丹生高等学校 田中優貴選手
第72回 福井県立丹生高等学校 田中優貴選手2011年07月21日
福井のNo.1左腕・田中優貴が、最後の夏に挑む。
最速145キロの直球に、カーブ、スライダーと緩急つけたピッチングで打者を翻弄。練習試合には、これまで多くのスカウトが詰めかけた。
丹生郡越前町にある朝日中学野球部出身の田中は、中学時代は投手と外野手を兼任。投手としての魅力を買われて、強豪校からも誘いはあったが、中学3年生の春に県大会で準優勝した地元の丹生に進学。高校1年生秋からエース番号を背負った。
そして、昨年の夏は、福井大会2回戦で敦賀気比と対戦すると、9回を投げ抜き1失点の好投。強打線相手に11三振奪うも、試合は0対1で敗れた。それでも、こ一戦から田中の名前は一気に広まっていく。
「まさか、あそこまでのピッチングができるとは思ってなかったんで、活躍してしまったといったらおかしいですけど、自分でもビックリしました」。
マウンド上の強気な表情とは違って、意外にもグラウンドから離れた田中の雰囲気は穏やかだった。
そんな田中に、最後の夏にかける意気込みを聞いた。
常に理想のフォームをイメージ
“強気に内角を突く直球が武器”
――この夏の福井大会で1番の注目選手として注目を浴びる田中投手ですが、普段のピッチングで工夫していることはありますか?
田中選手(以下「田」) 僕の持ち味は真っ直ぐだと思っているのですが、体の開きが早いと腕が振れなくなって、いい球がいかなくなる時がある。そういう時は、体の開きを意識しながら、試合後や練習後にシャドーピッチングをしながら仲間にフォームの映像を撮ってもらってチェックしたりします。
また、僕は調子が悪い時は右バッターに対してのクロスファイヤーがいかなくなる。そんな時、ブルペンだったら右バッターに立ってもらって、当てるくらいの気持ちで投げたりして修正していきます。
フォームは力んだらダメというのは分かってるんですけど、試合だとガーっと気持ちが入って、力んでしまうので、その中でも力まず投げたい。それが自分の中での理想のフォームですね。
――フォームを参考にしている投手はいますか?
「田」 参考にしているのは、中日のチェン投手と福岡ソフトバンクの杉内
投手。身長も杉内投手と僕は同じくらいで、そんな高いほうではないので意識してフォームは参考にしていました。
そうやって常に自分で『いいな』と思う投げ方の人を見て真似たり、自分のイメージを作って、こう投げたらもっといいんじゃなかと考えていくうちに今のフォームになりました。
最後の夏も強気に攻める
“周りの人への感謝の思いを胸に”
――春は県大会で4強入り。大会後は新たな課題は見つかりましたか?
「田」 最近、速い球を投げようとして、上体がつっこんでしまって、フォームに粘りがなくなってしまった。それで、その粘りや突っ込みをなくすために、なるべく左足で立ってからは、頭を残すイメージで投げるようにしています。
頭を残すというのは、上体をそのまま後ろに残してタメをつくる。そこから、後ろから“バン”という感じで、体重を一気に前に移動させて投げています。
どうしても速い球を投げようとすると、突っ込んでしまって腕が振れなくなってしまうので、“後ろ後ろ”のイメージで、とにかく後ろからのイメージで投げています。
――今ではかなり修正されて、ここ最近の練習試合をみても順調に仕上げてきていますね。
「田」 そうですね。ただ今は、打たれて点を取られたあとにどう立ち直るのか。
上手くいかない時でも、調子が悪くても、どう抑えていけばいいのかがまだ自分の中では足りないと感じています。
それでも、以前は守りでエラーとかがあると、ちょっとリズムが崩れたり、ボールカウントを悪くしたりしてしまったんですけど、最近ではとにかく『ミスしようが何しようが、仲間を信じて、やってきたことを出し切ろう』という気持ちでマウンドに立っていますね。
――力のある真っ直ぐが魅力の田中投手ですが、今日の練習試合では、初球は大きく縦に割れるカーブから入っていきましたね。
「田」 今日の相手はバンバン振ってくるイメージを持ってたんで、パワーもあるし、初球はカーブでいこうかなと。
カーブはたまに抜けたりしますが、相手が詰まる時はいい球を投げられているなと感じますね。
今は145キロの真っ直ぐに、カーブ、スライダーと緩急をつけて投げ分けていますが、やっぱり自信のある球は真っ直ぐ。インコースの真っ直ぐを、この夏も自信を持って投げていきたいです。
――最後に、今大会へ懸ける思いを教えてください。
「田」 今までお世話になった方々への感謝の気持ちを持って、結果はどうあれ、自分のピッチングをしていきたいです。
とくに、強気にバッターに立ち向かっていくところを見て欲しいですね。僕は気持ちで相手に向かっていくピッチャーだと思ってるので、とにかくバッターに対しては気持ちでは、『絶対負けない』という思いでキャッチャーに向かって投げています!
丹生は7月17日に迎えた丹南との初戦を8対1の7回コールドで勝利。完投した田中は、散発9安打1失点の好投でまずは1勝をあげた。
最後の夏のマウンドで、田中優貴らしさを存分に魅せていきたい。
(文・インタビュー:編集部)