球界屈指の「ユーティリティ型スラッガー」外崎修汰を誕生させた、攻守における意識の持ち方
パ・リーグ3連覇の期待がかかる埼玉西武ライオンズ。2年連続ホームラン王に輝いた山川穂高をはじめとした強力打線で、パ・リーグトップのチーム打率.265、718打点をマークした。
その打線の一角を担い、ユーティリティープレーヤーとして侍ジャパンにも選出されているのが外崎修汰(弘前実出身)だ。富士大学から西武に入団し、2019年シーズンは全試合に出場。自身最多となる26本塁打はパ・リーグの本塁打ランキングでは10位に入る成績と、プロ6年目の今シーズンはさらなる活躍が期待される。
NPBで1シーズン25本塁打以上は、まさにスラッガーと形容するに相応しい数字である。外崎自身、アマチュア時代、プロ入り後を振り返った時、そういう選手になる予感は全くなかったという。
ではいかにして、球界屈指の「ユーティリティ型スラッガー」へ成長を遂げたのか。
プロ入り後に挑戦した外野手でも順応が出来たワケ
インタビューに答える外崎修汰選手
――弘前実業は過去に5回甲子園に出場経験のある古豪ですが、弘前実業での3年間を振り返っていただけますでしょうか
外崎修汰選手(以下、外崎選手):やはりこの3年間は甲子園を目指していましたが、弘前実業は県立校で、地元の学校が甲子園に行ければ街は盛り上がるので、地元のためにも甲子園に行きたいと思いながら練習をしていました。
――1年生の春から公式戦に出場され、3年生の時は主将としてチームを牽引。甲子園には届きませんでしたが、県大会でもベスト8まで勝ち進まれました。実際に外崎選手がプロを強く意識し始めたのはいつ頃になりますか
外崎選手:高校生の時はまだプロのことを考えていませんでした。ですが、富士大時代の1つ上の先輩に山川(穂高)さんがいましたので、プロのスカウトの方が沢山見に来られていました。それを見て「こういった人がプロになるんだ」と初めて感じましたし、そこから「頑張ってプロ野球選手になりたい」と意識をするようになりました。
――富士大学では、1年生の春からリーグ戦に出場されて、大学選手権、神宮大会に2度ずつ出場。ベストナインなど数々の賞を受賞され、2014年のドラフトで3位指名を受けました。プロに入られてから壁はありましたか
外崎選手:実はアマチュア時代、感覚に頼ってプレーをすることが多かったんです。ですので、プロの世界に入ると、感覚を大切にしてきた分、プレーのレベルや質の違いにより感じました。
――アマチュア時代は内野手がメインでしたが、プロになられてから外野手に初めて挑戦しました。最初は苦労されましたか
外崎選手:ゴロに関しては内野をやってきたので通用する部分もありましたが、プロになるまでは外野の経験もなかったので、基本的な部分で苦戦することがありました。フライに関しては右打者、左打者によっても打球が変わりますので、スタートをどっちに切ればいいのか。かなり練習をして覚えました。
――やはり最初は苦戦されたんですね
外崎選手:思っていた以上にできたと感じていますが、経験が不足している分、あと一歩のところで追いつけないことが多かったです。「これくらいなら追いつける」という自分なりの基準がなかったので、その時に「別の選手なら捕れたんじゃないのか」と責めることもありました。
ただコーチからアドバイスをもらいながら自分なりの基準を見つけられたので、追いつけなかった原因を冷静に振り返ることができるようになりました。
外崎流・右方向へのバッティングの極意
練習中の外崎修汰選手
――ここからはバッティングについて聞きたいのですが、2019年シーズンは26本塁打とパ・リーグのトップ10に入りました。外崎選手の中で、ホームランを打つためのコツはありますでしょうか
外崎選手:まずは芯に当てることですね。やっぱり芯に当てないといくらパワーがあっても打球は飛びません。逆に態勢を崩しても芯に当てることができれば、ホームランを打つことも出来ますので。
――では、試合中に最も意識されていることを教えてください
外崎選手:僕は一番速いボールに対してタイミングを合わせるように意識しています。そうすれば、変化球が来たとしても何とか合わせることができます。逆に調子が悪いと真っすぐでも変化球でもないようなタイミングで入ってしまいますので、どっちにも対応ができずに芯を外してしまう。その結果、中途半端にバットに当たって凡退になってしまいます。
――なるほど。他にもご自身の中での課題について教えて下さい。
外崎選手:僕の場合は左足の着き方です。良いバッターであれば、真っすぐピタッと踏み込んでいるんですが、僕は詰まることを嫌って開いてしまう悪い癖があるんです。けどそうなると体は開きますし、外のボールに対しても届かないので、いかに真っすぐ踏み込めるかを常に意識してバッティングはしています。
――そういった癖を修正するためにも、一番大事にされている練習はありますか
外崎選手:基礎を固めるために前から来るボールを捉えることだと思います。高校生であれば、まだスイングは完成していないと思いますので、人によって何のためにバッティング練習をするのか違うと思います。ただ、力強く安定したスイングというのを目指さないといけないと思いますので、ティーバッティングで振れるようにすることが第一だと思います。
外崎修汰選手
――プロ1年目は打率.186、2年目は打率.176と苦戦を強いられたように見えます。その中でも特に苦労されたことはありますか
外崎選手:右方向へのバッティングでしたね。「右方向に打とう」と思っても引っ掛けてしまい、レフトやセンター方向に飛んでしまうことが多かったです。けど、チームの勝利を考えると、点数はたくさん取っておいた方が勝率は上がりますよね。そうすると、考え方の1つとして右方向へのバッティングは持っていないといけないです。
――右方向へのバッティングの重要性に気づかれたのは、いつごろになられました
外崎選手:2年目くらいだと思います。例えば、チームの中だと山川さんや中村(剛也)さんがホームランバッターです。また1、2番に座るような選手は出塁とプロだと役割がハッキリしています。その中で僕は7、8番での出場でしたので、自分が犠牲になって次の打者へ少しでも良い状況で繋ぐ。繋ぎ役だったので、そうした意識を持つようになりました。
そのおかげで前はチャンスで右方向に打って凡退したら、「打てなかった。悔しい」ということまでしか感じませんでしたが、「チームのために動けた。凡打でもOKだ」と考えられるようになりました。
――外野の守備と同様に、バッティングでも外崎選手なりの基準が出来たということですね
外崎選手:そうですね。あと、右方向に打てるようになると、ボールを長く見ることができるので、ボール球を振ることも減っていきます。押し込むことも出来るので、強い打球を飛ばすことも出来ると思います。
――では実際に、外崎選手は右方向へ打つために意識されていることはありますか
外崎選手:僕は手首を柔らかく使って、どのコースでもポイントを前においてボールを捉えれば、右方向に強い打球が飛ばせると思います。
打つポイントを手元にしてしまうと、ボールとの距離を作るために身体を傾けるので、ヘッドが下がってファールになりやすくなります。しかし、前に置くことでヘッドを走らせる距離を作ることができるので、強い打球が飛ばせると思います。
――ありがとうございます。では、最後に2020年シーズンの意気込みをお願いします
外崎選手:まずは3連覇が一番の目標。そこから日本シリーズに出られるように、そして日本一になって喜び合えたらと思います。
今年も活躍期待しています!ありがとうございました!
(取材=田中 裕毅)
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