それぞれの年代に合った指導を! 筑波大・川村監督による指導者講習会
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鹿児島大硬式野球部OB会主催の中学・高校・大学指導者講習会が12月1、2日の両日、鹿児島市内であった。「中学、高校、大学、それぞれの年代でつながりのある野球指導を目指して、共通理解を深める」(志布志高・塗木哲哉監督)ために初めて実施された講習会で、同大OBの中学、高校野球指導者や現役大学生らが参加し、筑波大硬式野球部の川村卓監督を指導者に招いて講演会と実技指導があった。
一日目 講習会 「中学・高校・大学 つながりのある野球指導」
初日は鹿児島大で「中学・高校・大学 つながりのある野球指導」と題して講演。野球コーチング論の研究者でもある川村監督は、小学生からそれぞれの年代で何を中心に教え、何を教えないかの体系だった指導法を研究している。サッカーなら、小学生はボールテクニック、中学生で戦術、高校生はフィジカルと大まかな指導理論が確立されている。
野球も当然、その年代に合った指導法があってしかるべきだが、残念ながらサッカーに比べると遅れている。川村監督は、関東の1部リーグに所属する大学選手301人にアンケート調査を実施し、走塁、捕球、送球、打撃などそれぞれの技能取得がいつだったかのデータを取り、どの時期に何を教えたらいいか、理にかなった指導法のヒントなどを話した。
一日目 野球指導法について白熱した講習会
例えばフットスライディングやヘッドスライディングなど走塁の基礎技術は小学生、基本のベースランニングは中学生、状況を読んだ走塁は高校生の時期に伸びているというデータがある。打撃に関する技術は筋力が発達する高校生の時期に大きく伸びる傾向がある。小学生や中学生の肘痛は、高校以上になったときのパフォーマンスに響く恐れがあり、早めに完治させることが重要だ。肘を挙げる感覚を身につけるために、大きなボールを使ってサッカーのスローインの要領でのオーバースローや、高さ1mぐらいの台の上から下に向かって投げるなどのドリルや、チーム内のコミュニケーション能力を高めるために7人野球をするなどの練習方法を紹介した。
二日目 実技指導 「打撃、守備、投球などの練習方法」
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2日目は鹿児島玉龍高グラウンドで実技指導。鹿大の学生がモデルになり、打撃、守備、投球など、それぞれの練習方法を紹介した。打撃では「金属から木製に代わるとごまかしがきかなくなる。ここで徹底して基本を見直した方が良い」とトスバッティングやティーバッティングの方法をいくつか伝授。足を固定したり、前後左右、上下に振るなどの動作を入れながらタイミングの取り方を覚え、ボールを打球方向にしっかり押し出す感覚を身につける練習だった。
守備では、良いポイントで打球を捕る感覚を覚えるのにあえてトンネルさせてみたり、捕球時の間を作るための内転筋や臀(でん)筋の使い方などを伝えていた。「簡単な練習の時こそ、身体をどう使うかを考えてやろう」と檄を飛ばしていた。
喜界高の床次隆志監督は「我々が子供の頃、遊びの感覚で覚えたことに通じるものがあった」と感想。鹿児島川内高の佐々木貞明監督は「今まで感覚的に分かっていたことに、具体的な裏付けや理論づけができて指導の幅が広がる」と手ごたえを感じた。
二日目 鹿大生をモデルに実技指導を行った
和田中の篠崎啓太監督は就任2年目の若手監督で「日々中学生を教える難しさを感じる中で、子供の発育に合った練習方法が勉強になった」という。スローインの要領で肘を挙げる感覚を身につけるドリルなどは早速取り入れるつもりだ。鹿大の学生にとっては、日頃専門の指導者がいなくて、学生だけでチームを運営している中、専門家の指導を受けられる貴重な機会だった。1年生の川池優大は「基本に返ることや身体の芯を作ることの大切さ」を実感できた。これまでウエートトレーニングなどはアウターを鍛えることが中心だったが、身体をしっかり使いこなすためのインナーも鍛えることをこれから心掛けていきたいという。
指導にあたった川村監督はこの2日間で、特に「中学の先生の熱意を感じた」という。小学生からの一貫指導の体系化を研究している中で、実際の現場の指導者が何を求めているかを知る貴重な体験になったことを振り返っていた。
2日間、見学しながら、特に若手の指導者が目を生き生きと輝かせながら、話に聞き入り、自然と身体を動かしながらいろんなことを吸収していこうとする姿が印象に残った。鹿大野球部OB会の塩瀬重輝会長は「指導者は情熱と研さんを怠らないで欲しい」と開会のあいさつで話していたが、まさに情熱と研さんの熱気あふれた2日間だった。
(文・政純一郎)