Interview

亜細亜大学 水本弦 選手(大阪桐蔭高出身)

2013.06.09

第153回 亜細亜大学 水本弦 選手(大阪桐蔭高出身)2013年06月13日

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 昨年の甲子園で春夏連覇を達成した大阪桐蔭。当時、主将として2本の優勝旗を受け取った水本弦選手は、今春から亜細亜大学に進学して野球を続けている。早くもレギュラーを獲得し、チームの春季リーグ戦優勝に貢献した水本選手にお話しを伺いました。

大学野球の世界に入って

―――春季リーグ戦を制覇。水本君も開幕からスタメンを張って、活躍していました。大学野球にはなれましたか?

水本弦選手(以下「水本」) 高校野球とは全然違いますね。高校時代に社会人野球を見に行ったことあるんですけど、社会人野球のような感じで、応援してもそうですが、試合の雰囲気が高校とは違うなと感じています。

――入学してすぐ、普通に入っていけてるのはすごいんじゃないですか?

水本 同じストレートでも、高校生のストレートとは切れが違いますし、配球にしても、このカウントでそのボールが来るのかっていうのがあるんですけど、自分のスイングができれば、結果は今のところは出ているかなと思います。

――簡単に対応できたのですか?

水本 最初は前にも飛ばない感じだったんですけど、打っていくなかで、バットの軌道を修正していって、見えてきたものがありました。

――もう少し具体的に教えて下さい。

水本 自分のスイングは、下から持ち上げるようものだったんですけど、それだと芯に当たっても、ファウルになってしまっていた。自分ではとらえているつもりでもファウルになることが多かった。それを少し、斜め下におろすようなイメージを持つと、ボールにスピンがかかり始めて、ボールが飛ぶようになりました。

――癖もあったでしょうが、フォームを変えるのは時間もかかりましたか?

水本 大きく変えるっていうイメージではないんです。徐々に変えて行く感じで、本来のスタイルをベースにして、その中で、気持ち上からという意識ですね。だから、自分の中では大きく変えた感じではないんです。

――高校の時にやって来て良かったことは何でしょうか?

水本 自分は引退した後の過ごし方が良かったのかなと思います。引退した後は、自主練習だったんですけど、毎日、練習に通っていました。グラウンドは山の中にあるんですけど、毎日、走って上がっていました。ただ、現役選手と混じらないで練習をするので、投手の球をみれないというのがあった。大学に来て、久しぶりに見て、ボールが見えないって、なってしまうような気がしたので、澤田(圭佑=立教大)に毎日、室内でバッティングピッチャーをしてもらっていたんです。毎日、実践したのが大きかったように思います。

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[page_break:キャプテンのイメージとは?]

キャプテンのイメージとは?

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――大阪桐蔭で春夏連覇されました。今。振り返ってなぜ、できたと思いますか?

水本 力は自分の一つ上、二つ上に比べると、自分らの代の方がなかったと思うんですけど、練習の雰囲気がすごく良かったので、それが一番なのかなと感じていました。
 練習していて楽しいというか、悪い緊張感ではなくて、試合に繋がる緊張感であったり、メリハリが効くチームだったなと思います。

――そうなったのはなぜですか?

水本 自分の中で決められたメニューをこなしているっていう風に感じていたので、それじゃ上手くならないって感じて、楽しいと自然に声がでたりするので、ふざけると楽しいは違いますけど、楽しんでやるっていうのは自分のなかでありました。

――キャプテンとして、それを伝えたりはしたんですか?

水本 西谷(浩一)先生に、声が出てないなって言われたりしたんですけど、そこで『声が出ていないから声出せよ』って伝え方ではなくて『こんな風に言われているから、これ以上に出ないくらいの声を出して、見返してやろう』っていうと、気合いが入る選手が多かったので、そういう伝え方をしました。

――工夫して部員たちに伝えていたのですね。

水本 そういう伝え方をした方が、『またか』、みたいな感じじゃなくて、『よっしゃ、やったろ』っていう雰囲気になっていきましたね。

――そもそも、水本君は、どうやってキャプテンに選ばれたのですか?

水本 自分たちの学年はひとりひとり、西谷先生と面談をするんですけど、その時に、僕は一番最後だったんですけど、全員がキャプテンは水本って言ってくれたんで、『自分がやります』って言いました。

――その時の気持ちは?嫌だったとりもしたのですか?

水本 そうですね(笑) まじかーって。全然嬉しくないです。でも、そっかみたいなところもあって、最初は、それほど責任を感じていなかった気がします。

――主将の重みなどはなかったですか?

水本 何を変えたかっていったら、何も変えていないですけど、口でも言っても意味ないなって思ったので、一人ひとりの性格を読むというか、強く言うより乗っけた方がいいかなとか、人の感情を読むようにしました。

――水本君の中にあったキャプテン像のイメージを教えてください。

水本 チームをまとめないといけないっていうのは頭にあったんですけど、いや、無理だなって途中で思いました。
 それでミーティングをしました。でも、どっちかというと自分が喋るより、他の部員に喋らしました。お前はどう思って?って感じで。

――春の選抜大会は、4番の田端良基選手が2回戦から出られなくなった中での優勝でしたね?

水本 田端は1回戦が終わって骨折で抜けて、自分たちの中では戦力的に苦しくなると思ったんですけど、田端が申し訳ないような気持ちを持っていたので、それで負けてしまうと、田端が余計に申し訳ないって思う。逆にいない状態で勝てば、大阪桐蔭自体の層の厚さを証明できると、気合が入っていました。

――それまでは、逆転負けが多いイメージでした。

水本 そうなんですけど、何でか分からないんですけど、自信があったんです。選抜では接戦ばかりでしたけど、たまたま接戦になっているくらいの気持ちで試合をしていました。

――チームが変わるきっかけはありましたか?

水本 1回戦が大事やって言ってて、花巻東が相手だったので、負けるとしたらここやなっていう話をしていました。初めての甲子園で、浮足立っていたんですけど、何とか勝って、何よりも藤浪(晋太郎=阪神)が変わった。次の日から、ピッチングがいきなり良くなった。それで行けるなって、変わりました。

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[page_break:夏の大阪大会制覇が一番嬉しかった]

夏の大阪大会制覇が一番嬉しかった

――春優勝した直後、『春夏連覇目指します』って言ってましたけど、その後はどうでしたか?

水本 選抜で一番最後まで戦って、すぐに(春季)大阪大会が始まったんですけど、僕たちも選抜直後ですぐにモチベーションが上がらなくて、内容のない試合をしてしまいました。でも、大阪を優勝して、近畿も優勝したんですけど、自分の中では流れで勝てるなって感じがあった。ところが、6月に明徳義塾に招待試合に行って負けたんです。それでこのままだったら、ダメだって気付きました。普通にやったら勝てるって感じになっていたので、その夜にミーティングをしました。
 自分たちは普通にやったら勝てないチーム。選抜では勝てたけど、夏の大会はどこも良い状態で作り上げてくるので、自分たちは劣る。どこのチームも成長してるから、自分たちも成長したら、甲子園で優勝できるんじゃないかって話をしました。次の日からみんな、雰囲気が変わりましたよ。

――練習ではどんな変化がありましたか?

水本 特に話しはしてないですけど、選抜が終わってから、フリーバッティングの時にみんながホームランを狙っているような、ただ打っているだけだったところがありました。ところが、あの練習試合以来、白水(健太=同志社大)がエンドランを入れてみたり、ケースバッティングをし始めて、自然と練習の雰囲気が変わりました。

――夏の大阪大会に入る時は、いけるという雰囲気だったのですか?

水本 正直、大阪大会を勝ち抜くのはきついなって言う話はしていました。藤浪だけじゃなくて、澤田、平尾(奎太=同志社大)が投げてくれたから勝ち抜けたと思います。藤浪を温存できましたから。

――前年夏は土壇場でひっくり返されて甲子園に行けなかった。夏の怖さは感じていました?

水本 決勝(履正社)まで競ることがなくて、上手いこと行きすぎていた中で追い上げられて…
 展開としては全く同じでまずいなとは思いました。

――そういう展開でも勝てた要因は何でしょうか?

水本 僕は(前年と)両方の試合に出ていましたけど、自分たちの代の時は、追い上げられても、『あと2点あるわ』みたいな余裕がベンチの中にあったような気がします。逆転されなかったのが前のチームとの違いかなと思います。

――地方大会と本大会は違うと思います。その辺りの難しさはなかったのでしょうか?

水本 自分たちの中では、大阪大会が終わってからは負ける気がしなかったですね。甲子園に入ると、ただノビノビやるだけ。自由に試合をしていたって感じです。
 ただ、負けるというイメージしていたわけではなく、勝つイメージしかしてなかったです。
 

――決勝では春に続いて、光星学院との対戦になりました。

水本 田村(龍弘=千葉ロッテ)君と北條(史也=阪神)君の調子が良くて、どうかなと思ったんですけど、藤浪と森(友哉=現 主将)が行けるって言っていたので、勝てる自信はありました。

――優勝した瞬間はどんな気持ちでした?

水本 嬉しさよりも、あまり実感が湧いていなくて…

――では、一番うれしかった時というのは?

水本 やっぱり大阪大会の優勝ですね。自分たちの中では一つ上の学年が甲子園の手前で負けていて、その悔しさを晴らそうって新チームの時から言っていました。選抜で優勝はしていたけど、自分の中では夏の大阪大会の決勝で負けているので、夏の借りは夏で返すっていうのがあったので、満足することなく、大阪大会に対する意気込みはありました。決勝はこの試合で出し切る。とにかく、出し切ろう、そんな感じでした。

――藤浪投手とのエピソードを教えてください。

水本 あいつのマイペースさには驚きますね。
 朝、寮で食事を取る時に、時間が決められているんですよ、その時間内に行かないといけない。だいたい、時間になると放送を鳴らす。それで起きて行くんですけど、たまに寝ていて放送が聞こえなくて、食堂に遅れそうになるのがあっていつも誰かがギリギリに起こしに行って『やばい』って走るですけど、藤浪だけはどんな状況でも、何があっても慌てなかったです。慌ただしいっていうのがなかった。『何とかなるやろ』ってよう言ってました。

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[page_break:夏へ向けて!春夏連覇主将からのメッセージ]

夏へ向けて!春夏連覇主将からのメッセージ

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――夏へ向けてこれからの1ヵ月が大事だってよく言われますが、どう大事だと思われますか?

水本 一番大事なのは暑さに慣れることかなと思います。
 大阪桐蔭では、夏前に追い込み練習があって、真夏の中でグラウンドコートを来て長袖で練習をしているんですけど、そのおかげで夏の大会は暑いっていう感じが一度もなくて、熱中症も考えられなかった。練習をやっているときは、なんでこんな着てやらなアカンねんって言っていましたけど、夏の大会が終わってみたら、あの練習があったからだと思います。他のチームが足をつったとか、脱水症状とかしていましたけど、自分らには考えられなかったですね。

――6月はレギュラー争いもありながらだけど、争いと和を作ることという意味で、難しさはありましたか?

水本 特別に困ったことはないですけど、ベンチに外れた選手も、自分は争いに負けたんだって言うのを認めているので、自分たちからバッティングピッチャーに出てきてくれたりとか、逆に、メンバーのノックの時に、横でメンバー外が盛り上げてくれたりとかいうのは、ありがたかったですよ。

――キャプテンとして学んだことは何でしょうか?

水本 やっぱり、人にモノを伝える方法はいろいろ考えました。その中で人の感情、何を考えているのかを探ることは大切だなって学びました。

――神経を使うこともありましたか?

水本 特にそういうのはなかったです、ただ、例えば、安井(洸貴=関西大)などには、あんまり強くは言わなかったです。(彼は気持ちを)乗っけたら、すごく返ってくるやつなので、とりあえず、乗っけてあげることはしました。逆に、強く言ったほうがいい選手もいました。藤浪にも結構、強く言ってました。彼は何を言っても動じないので(笑)。

――全国のキャプテンにアドバイスをお願いします。

水本 悩みすぎないことですね。僕は簡単なことを難しく考えて、難しいことを簡単に考えろって、西谷先生にはずっと言われていました。
 考えすぎては逆にダメじゃないかなと思います。

――夏の大会で一番大事なことは何でしょう?

水本 攻めることですね。初回から攻めるというか何に対しても攻めた方がいいかなと思います。守るにしても、走るにしても。2年の時にそれを感じて、3年生の時に実行しました。2年の夏は引くことがあったんで…

――1年たった今、春夏連覇を振り返ることはありますか?

水本 全くないですね。
 ただ、野球観が大きく変わったのはあると思います。全国から良い選手が集まってきて、良い投手と対戦したりというのがあって、良い投手とたくさん対戦してきたので、大学野球に入ってギャップが人よりは少ないのかなと思ったりしますね。それが一番大きかったです。

水本選手、貴重な話をありがとうございました。
6月11日開幕の全日本大学野球選手権でも、1年生ながらスタメン出場し、初戦の近大工学部戦では、2点タイムリーの活躍をみせました。今後の水本選手のプレーからも目が離せません。応援しております!

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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