徳山壮磨(大阪桐蔭) 「選抜優勝投手を支える微調整術」
ついに始まった第28回WBSC U-18ベースボールワールドカップ。日本代表はメキシコ代表と対戦。そのメキシコ代表に7回1失点の好投を見せたのが、大阪桐蔭のエース・徳山壮磨である。試合後、「勢いをつけるピッチングができた」と笑顔を見せる徳山。徳山のウリである実戦力の高さ。その内側について迫った。
ピンチの時ほど冷静になることに努めている
徳山壮磨(大阪桐蔭)
本当に強い精神力の持ち主である。夏、徳山が投げる試合はいつも強力打線が外当てだった。大阪大会では、履正社、大冠。甲子園では智辯和歌山。そしてメキシコも、一発を秘めた強力打線。そういう打線に対しても最少失点で抑えて、勝利に貢献してきた。
徳山で特に光るのが、ピンチの場面でのピッチング。何度も潜り抜けたピッチングこそ甲子園通算7勝の原動力となったが、それはメキシコ戦でも変わらなかった。徳山が心がけているのは、ピンチの時ほど冷静になること。
「ピンチだと思ったら、力が入って、自分のマックスのパフォーマンスができないと思うので、そこは力を抜いて、中村君のミットを目がけて、投げ込んでいきました」
その粘り強さを発揮されたのは4回裏と5回裏。4回裏、一死一塁から6番MACIELに左越え二塁打を打たれ、一死二、三塁のピンチ。それでも強気のピッチング。7番GONZALEZを投ゴロに打ち取り、8番MANZANAREZに死球を与えて、9番MENDOZAにも死球を与え、1点を失ったが、1番PEREZをストレートで投ゴロに打ち取った。この回を振り返って、徳山が球持ちが浅くなっていることに気づいた。
「ボールが滑りやすく、マウンドも硬く、投げづらかったです。4回終わってボールが抜けていたので、球もちを長くすることを決めました」
球持ちを長くすることを意識した徳山。この日は135キロ前後と突出して速くはなかったが、それでも5回裏から回転数が高いストレートを投げ込んだ。抜け球が少なく、捕手・中村 奨成の話し合いでインコースを中心に攻めて、この回は無失点。さらに5番OSORIOを初球、内角ストレートを投げこみ、バットを折っての遊ゴロ。6回以降も、メキシコ打者の懐をえぐる内角ストレートで、7回1失点、95球の熱投でマウンドを降りた。
徳山が明かした微調整法とは
徳山壮磨(大阪桐蔭)
改めて徳山の実戦力の高さが勝利に導いた試合となったが、この試合で光ったのは徳山の修正力の高さである。5回裏から球持ちを長くしたという徳山。試合の中でリリースの微調整ができるようになったのは選抜からだという。
「自分でこういう時はこうするという引き出しは持っているので、自分の引き出しをしっかりと出せたと思います。センバツでそれができるようになって、自分自身、成長できたと思います、変わったきっかけになったと思います。マウンドが硬くて、球もちを長くするのは難しいことなのですけど、意識したのは体重を後ろに残して、リリースでは前で離すことを意識しました」
これまでコラムなどで徳山の実戦力の高さを高く評価してきたが、高レベルな微調整技術で、勝てる投手となっていたのだ。
これで国際大会で戦える手ごたえを掴めたかと聞くと、まだ不安を残す部分があるようだ。
「まだですね。今日は変化球が抜けてしまって、ストレート中心。中村君からはストレートが勝れば、押していこうと話をして、ストレート中心でうまくいったんですけど、このままではもっと強いチームには捉えられてしまうので、変化球の精度を高めて、修正してやっていきたいと思います」
自分の反省点も分かっている。徳山の粘り強いピッチングの裏には、繊細な感覚によって成り立っていることを知ると、なぜ全国舞台、国際舞台で活躍できるかがわかってくる。
さすが選抜優勝投手。徳山のピッチングは高校生の枠を超えた大人の領域に達している。
(取材/文・河嶋 宗一)