Interview

上間永遠(徳島インディゴソックスー埼玉西武)のNPB入りのきっかけは巨人三軍戦

2020.02.05

 2019年、ドラフト7位指名を受けた上間永遠。柳ヶ浦高校時代は県内屈指の大型右腕として決勝進出。そして徳島インディゴソックスでは高卒1年目ながら最優秀防御率を獲得。

 球団では伊藤翔横芝敬愛–埼玉西武)以来となる高卒1年目からNPB入りを果たした。19歳という若さがあるとはいえ、最速は148キロ。数多いドラフト指名された投手の中でも突出した球速ではない。しかし話を聞いていくと、上間が高卒1年目で指名を受けた理由が見えてきた。

徳島の環境は理想的だった

上間永遠(徳島インディゴソックスー埼玉西武)のNPB入りのきっかけは巨人三軍戦 | 高校野球ドットコム
上間永遠(徳島インディゴソックスー埼玉西武)

 高校卒業後、NPBで最も行ける確率が高い独立のチームということで徳島インディゴソックスを志望し、入団が決まった上間。「最短1年でNPBに行く」ことを目標に掲げ、日々のトレーニングに励んだ。

 上昇志向強い上間にとって徳島インディゴソックスの環境は理想的だった。
「徳島では、インディゴコンディションハウスというジムと接骨院がある施設があって、チームのみんなと通っているのですが、一緒にあるというのは本当に良かったですし、投手にとって理想的な環境でした」

 その中で、上間はNPBにいくための体力、技術を磨いていく。徳島には150キロを超える投手、さらには左右問わず実績十分な投手などが多くいた。高卒新人ならば気後れしそうだが、上間には関係がなかった。

「確かに僕より凄い実績を持った投手は多くいましたし、投手に限らず、野手の中でも社会人野球でバリバリやってきた選手もいました。でもそういうのは特に気にならず、自分は自分のパフォーマンスを出すことに集中できるタイプでした。NPBを狙っていましたが、スカウトが来ていることもあまり気にせずやっていました」

 試合前の準備をそのまま発揮できるタイプだった。
「調子が悪いと難しいですが、それなりの調子ならば、ストレート、変化球の内容を見て、ピッチングの軸を決めていました。それはチームが勝利するためにやっていて、自分はこういうタイプだから、こうアピールしようという気持ちは全くなかったですね」

 上間とは対照的に、プロ選手として自分のスタイルを主張する選手は悪いことではない。ただ上間のマインドは、勝つために自分がやれる最善の仕事は何か。それが19歳ながら考えられる投手だったのだ。そういう冷静さがあったからこそ安定して力を発揮できるのであり、3月30日の開幕戦で開幕投手を任されたのもうなづける。

 その後、入団後から順調にレベルアップしてきた140キロ台の速球と高校時代にマスターしたシンカーを武器に、好投を続ける。ドラフト指名される選手は指名に至るターニングポイントとなった試合がある。それが8月1日の巨人三軍戦だった。

[page_break:8球団のスカウトの前で快投!]

8球団のスカウトの前で快投!

上間永遠(徳島インディゴソックスー埼玉西武)のNPB入りのきっかけは巨人三軍戦 | 高校野球ドットコム
上間永遠(徳島インディゴソックスー埼玉西武)

 NPBとの交流戦ということで、アグリあなん球場では8球団のスカウトが集結。独立リーガーにとって気合が入る試合だ。それでも上間は自然体だった。
「NPB相手に投げられるのは、自然と気合が入りました。ただスカウトがいるから気合が入ることはなかったですね」

 上間はこの試合で自己最速の148キロのストレートを武器に6回10奪三振、被安打4、無失点の快投。スタメン9人中、8人から三振を奪い、スカウト陣のアピールに成功した。
「あとで分かったのですが、スカウト部長や潮崎さんもいらしていたのようで、そういうのがきっかけになったのかなと思いました」

 NPB相手に快投したピッチングや19歳らしからぬ完成度の高さ、将来性の高さを評価され、10月17日、埼玉西武ライオンズから7位指名を受け、目標通り最短1年でNPBの扉を切り開いたのである。

 キャンプインまで体力面の強化を挙げてトレーニングに励んできた。昨年、初めて1シーズン投げてみて、独立リーグではあるが、プロ野球選手として投げる大変さを実感した。

「高校時代と比べると、身長、体重はそれほど変わっていないのですが、球速が上がったことで、その分、出力も大きくなるので、体への負担も大きくなり、終盤のけがにつながっていたと思います。

 指名されてからは技術よりもまず体力と思って取り組んでトレーニングしてきました。技術については、キャンプインしてからでも、コーチや先輩の方々に技術的な話を聞いていったほうが良いと思ったので、ケガをしない体づくりに励んできました」

 また埼玉西武でも「相手を気にせず、自分のことに取り組む」スタイルは継続する。徳島インディゴソックスの関係者が評価してきたどんな場面でも動じないメンタルと昨シーズン末から取り組んできた体力的な部分がかみあってくれば、一軍の活躍も夢ではない。

(取材=河嶋 宗一

関連記事
秋の四国で見つけたダイヤの原石 徳島インディゴソックスの「ドラフト候補クインテット」
NPBへの輩出偏差値からわかる!NPB入団へ最も近道となるチームは徳島インディゴソックスだった!
徳島の地に踏み出したロマンあふれる大型右腕 森祐樹(徳島インディゴソックス)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.26

【春季四国大会逸材紹介・高知編】2人の高校日本代表候補に注目!明徳義塾の山畑は名将・馬淵監督が認めたパンチ力が魅力!高知のエース右腕・平は地元愛媛で プロ入りへアピールなるか!

2024.04.26

今週末に慶應vs.横浜など好カード目白押し!春季神奈川大会準々決勝 「絶対見逃せない注目選手たち」!

2024.04.26

古豪・仙台商が41年ぶりの聖地目指す! 「仙台育英撃破」を見て入部した”黄金世代”が最上級生に【野球部訪問】

2024.04.26

【奈良】智辯学園が13点コールド!奈良北は接戦制して3回戦進出!<春季大会>

2024.04.26

【春季奈良県大会】期待の1年生も登板!智辯学園が5回コールド勝ち!

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!