144キロ左腕・野崎慎裕(県立岐阜商) 目指すは世代NO.1左腕の称号
名将・鍛治舎巧監督が母校の県立岐阜商に2018年より復帰すると、確実に力をつけていき、昨秋は2年連続で秋季東海大会の準優勝を飾る。今春の選抜の出場を決めており、2021年も見逃せないチームとなっている。
そんな県立岐阜商のエースとして牽引するのがサウスポー・野崎 慎裕だ。身長172センチ体重72キロと少し小柄ではあるが、最速144キロを計測する真っすぐを軸に相手打者を圧倒する。1年生の春から公式戦デビューを果たしている逸材である野崎は、どんな野球人生を歩んできたのか。
後編では1年生の夏以降の歩みを中心に振り返っていきたい。
前編はこちらから!
県立岐阜商の小さきエース・野崎慎裕が144キロ左腕になるまで【前編】
エースとして多くの経験と学びを得る
1年生の春から公式戦デビューを果たした野崎は、続く夏の大会でもベンチ入り。完封勝利を記録するなど着実にステップアップをしていくも、甲子園には届かず。新体制で秋季大会に向かっていくと、野崎はエースナンバーを背負うこととなる。
「今までにはないくらい強い自覚と責任感をもってプレーをしました。もちろん『自分なんかが』と思ってプレッシャーもありましたが、その中でも結果を残すことが出来たのは良い経験でしたし良かったです」
チームは県大会優勝。続く東海大会でも準優勝という結果。野崎は東海大会では3試合すべてで先発して勝利に導くなど、エースとしての責務を全うして選抜への道を切り開いた。
そうしたなかで、コロナ禍によって練習自粛だけではなく春季大会は中止。夏の大会は開催されたものの、県立岐阜商は学校に感染者が出たために出場を辞退。8月に開催された甲子園交流試合が唯一の公式戦となった。
この大会で野崎は背番号10をつけながらも先発のマウンドへ。九州王者・明豊と対峙するが、相手に先取点を与えるなど2回持たずして降板。悔しい甲子園初マウンドとなった。
「反省ばかりです。初球が甘くなってしまったり、相手打者の反応を見る余裕がなく、試合にしっかりと入り切れていなかったと思います」
相手の先発が同じサウスポー・若杉晟汰だったことも野崎にとっては大きかった。
「若杉さんはピンチの場面でも動じるどころか逆にスイッチが入っているように見えました。そういったメンタルや経験値というところで大きな差を感じました」
大舞台でも堂々と投げ込む。そして1球の大事さを再確認して野崎は秋季大会に向けて再び練習を重ねた。
目指すは世代No.1左腕
迎えた秋季大会。野崎は再びエースナンバーを背負ってチームを牽引。県大会では準決勝・中京、そして決勝戦・大垣商戦で緊迫の展開となりながらも優勝。東海大会へ進出すると、ここでも活躍を見せる。
初戦の東邦戦で完封勝利を挙げると、続く準決勝・岐阜第一戦でも8奪三振の完封勝利。エースとして2年連続での甲子園出場を大きくたぐり寄せる結果を残した。
しかし野崎の中では「ピンチや大事な場面で1球の甘さが出てしました」反省の方が多い結果。実際に決勝の中京大中京戦ではリリーフ登板だったものの3回途中で被安打7自責点4という数字が残った。
この悔しさを胸に現在はトレーニングに打ち込む野崎。実はこのトレーニングもピッチングフォームに直結していると語っている。
「スクワットやランジをすると下半身で体重を感じることが出来るので、下半身を重点的にやってピッチングに活かしています」
元々、ピッチングのなかでは開きを抑えるためにも股関節を中心とした、重心移動の時の下半身の使い方をポイントに置いていた野崎。だからこそ下半身の粘り強さは必要不可欠で、上半身以上にこだわってトレーニングを積み重ねているとのことだが、ウエイトで刺激を与えることがパフォーマンスを支えていたのだ。
いよいよ最後の1年を迎える野崎。最後に改めて意気込みを語ってもらった。
「どんなピンチの場面でも、大事な試合でも自分の投球でチームを勝たせられる投手になって、世代No.1左腕になれればと思っています」
同世代には西村 王雅(智辯学園)や木村 大成(北海)などのサウスポーがいるが、彼らに負けない投球をすれば、チームの全国制覇も近づいていく。小さな大エース・野崎のピッチングに注目していきたい。
(記事=編集部)