上間永遠(徳島インディゴソックスー埼玉西武)のNPB入りのきっかけは巨人三軍戦
2019年、ドラフト7位指名を受けた上間永遠。柳ヶ浦高校時代は県内屈指の大型右腕として決勝進出。そして徳島インディゴソックスでは高卒1年目ながら最優秀防御率を獲得。
球団では伊藤翔(横芝敬愛–埼玉西武)以来となる高卒1年目からNPB入りを果たした。19歳という若さがあるとはいえ、最速は148キロ。数多いドラフト指名された投手の中でも突出した球速ではない。しかし話を聞いていくと、上間が高卒1年目で指名を受けた理由が見えてきた。
徳島の環境は理想的だった
上間永遠(徳島インディゴソックスー埼玉西武)
高校卒業後、NPBで最も行ける確率が高い独立のチームということで徳島インディゴソックスを志望し、入団が決まった上間。「最短1年でNPBに行く」ことを目標に掲げ、日々のトレーニングに励んだ。
上昇志向強い上間にとって徳島インディゴソックスの環境は理想的だった。
「徳島では、インディゴコンディションハウスというジムと接骨院がある施設があって、チームのみんなと通っているのですが、一緒にあるというのは本当に良かったですし、投手にとって理想的な環境でした」
その中で、上間はNPBにいくための体力、技術を磨いていく。徳島には150キロを超える投手、さらには左右問わず実績十分な投手などが多くいた。高卒新人ならば気後れしそうだが、上間には関係がなかった。
「確かに僕より凄い実績を持った投手は多くいましたし、投手に限らず、野手の中でも社会人野球でバリバリやってきた選手もいました。でもそういうのは特に気にならず、自分は自分のパフォーマンスを出すことに集中できるタイプでした。NPBを狙っていましたが、スカウトが来ていることもあまり気にせずやっていました」
試合前の準備をそのまま発揮できるタイプだった。
「調子が悪いと難しいですが、それなりの調子ならば、ストレート、変化球の内容を見て、ピッチングの軸を決めていました。それはチームが勝利するためにやっていて、自分はこういうタイプだから、こうアピールしようという気持ちは全くなかったですね」
上間とは対照的に、プロ選手として自分のスタイルを主張する選手は悪いことではない。ただ上間のマインドは、勝つために自分がやれる最善の仕事は何か。それが19歳ながら考えられる投手だったのだ。そういう冷静さがあったからこそ安定して力を発揮できるのであり、3月30日の開幕戦で開幕投手を任されたのもうなづける。
その後、入団後から順調にレベルアップしてきた140キロ台の速球と高校時代にマスターしたシンカーを武器に、好投を続ける。ドラフト指名される選手は指名に至るターニングポイントとなった試合がある。それが8月1日の巨人三軍戦だった。
[page_break:8球団のスカウトの前で快投!]8球団のスカウトの前で快投!
上間永遠(徳島インディゴソックスー埼玉西武)
NPBとの交流戦ということで、アグリあなん球場では8球団のスカウトが集結。独立リーガーにとって気合が入る試合だ。それでも上間は自然体だった。
「NPB相手に投げられるのは、自然と気合が入りました。ただスカウトがいるから気合が入ることはなかったですね」
上間はこの試合で自己最速の148キロのストレートを武器に6回10奪三振、被安打4、無失点の快投。スタメン9人中、8人から三振を奪い、スカウト陣のアピールに成功した。
「あとで分かったのですが、スカウト部長や潮崎さんもいらしていたのようで、そういうのがきっかけになったのかなと思いました」
NPB相手に快投したピッチングや19歳らしからぬ完成度の高さ、将来性の高さを評価され、10月17日、埼玉西武ライオンズから7位指名を受け、目標通り最短1年でNPBの扉を切り開いたのである。
キャンプインまで体力面の強化を挙げてトレーニングに励んできた。昨年、初めて1シーズン投げてみて、独立リーグではあるが、プロ野球選手として投げる大変さを実感した。
「高校時代と比べると、身長、体重はそれほど変わっていないのですが、球速が上がったことで、その分、出力も大きくなるので、体への負担も大きくなり、終盤のけがにつながっていたと思います。
指名されてからは技術よりもまず体力と思って取り組んでトレーニングしてきました。技術については、キャンプインしてからでも、コーチや先輩の方々に技術的な話を聞いていったほうが良いと思ったので、ケガをしない体づくりに励んできました」
また埼玉西武でも「相手を気にせず、自分のことに取り組む」スタイルは継続する。徳島インディゴソックスの関係者が評価してきたどんな場面でも動じないメンタルと昨シーズン末から取り組んできた体力的な部分がかみあってくれば、一軍の活躍も夢ではない。
(取材=河嶋 宗一)
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