試合レポート

海星vs聖光学院

2019.08.13

柴田蓮人の好投から見えた今大会の象徴

海星vs聖光学院 | 高校野球ドットコム
柴田蓮人(海星)※写真=共同通信社

 聖光学院の先発は左腕の須藤翔(3年)、三重海星は右腕の柴田蓮人(3年)と左右の違いこそあれ、ともにストレートが最速でも130キロ前半止まりの技巧派という点で共通点がある。さらに2人に共通するのが厳しい内角攻めを持ち味としている点。球は速くなくても胸元に130キロ前後のストレートが飛び込んでくれば強烈な残像となる。

 左腕の須藤はスターティングメンバーに6人の左打者が並ぶ三重海星に対して9回までの27アウト中、ゴロアウトを17個記録した。右打者が6人並ぶ聖光学院に対した右腕の柴田は27アウト中、ゴロアウトが14個だったので、ともに持ち味を発揮したと言っていい。

 須藤の9回までの球数が109、柴田が93、この少なさは今大会を象徴している。なぜなら今大会は球審のストライク・アウトのジャッジがこれまでとはだいぶ異なる。具体的に言うと、球審が積極的に「ストライク」をコールしているのだ。

 たとえば柴田が奪った2三振のすべてが3球三振(スリーバント失敗1つ)、須藤が奪った2三振もすべて3球三振だった。ここ数年、時短を目的としてプロ・アマともストライクを積極的に取っていこうという申し合わせがあることをNPBの関係者から教えられた。その効果が甲子園大会では今年になって現れたようである。

 追い込まれたら厳しいコースを突かれて不利になる、という思いがあるのだろう。追い込まれる前に打っていく打者がこの試合に限らず多かった。須藤の109球、柴田の93球からはそういう背景が見えてくる。

 試合をリードしたのは三重海星だ。4回表には4番・髙谷艦太(3年)の二塁打、5番・坂本芽玖理(3年)のレフト前ヒットで先制し、6回には2番・大串祐貴(3年)がライトスタンドにホームランを放ち、2点差をつけた。対する聖光学院は7回裏に3番・荒牧樹(3年)が1ボールからの外角のストレートを左中間スタンドに放り込み、3対1で迎えた9回裏には再び荒牧が初球の真ん中ストレートをバックスクリーン左に放り込むソロホームランを放ち1点差に追い上げる。

 しかし、柴田のペースは変わらない。1回から球数は12→10→7→10→12→13→5→13→11と一定している。技巧が際立つ須藤でも6回に19球、9回に22球を投げているのだから、柴田の平常心は大いに評価されていい。ちなみに、須藤が大串に打たれた6回のホームランは内角ストレートだった。得点にこそならなかったが、7回に村上流星(3年)に打たれたライト前ヒットも内角ストレートだった。強烈な武器でも内角球は我が身を傷つける可能性のある〝諸刃の剣″なのである。

 最後に打者走者の全力疾走を見ていこう。私が俊足の目安にする「一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達12秒未満」をクリアしたのは海星のほうが多かった。1番・松尾悠一郎(3年)が3回、8番・浦田俊輔(2年)が3回、7番村上が1回あり、合計で3人8回。聖光学院が2人2回だったので走塁では明らかに三重海星が上回ったようである。

[page_break:両チームの個人成績表]

両チームの個人成績表

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(記事=小関 順二

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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