岐阜を代表する二刀流・元 謙太(中京学院大中京)。来季は同世代の投手に負けないピッチングを目指す!
今年の夏の甲子園でベスト4入りした中京学院大中京。阪神タイガースから指名を受けた藤田健斗捕手を中心に投打ともに実力がある選手が揃っていたが、その中で2020年度のドラフト候補として期待したい選手がいる。それが元謙太だ。
東濃シニア時代から140キロを超える速球投手として評判だった元は中京学院大中京に進み、投打で高い能力を発揮し、中心選手へ成長した。今では主将としてチームを引っ張る元に来季にかける意気込みを聞いた。
プロ入りした先輩・今井に憧れ、中京へ
元 謙太(中京学院大中京)
小学校時代から中日ドラゴンズジュニア入りし、ジュニアトーナメントに出場するなど、岐阜県内では指折りの選手だった元。高校では県外で野球をやるつもりだった。
「特に中学1年生の時は大阪桐蔭でやりたいと思っていましたし、そのような選手になりたいと思いました」
そんな元が地元の中京学院中京に進むきっかけとなったのは、2016年夏の甲子園に出場した中京学院中京の主力打者だった今井順之助(北海道日本ハム)の存在だ。
「僕が所属していた東濃シニアの監督さんが順之助さんのお父さんだったんです。その関係で、甲子園で中京の試合を見たり、順之助さんから中京の環境などいろいろ話を聞いて中京に行きたいと思いました」
元は今井とは仲が良く、中京の話だけではなく打撃も教わっていたという。もう1つ、中京学院大中京に進むきっかけとして元は森昌彦コーチの存在を挙げた。森コーチはもともと愛知・豊川の監督、コーチとして2014年、田中空良(現・東邦ガス)を147キロ右腕に育て上げ、選抜ベスト4を経験。その指導力を評価され、中京学院大中京のコーチに就任していた。そんな森コーチの下で、投手としてレベルアップしたい思いがあったのだ。
「森コーチの存在は入学の決め手の1つとなりました。森コーチの教えはすべて取り入れているつもりです」
入学後は森コーチの指導や1学年上のエース・不後 祐将の背中を見て学んできた。特に森コーチに教わったのは「準備」の大切さだ。
「森コーチからは『マウンドでは一人で立つものだから、だからこそ準備が大事だ』と言われ、イニング間でベンチに座っている姿勢や、2アウトからのキャッチボールの重要性を言われ続けてきました。今では当たり前のことかもしれませんが、入学した時の僕はそれさえもできていませんでした」
また投手の鉄則として内外角に投げ分けることが原則になるが、そのために元は森コーチから「小手先で投げるのではなく、体をしっかりと使って投げることが大事と教わりました」
さらに森コーチから決め球のカットボールを学び、ピッチングの幅を広げてきた。
フォームを突き詰め、自然と自己最速を更新できるピッチングをしたい
元 謙太(中京学院大中京)
そして不後からは投手としての在り方を学んできた。
「不後さんが投球練習をするときはずっと後ろから見ていました。不後さんは1球1球、丁寧に投げている姿はとても勉強になりましたし、マウンドに立った時のマインド、変化球の質。そして常に全力で投げているわけではなく、抜きどころも大事だと教わりましたし、不後さんからは気持ちが強い投手なので、そういうところも学びました」
甲子園の取材で不後が明かしてくれたが、元と不後は寮が相部屋。不後は野球の話だけではなく、元のプライベートの相談にも乗ったという。元は不後のことを兄のように慕えば、不後も元のことを弟のように可愛がった。
加えてチームメイトの誰もが慕い、観察力のある主将で正捕手の藤田健斗とバッテリーを組んだことにも恵まれた。
元は1年夏からベンチ入りし、公式戦の登板を重ねながら、実戦的な投手へ成長した。夏では主にリリーフ投手として活躍。夏の甲子園準々決勝の作新学院戦では、試合を決める満塁本塁打を放つ。
「あの場面は無死満塁で打席が回ってきて、打つしかない場面でした。あの場面は大きいのを狙っていましたし、先輩からも『狙ってこい!』といわれたので、思い切り振った結果がホームランとなりました」と殊勲打を振り返った。
しかし4試合を投げて、防御率6.43に終わったピッチングの面では納得していない。
「6月の時に肘の怪我があって、球速も落ちてしまい、思うようなピッチングができませんでした。結果的に抑えることはできましたが、イニングの途中で降板してしまうなど、僕にとってはふがいない投球内容でした。コンディションをしっかりと整えて投球ができればと思いましたし、今ではそういう状態で投げられるようにしたいと思っています」
そして新チームでは主将に就任。秋では4、5番を打ち、チームを引っ張る大黒柱となった。主将として元は、昨年のチームのマインドを引き継いで、勝てるチームを目指している。
「今年のチームは、去年の3年生より個人のスキルが落ちる部分はあるので、チーム力、絆の部分を大事にしたいと思います。チーム力の大事さ、粘り強さというのは、去年の3年生を見て学んでいると思うので、なんとしてでもどういう形でもいいので打って得点を取り、勝ち上がる野球ができればと思っています」
また投手としてはコンディショニングを良くしながら、レベルアップすることを誓った。
「まず今年の甲子園にも出ていた同世代の投手と互角で勝負できるようになるには、トレーニングをしっかりと行っていきたいですし、そして森コーチと協力しながら、投球フォームにも突き詰めていきたい。
今の最速は143、4キロ。特にスピードにこだわりはないのですが、投球フォーム、体の使い方をよくすることができれば、コントロールだけではなく、速球のスピードも自然と上がっていくので、フォームを突き詰めていきながら、総合力を高めたいと思います」
秋優勝で、東海大会ベスト4の県立岐阜商、準優勝の大垣商、ベスト4の大垣日大など私立、公立問わず実力校が揃う今年の岐阜県。そのライバルを打ち破るためには元の投手としての成長がカギを握っていると言っても過言ではない。
(取材=河嶋 宗一)