「気持ち」を強く持ちつつ、仲間を信頼し「チームが一つ」になって試合に勝つ。高校時代に得た学びは、今やプロ野球を生きていく上での美学となっている。「自分だけ独りよがりにならないというのは、身に付いています」
今使用しているグラブには自分の名前以外、言葉は刺繍されていない。それは、刺繍せずとも「気持ち」をコントロールできる術を体得した証といえるかもしれない。
気付きを得るきっかけを

中村 勝投手(北海道日本ハムファイターズ)
取材をさせていただいた日は、ちょうど母校の夏の甲子園予選の試合日だった。結局雨で中止になったのだが、その日に試合があることは知っていた。今でも、春日部共栄の試合結果は気になるようだ。
「よくグラブの手入れをしながらその日の練習や試合を反省する、という話を聞きますけど、高校時代はしていなかったと思います。というより、家でも部室でも常に考えていた。で、ある時ぱっとひらめくものがあったりして」
今ほど野球を論理的に考えてはいなかったのかもしれない。いうなれば、高校時代は「気づき」の3年間だった。そんな中村投手が現役高校球児におくる言葉がまた“らしい”。
「僕のピッチングが変わることになったきっかけとして、フォーム改造と同時にウエイトトレーニングを取り入れたというのはあると思います。でも、今の高校生ならウエイトトレーニングや技術練習はたくさん積んでいると思う。それ以外となると…冬の期間にみんなで遊び半分でやっていたサッカーのミニゲームとかですかね。
高校時代の印象として、レクリエーションも含めてずっと動いていた感じなのですが、リラックスで動いているつもりが、結果的に技術練習や体力練習になっていたり、何かをひらめくヒントやきっかけになったりする。僕自身、当時はそこまで自覚していたわけではないですが、結果的に役立ったと感じています。とにかく身体を動かすこと。それは決して無駄にはならないはずです」
きっかけはどこに眠っているか分からない。であれば、「数を打てば当たる」よろしく、きっかけとなる機会を積極的に増やす。高校時代のグラブを眺めながら語る中村投手の目には、当時の自分の姿が映っているかのようだった。
(インタビュー・文/伊藤 亮)
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