Interview

木製バットで本塁打連発!高校通算48本塁打のスラッガー・杉崎成(東海大菅生)の進化の軌跡

2020.03.26

 今年の高校生スラッガーでトップレベルの実力を持ったのが杉崎成東海大菅生)だ。2年秋までかさねた本塁打は48本。高校通算53本塁打の西川に迫る数字である。そんな杉崎の決意に迫った。

大学生のクリーンナップに負けない打撃を見せる高校2年生

木製バットで本塁打連発!高校通算48本塁打のスラッガー・杉崎成(東海大菅生)の進化の軌跡 | 高校野球ドットコム
杉崎成(東海大菅生)

 衝撃的だった。
 2月下旬の東海大菅生の打撃練習。選手たちを見ると、木製バットを使って練習をしている。東海大菅生は次のステージに備えて、木製バットで練習をするが、そう簡単に飛ばせるわけではない。

 だが、杉崎は違った。マシンから放たれる変化球、ストレートを次々とミートして、鋭い金属音を響かせてライナー性の打球を外野奥深くへ飛ばしていく。角度がつけばスタンドインしてしまう。そして外角球をおっつけて、ライト方向へスタンドインさせた打撃は驚きだった。

 まさにモノの違いを感じさせる打撃だが、チームメイトに訊いても、打撃練習では連日、木製バットで、さく越えを記録しているという。

 東海大菅生取材の後、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、高校野球部の取材ができず、大学野球の取材に行く機会は多かった。改めて杉崎の打撃を振り返ると、スイングスピード、打球速度、飛距離は大学生のクリーンナップに負けていないものがあった。打撃練習の内容、高校通算本塁打の多さを見れば、高校トップクラスのスラッガーと評してもおかしくない。

 そんな杉崎の2年を振り返ると、満足いくものではなかった。昨春の都大会準々決勝・日大三戦で二打席連続弾。7打点の活躍を見せた。この試合を機に大きく注目を集めた杉崎だが、「できすぎな結果で、なぜ打てたかわからないんです。それが分かるまでに理解できれば、もっと打てると思うんです。去年は公式戦で全然打てなかったです」

 甲子園を狙った2年夏では思うような活躍はできず、自分たちの代となった2年秋の都大会は11打数2安打2打点に終わり、悔しい結果に終わった。
「本当に悔しかったですし、自分の実力がないことに気づきました」
 そして冬場ではもう一度、打撃フォームを見直すために、木製バットで練習をするが、最初から金属バットのように飛ばせるわけではない。試行錯誤をしながら、微調整をする日々が続いた。

[page_break:木製バットでも本塁打を打てるようになった理想的な打撃ポイント]

木製バットでも本塁打を打てるようになった理想的な打撃ポイント

木製バットで本塁打連発!高校通算48本塁打のスラッガー・杉崎成(東海大菅生)の進化の軌跡 | 高校野球ドットコム
打撃練習中の杉崎成(東海大菅生)

 そして2月、ようやく理想の打撃のポイントが見つかる。

「打つポイントはあまり変わっていません。ただバットと体の位置を近づけて、腕に力の入る位置でインパクトをさせることを心掛けました。とても良い感覚で捉えることができています」
 この打撃ポイントをつかむことができたのは、スイングスピードを測る機会があり、そこで自分の打撃ポイントを可視化できて、修正できる機会があったことだ。

「良いポイントのスイングではないと速いスイングスピードが出ないので、そこを求めていった結果、つかむことができました」

 このように自分から試しながら修正して、進化できる杉崎のクレバーさがうかがえる。その姿勢について、元プロの若林弘泰監督も高く評価している。
「彼は現状に満足せずやっているので、全く心配はしていません。ヘッドスピードはかなり速くなってきましたね」

 また過去の教え子の中でもかなり高い評価をしている。

「私が過去に教えてきた選手の中でも3本の指に入る選手だと思います。打撃練習では勝俣翔貴(オリックス)、片山昂星(青山学院大)に匹敵するものはあります。彼らは木製バットでも遠くへ飛ばしていました。ただ勝俣は柔らかさと土壇場でも力を発揮できる勝負強さがあり片山については勝俣以上の飛距離がありました。

 杉崎は良いものを持っていますが、まだ大事なところで結果を残せているのかというと疑問視がつくところがあるので、公式戦で結果を残せるメンタルが欲しいと思っています」

 公式戦で結果を残せていない。それは杉崎も「一番の課題」だととらえている。
「公式戦になると飛ばそうという気持ちが無意識に出てしまい、体が開き、結果を残せない試合が続きました。打撃練習では右中間に長打性の打球を打てた時は自分にとっても良い感覚だったので、それを継続していきたいです」

そして今年の公式戦に向けてこう意気込んでいた。
「練習試合を合わせた通算本塁打ではなく、公式戦で本塁打を打てる選手になりたいです。一大会は3本塁打が目標です」

 春の都大会は中止になってしまったが、夏の大会の開催が実現すれば、今までの練習の成果を発揮していきたい。その時、多くの高校野球ファンを驚かせる打撃を見せてくれるはずだ。
 

(記事=河嶋宗一

関連記事
ポテンシャル抜群の大型外野手・山地裕輔が天理の4番で座り続ける理由
来田、細川、小深田のスラッガートリオなどタレント揃い!甲子園で要注目な西日本逸材野手29名リスト
選抜があれば要注目だった!中森、小林、岩崎ら西日本好投手リスト23名!

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.04

【春季愛知県大会】注目の師弟対決の決勝、享栄が中京大中京を下して8年ぶり8回目の優勝

2024.05.04

1500人近くの中学生が肩肘検診を一斉に受ける!ポニーのお祭り行事・ポニーフェスタは今年も大盛況!

2024.05.04

【新潟】東京学館新潟、糸魚川がコールド勝ちでベスト16入り<春季県大会>

2024.05.04

【石川】日本航空石川、星稜、小松大谷、金沢学院大附が4強入り<春季県大会>

2024.05.04

【大阪】大阪桐蔭、大体大浪商などがベスト16で夏シード獲得、履正社は2年連続ノーシード<春季大会>

2024.04.29

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.29

【福井】福井工大福井、丹生、坂井、美方が8強入り<春季県大会>

2024.04.29

【春季埼玉県大会】今年の西武台はバランス型!投手陣の完封リレーで初戦突破!

2024.04.29

東海大相模の149キロ右腕・福田拓翔が6回10奪三振の快投!「甲子園で150キロを投げたい」とセンバツV・健大高崎の石垣をライバルに!

2024.04.29

【石川】金沢、遊学館がコールド勝ちでベスト16入り<春季県大会>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.21

【兵庫】須磨翔風がコールドで8強入り<春季県大会>

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>