Interview

静岡高等学校 池谷 蒼大投手「育成プログラムで才能開花!選抜注目左腕が目指すもの」

2017.03.22

 春の選抜大会の注目左腕の一人・池谷 蒼大。昨秋は14試合を投げて、防御率1.63、投球回99.1回を大きく上回る114三振を奪うなど、2年ぶりの選抜出場の原動力となった。今回は、そんな池谷の歩みを振り返る。

腰の怪我をプラスに変えた

静岡高等学校 池谷 蒼大投手「育成プログラムで才能開花!選抜注目左腕が目指すもの」 | 高校野球ドットコム

池谷 蒼大投手(静岡)

 浜松市立積志中時代、軟式野球部に所属し、最速134キロ左腕として活躍していた池谷。当時から池谷の投球を見ていた静岡高校の首脳陣の評価も高かった。「池谷に関しては、投球フォームが完成されていたので、フォームの指導をしたことはありません」と話す栗林 俊輔監督。それでも、池谷自身、高校入学当初は周りのレベルの高さに驚かされたという。特に侍ジャパンU-15代表入りした竹内 奎人を見て、「自分はずっと2番手投手のままなのかなと思っていました」と振り返る。

 そんな中、慣れない硬式球を投げ続けたことが影響したのか、池谷は1年生の6月に腰を痛めてしまう。診断の結果、「疲労性の腰痛」ということが判明した。分離症など重症ではなかったのが幸いだったが、栗林監督は復帰に向けて急がせなかった。

「池谷は1年秋での公式戦デビューを考えていて、1学年上の村木 文哉(現・筑波大)との二枚看板で考えていました。腰の故障もそこまで重症ではなかったのですが、将来がある子でしたので、まずは完全に治すことを優先させました」

 高校1年生の時は、リハビリとトレーニングを中心にメニューを組み立てた。怪我が再発しないように食事面にもこだわり、学校に訪れる栄養士と相談しながら、量と栄養バランスを重視した食事を摂った。練習試合デビューは1年生の11月。そして、1年目の冬のトレーニングは、腰の状態が完治したことで、本格的に取り組むことができた。

「がっつりとトレーニングができてよかった」と一冬越えた2年春。いきなり練習試合で、最速140キロを計測。池谷も手ごたえを感じる投球であった。

「腕が振れる感覚、体重が乗る感覚。すべてが1年生の時よりも良いといえるものでした」(栗林監督)
これで主力投手としてフル回転するかと思われたが、栗林監督は腰の故障を再発させたくないという思いから、池谷を慎重に起用した。まず3月の練習試合では1イニング限定。そして4月に入ってからは2イニングと、1イニングずつと増やしていき、夏の大会前の練習試合でも、4~5イニングだけで完投はなかった。池谷は順調にステップアップし、夏の大会前の練習試合では、最速144キロを計測するまでに速くなった。

[page_break:昨秋、理想とするピッチングが実現]

昨秋、理想とするピッチングが実現

静岡高等学校 池谷 蒼大投手「育成プログラムで才能開花!選抜注目左腕が目指すもの」 | 高校野球ドットコム

池谷 蒼大投手(静岡)

 2年秋、エースとなった池谷は、これまで練習試合・公式戦含めて短いイニングでの登板しかなかったため、一試合投げ切った経験がほぼなかった。県大会までの地区予選は「バタバタしてしまった」と振り返る。しかし、公式戦を投げていくうちに感覚を掴み、県大会を迎える頃には落ち着いて投げることが出来るまでになった。そして、東海大会1回戦の愛知桜丘戦。この試合で池谷は、1失点、10奪三振、完投勝利を飾る。

「東海大会の中ではベストピッチング」と振り返る2回戦の三重海星戦も、8回10奪三振。準決勝の三重三重戦では、8回2失点、9奪三振の好投で、決勝進出を決めた。2年ぶりの選抜出場を手繰り寄せたのである。秋、は14試合を投げて9完投。静岡高校のエースとして成長を果たしたのであった。

 この好投を引き出した要因の一つに、試合前の調整法の確立がある。その調整法とは、「キャッチボール」だ。池谷がキャッチボールで意識しているのは「軸足の使い方」と「肩の開き」などを意識した自分のフォームで投げることができているのかどうかだという。試合前のキャッチボールの方法を説明してもらうと、まず普通にキャッチボールを行って、徐々に距離を広げていく。90メートルに達したところで、反動をつけず、強くライナー性のボールを投げることを意識する。ここでポイントとなるのは、普段と同じ投球フォームで投げることだ。

「僕は、キャッチボールでもセットポジションに入って、体が投げ手に向かって並行になるように投げています」90メートルキャッチボールの球数は20球前後。そこから70メートル、60メートルと距離を縮めていく。このやり方をしてから「自分のピッチングができるようになったと思います」と口にする池谷。

 神宮大会では早稲田実業敗れたが、敗因の要因をしっかりと受け止めている。
「あの試合は、自分のフォームで投げられず、悔しい思いをしました。軸足が突っ込んだ形となって、球離れも早いフォームになっていました。ただ後半からは立て直すことができましたし、甲子園では自分のフォームで投げられないときがあるので、その中でどう立て直すのか。それを神宮大会で経験ができたのは良かったと思います」

[page_break:選抜ではコントロールとキレのあるストレートを投げるところを見てもらいたい]

選抜ではコントロールとキレのあるストレートを投げるところを見てもらいたい

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池谷 蒼大投手(静岡)

 2年目の冬は、ランメニュー、体幹トレ―ニング、ウエイトトレーニングを中心に行い、1年生の時よりもトレーニングのメニューを増やし肉体強化に努めた。さらに投球フォーム固めにも余念がない。「軸足の動き」「開き」「リリース」の3つを意識し、5種類のネットスローも日々行った。「充実とした練習ができた」と語るように、対外試合が解禁となった3月、池谷は好投を続けている。

「軽く投げている感じですけど、今までよりも手元で伸びるストレートを投げることができています」

 迎える選抜大会では、「チームを勝たせる投球をしたい」と意気込む。同時に、目標である高卒プロを実現させるために、今大会を勝負の大会と位置付けている。これはただの憧れではなく、栗林監督とじっくりと話し合って決断したものだった。栗林監督は、高卒プロを目指す上での大変さ、過酷さを池谷だけではなく、池谷の両親にすべて話した。それでも池谷家の決意は固かった。栗林監督は、「覚悟があるのであれば、我々はただ見守って応援するだけしかありません」とエールを送る。

 高卒プロを目指すきっかけは、鈴木 将平関連記事の存在がある。鈴木とは仲が良かったということもあり、「身近にいる先輩がプロに行かれたことで、プロへ行きたい気持ちがより強くなりました」と語る。そんな池谷のこの春の選抜大会の目標とは?
「とにかくチームを勝たせることです。僕の武器は、質の良いストレートと、コントロール、テンポの良い投球です。秋も奪三振の多くがストレートでしたし、ぜひ自分の切れの良いストレートを見ていただきたいと思います」

 堀内と鈴木がいた2年前の選抜では準々決勝で敗れた。昨秋よりも成長した姿を示し、1928年以来となる選抜ベスト4入りを目指す。

(インタビュー=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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