試合レポート

早稲田実業vs日大三

2015.07.25

早実、清宮決勝二塁打、松本3安打完封で日大三を破る

 戦前の甲子園大会に出場し、現在も東京で活動しているのは、早稲田実日大三だけ。現役の選手たちのうち、注目の1年生・清宮 幸太郎は、2006年の夏を沸かせた斎藤 佑樹に憧れ本格的に野球を始めたのに対し、日大三の選手の多くは、4年前の夏の優勝に憧れて日大三に入った。そして昨秋は日大三早稲田実にコールド負けし、その悔しさを胸に猛練習をし、春季都大会を優勝した。

 遠い過去、近い過去を、そして将来に向けても永遠のライバルである両校の対戦は、高校野球100年を象徴する注目の対決になった。

 試合開始が午前9時とあって、出勤前に立ち寄ったサラリーマンも含め、内野席はほぼ埋まる熱気に包まれた中、試合は始まった。

 日大三の先発は、この夏好調の桑村 和哉早稲田実はエース・松本 皓だ。序盤2回は双方無得点。早稲田実が1、2回、日大三が1回に併殺を記録したが、拙攻というよりも、両チームの守りの良さが目立った。

 そして3回裏試合は動く。一死後、9番渡辺 大地が四球で出塁し、二盗を試みたものの、日大三の捕手・小藤 翼に刺される。ところが日大三の先発・桑村は、1番山田 淳平、2番玉川 遼にも続けて四球。打席には清宮を迎える。清宮が7球目を叩くと、右中間フェンスを直撃する二塁打になり、2人が生還した。

 ただそれでも、この大会のここまでの流れから、この2点は打ち合いの序幕に過ぎないと思われていた。

 ところが、このところ打ち込まれることが多かった、早稲田実の松本の出来が素晴らしかった。カーブ、スライダー、ツーシーム、シュート、フォークなど、多彩な変化球を駆使して、日大三を抑える。


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第97回全国高等学校野球選手権大会

 松本 皓の好投にバックも好プレーで応えた。中でも8回表の日大三の先頭打者である8番佐々木 勝哉の右中間への浅い打球を、早稲田実の右翼手・玉川 遼がダイブしながら好捕。日大三は、反撃の糸口が見いだせない。

 それでも、4回から桑村に代わり登板した小谷野 楽夕は、5回を被安打1に抑える好投。遊撃手の下小牧 淳也をはじめとする鍛えられた野手陣も好守を続ける。

 早稲田実の松本は、5回戦(試合レポート)の都立日野との試合では、7回まで好投しながら、8回につかまったが、この日は、全く危なげない。9回表も早稲田実の二塁手・富田 直希が難しい打球を続けてさばいて二死。4番坂倉 将吾が右前安打で出塁したものの、小藤 翼が中飛に倒れて、試合終了。

 結局早稲田実の松本は、投球数95球、被安打3、与四死球2の好投。日大三の強力打線に長打を許さず、三塁を踏ませない力投で、攻撃のきっかけを与えなかった。

 また注目のルーキー・清宮 幸太郎は、二塁打の後は2打席連続三振。それでも試合を決めるここ一番で長打を打てるのだから、やはり「持っている」としか言いようがない。

 不安とされた投手陣だが、松本の好投で光が差したことで、決勝戦にも明るい展望が開けた。
一方、秋は早稲田実にコールド負けという厳しい試合でスタートした日大三は、猛練習で春の都大会を制し、夏も野手を中心に鍛えられた動きをみせた。今は悔しいだろうが、主将の田村 孝之介、強肩捕手の小藤らの今後別のステージでの活躍を期待したい。小谷野ら1、2年生にも素質のある選手が多い。

 鍛えられた両チームが、次の100年に向けて、また新たな伝説を作ることを期待したい。

(文=大島裕史


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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