることは間違いない。

 

常総学院に続く私立校勢力としては、15年夏年に悲願を達成した霞ヶ浦をはじめ、青森県で光星学院(現・八戸学院光星)を何度も甲子園に導き実力校に育て上げた金沢成奉監督が就任してめきめきめきと実績を挙げている明秀日立が追随している。明秀日立は17年秋季関東地区大会で準優勝して、センバツ初出場を果たした。さらには、東洋大姫路で実績のある堀口雅史監督が就任した東洋大牛久、東都大学野球連盟の日大監督で優勝経験もある鈴木博識監督を招聘した鹿島学園など、それぞれが指導体制の強化からチーム作りを始め虎視眈々と狙ってきている。さらにはつくば秀英茨城キリスト教学園、常磐大高なども上位を窺っている。

 また、久しく低迷していたという印象もあった土浦日大も復活した。74年の春夏連続出場はじめとして、17年夏に31年ぶり3回目の出場を果たすなど実績がある。下妻二で実績を挙げた小菅勲監督を16年に招いて翌年に復活を果たした。

 こうして、常総学院に続く第二集団は混戦と化してきている。

[page_break:水戸商、藤代のほか、一高、二高がつく公立校の躍進の存在も見逃せない]

水戸商、藤代のほか、一高、二高がつく公立校の躍進の存在も見逃せない

全国区の常総学院を霞ヶ浦や明秀日立が追い、土浦日大も復活で混戦【茨城・2018年度版】 | 高校野球ドットコム
取手一ナイン

 

 県内構図としては、常総学院の登場までは、竜ヶ崎一水戸商の両校が歴史的に大きな流れを作っていた。

 竜ヶ崎一は県南地区では土浦一に続く進学校でもあるが、野球部は「竜一ファン」という人に支えられ、練習試合でも多くの人がネット裏に詰め掛けてくる。ところで、竜ヶ崎一の校歌は、旋律は旧制一高の寮歌『アムール河の流血や』と同じで、かつて日清日露戦争で日本陸軍が歌っていた『歩兵の歌』こと『万朶の桜』とも同じ旋律である。これも、オールドファンから人気のあるもう一つの要素といってもいいであろうか。このところ、やや低迷感があるのはいささか寂しい。

 旧制中学系の甲子園ということでいえば、竜ヶ崎一が圧倒的に多いが、高校野球の父といわれている飛田穂洲の母校・旧制水戸中学、現在の水戸一を忘れてはいけないであろう。早稲田大の監督として大学野球に貢献した石井連蔵もOBである。この水戸一のライバル校が土浦一ということになる。

 一方の雄としての水戸商豊田泰光大久保博元、最近では井川慶(阪神など)がいる。地元では「水商(スイショウ)」と呼ばれて親しまれている。地元のブルーカラーの人気校といっていいだろう。ユニホームは明治大学によく似た襟のついたもので、胸文字も「M」が大きく書かれた筆記体で、これも明治っぽい。そのせいかどうか、大学は明治へ進む選手が目立つ。内野の守りのよさは毎年定評があり、玄人受けする野球で県内の人気では一番だろう。

 1999年春のセンバツでは準優勝を果たして茨城県は常総学院だけではないことを示した。その水戸商を率いた橋本實監督が定年後、水城へ異動。水城はこれで強化され10年夏と11年春に甲子園出場を果たしている。

 公立勢力としては、現在は千葉県の専大松戸で指揮を執る持丸修一監督が率いた藤代なども01年、03年と春の甲子園にも出場し、野口祥順(ヤクルト)、鈴木健之(横浜)に楽天の美馬学とプロ入り選手も送り出している。その後を引き継いだ菊地一郎監督も14年夏に甲子園へ導いている。

 県で最初の全国優勝を果たした取手二の現在はどうかというと、一時は部の存続さえ危ぶまれる部員不足という時代もあった。それでも、OBたちの尽力もあって徐々に復活の兆しで、関東大会にも復活を果たしている。

 ところで、茨城はこの取手に限らず、一高、二高とつくところが多い。原則的には、一高は旧制中学の流れを汲む元男子校で二高は女子校というのが多い。だから、一高と名乗るところは、いずれも地域では進学校として地元の人気も高い。下妻一太田一水海道一なども伝統校である。

竜ヶ崎一日立一など野球が実績を挙げている名門も多い。日立一は15年夏には決勝進出で注目された。また、16年春には石岡一が準優勝を果たして、関東大会に進出した。水戸桜ノ牧取手松陽なども元気で、茨城県の公立校健在ぶりを示して気を吐いている。実業校では水戸商に続いて日立商総和工なども健闘している。

(文:手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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