球史に残る名勝負が多数 普及・強化への取り組みも始まる

大野稼頭央
大島のセンバツ出場に始まり、春・神村学園、NHK旗・鹿児島城西、夏・鹿児島実、2021年から引き続き、3年生年代の県大会では優勝校が大会ごとに入れ替わり、本命不在の混戦が続いた中、夏の決勝戦など球史に残るような名勝負が数多く繰り広げられた1年だった。近年、少子化の影響などで部員不足による小規模チームや合同チームが増える中、県選抜チームを組んで宮崎選抜と対戦するなど、普及・強化を目指した取り組みが実施されるなど、新たな試みが始まった年でもあった22年を総括する。
1月28日、第94回選抜高校野球大会(センバツ)の選考委員会で大島が8年ぶり2回目となる甲子園出場を決めた。8年前の14年は21世紀枠での出場だったが、今回は21年秋の九州大会準優勝と実績を残し、一般選考枠での出場となった。
センバツでは関東大会優勝校の明秀日立(茨城)と対戦。甲子園独特の雰囲気の中で自分たちの野球をやり切れず、0対8で敗れて無念の初戦敗退だったが、年明けから再び猛威を振るいだしたコロナ禍の中で、奄美大島からの甲子園出場が多くの島民や島出身者を勇気づけた。
センバツと同時期に開催された第150回九州地区高校野球大会鹿児島県予選。それまで2校だった九州大会出場校が優勝校のみとなった。前年秋準優勝の鹿児島城西が優勝候補の筆頭に挙げられていたが、コロナの影響で出場辞退となり、本命不在の大会となった。
決勝戦は、前年秋は2回戦敗退でノーシードだった神村学園と秋ベスト4の国分中央が対戦。国分中央は準決勝で左腕エース安藤 奈々利投手(3年)が樟南に完封勝ちし、初の決勝進出だった。9回まで両者無得点と緊迫した守り合いが続き延長戦にもつれたが、10回表に集中打で3点を奪った神村学園が3季ぶりの優勝を勝ち取った。
宮崎で行われた九州大会。センバツ出場の大島は小林西(宮崎)に初戦敗退だったが、神村学園は大分舞鶴(大分)、九州国際大付(福岡)とセンバツ出場校に勝って決勝進出。西日本短大附(福岡)を8対4で下し、10年ぶり4回目となる九州覇者に輝いた。
夏前最後の県大会となる5月の第64回NHK旗争奪鹿児島県選抜高校野球大会は、決勝戦が球史に残る名勝負となった。
九州大会覇者の神村学園と鹿児島城西、南薩地区のライバル同士の顔合わせとなった決勝戦は、神村学園が9回表まで7対1と一方的な展開で勝ち切るかと思われた。後がなくなった鹿児島城西は土壇場9回裏に8安打を集中。4番・明瀬 諒介内野手(2年)の2点適時打で同点に追いつき、最後は途中出場の6番・濱田 陵輔内野手(2年)が中前に弾き返し2時間49分の死闘に決着をつけた。ベンチメンバー18人の総力戦で劇的な逆転サヨナラ勝ちを収め、春の大会無念の出場辞退の雪辱を晴らした。
7月の第104回全国高校野球選手権鹿児島大会は64チーム70校が出場。春夏連続甲子園を目指す第1シード大島をはじめ、春の九州覇者の神村学園、NHK旗で劇的な優勝を勝ち取った鹿児島城西などに注目が集まる中、優勝を勝ち取ったのはノーシードの鹿児島実だった。
この1年間、左腕エース赤崎 智哉投手(3年)の故障などで思うような戦績が残せず、夏はノーシードに甘んじたが、初戦で神村学園に延長戦で競り勝ち勢いづく。準決勝では前年秋に苦杯をなめた鹿屋中央を下して決勝進出。大島との決勝戦は赤崎と大会屈指の好左腕・大野 稼頭央投手(3年)との投手戦となったが、中盤のワンチャンスでリードを奪い、終盤の大島の粘りを振り切って4年ぶり20回目となる夏の甲子園をつかんだ。
夏の甲子園出場は果たせなかった大島だが、これまで夏は8強以上になかなか勝ち上がれなかった壁を破って初の4強、決勝進出を果たした。決勝戦でも0対3で迎えた9回裏2死から粘って2点を返し、底力を見せた。決勝戦は試合開始前から長蛇の列ができ、内野席では収まり切れず、6回途中からは外野席も解放する事態となるなど、大きな注目を集めた決勝戦となった。
4強入りした鹿屋中央、国分中央、8強のれいめい、出水中央の戦いぶりも見事だった。
これまで部内でコロナ感染が出れば、出場辞退となるケースが多かったが、この大会は該当選手のみを入れ替えるという措置がとられた。いくつかのチームで大会当日のメンバー変更がなされた。ベストメンバーが組めずに涙をのんだチームもあったが、これまでのような出場辞退ではなく、試合ができたこと大きな前進といえるだろう。
3年ぶりに入場行進、開会式が実施された。暑さ対策として、5回後のグラウンド整備以外にも3回、7回終了時点で給水タイムを設けた。途中足がつるなどで選手が治療する際は全員をベンチに引き揚げさせて休憩をとるなどの工夫もなされていた。継続試合も導入され、今大会では大会2日目の2試合が継続試合となった。
出口の見えないコロナ禍、暑さ対策、困難な課題が様々ある中でも、選手ファーストを考えた対応策がとられていたのがみえた点でも、有意義な大会だった。

破損した防球ネット
9、10月の第151回九州地区高校野球大会鹿児島県予選は開幕直前の台風14号の影響で鴨池市民球場の防球ネットが破損。使用不能となったため、急きょ平和リース球場のみの開催となり、大会日程を大幅に変更するなどアクシデントに見舞われた大会だった。
九州大会出場をかけた準決勝では神村学園が国分中央に競り勝った。鹿屋中央は、優勝候補の本命に挙げられていた鹿児島城西を相手に6回表まで0対6とあわやコールド負けの展開から6回裏に集中打で9点を挙げて逆転勝ちし、3季ぶりとなる九州大会出場を勝ち取った。
決勝戦は神村学園が逆転勝ちで2季連続優勝。沖縄で行われた九州大会では神村学園、鹿屋中央とも初戦敗退だった。
秋の大会後の10月末には鹿児島選抜チームの選考会があり、11月13日に都城市で鹿児島選抜と宮崎選抜の交流戦が2試合あった。2試合とも惜敗だったが、学校の枠を超えた交流と野球の普及、発展、強化を目指す意味でも意義深い取り組みとなった。
(記事:政 純一郎)