Interview

安田 尚憲(履正社)「打撃の求道者、あくなき追求が劇的勝利を呼び込む」

2017.09.08

 9月7日、第28回WBSC U-18ベースボールワールドカップ6日目。スーパーラウンドにと突入した侍ジャパンU-18代表はオーストラリアと対戦。苦しい試合を制したのは日本だった。ヒーローになったのは、高校通算65本塁打のスラッガー・安田尚憲だった。オープニングラウンドでは打撃不振に苦しんでいた安田。その復活劇を追った。

自分は構えを最も大事にしている

安田 尚憲(履正社)「打撃の求道者、あくなき追求が劇的勝利を呼び込む」 | 高校野球ドットコム
グリップの位置に注目! 左が2年秋 右がU18のオランダ戦

 安田は一言で表現するならば、「求道者」だ。とにかく打撃面の追求が凄い。構えが変わったり、始動のタイミングが変わったりと、微調整しながら打席に入る。1つのところでじっとしていられない。そんな選手なのだろう。

 安田は、この夏、19打数12安打、打率.632、3本塁打、12打点と圧巻の打撃成績を残したが、U-18入り後、安田はまた構えを変えた。バットを立てて構えていたのを、グリップの位置を下げて構えるようになったのだ。安田は構え方こそ最も大事にしていることである。

「僕は構え方こそ最も大事だと思っています。この構えにしたのは、力みを取ることですね。僕は力みやすい癖がある。この位置にすることで、リラックスができて、力が上手く抜ける。そしてタイミングも、投手との距離感を掴めるので、合いやすくなります」

 この回答から、安田は打撃について深く考えていることがうかがえる。安田は国内合宿で大学生相手に2試合連続本塁打を放った。大学生投手のレベルは高かった。140キロを超える速球を投げる投手に対しても、平然と自分のバッティングができる安田の姿を見ると、U-18では最も活躍が期待できる選手だと期待してしまう。しかし本大会に入ってからの安田は不振に入り、オープニングラウンドでは、17打数5安打、2打点と満足いく打撃ができなかった。オープニングラウンドのオランダ戦の後、安田に話を聞くと、思いつめた表情だった。求めるものが高い分、悩みも大きい。そんな顔だった。

 しかし不調のままでは終わらない。安田は、打撃面の意識を変えた。変えたのは軸足の体重の置き方だ。

「振り返ると、打とう打とうとうするあまり、体が前に突っ込みがちでした。意識したのは軸足で、なるべく軸足を残しておこうという意識で打席に入りました」
その効果はてきめんだった。第1打席から痛烈な右前安打を放ち、第3打席はスライダーを引っ張り、ライト線を破る痛烈な適時二塁打と徐々に安田らしい当たりとなってきた。安田も打撃面で手応えを感じていた。
「ボールが見えやすくなり、距離感がしっかりととれるようになりました」
この微調整が、自身をヒーローに呼び込んだ。延長11回裏、一死満塁の打席で回ってきた安田。「とにかく緊張で、がちがちでした」と振り返るこの打席。無心で振り抜いた打球はセンターへ抜け、サヨナラ安打。世界一へ向けて、1敗もできない状況。非常に価値のある一打となった。
「やっと勝利に貢献する活躍ができて良かったと思います。本当にほっとしました」
安田はようやく安どの表情を見せた。しかし連戦はまだ続く。カナダ、さらにキューバから17得点を奪った韓国と、強敵が続く。
「これで勢いが続いたので、明日、明後日と日本らしい戦いができればと思います」と意気込んだ。

 ようやく復調の兆しを見せた打撃の求道者・安田尚憲。悲願の世界一へ。打ちだしたら止まらない夏の大阪大会の猛打をカナダの地で発揮したい。

(取材/文・河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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