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フィジカルコンディションの考え方

2021.01.31

フィジカルコンディションの考え方 | 高校野球ドットコム

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 新型コロナウイルスの影響で部活動に制限のあるチームも少なくないと思います。3つの密といわれる「密閉」「密集」「密接」を避ければ、感染のリスクは少なくなると思いますが、自治体からの要請や学校での取り決めなどに従い、今できることをしっかり行っていきましょう。春のセンバツ、都道府県の春季大会が無事に開催されることを願っています。さて今回はフィジカルコンディションの考え方というお話をしたいと思います。自分の体をマネジメントするセルフコンディショニングにもつながるお話です。

フィジカルコンディションとは

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コップの水をあふれさせないようにコンディションを整えよう

 フィジカルコンディションとは文字どおりに表現すると「フィジカル」=体、「コンディション」=状態、のこと。体調ととらえることもできます。自分の体を整えることをセルフコンディショニングと言いますが、野球選手にとって自分の体をよりよい状態に保つことは、パフォーマンスを高めるためにも大切なことです(※余談ですが「身体」と表現するときは、体だけではなく心理的な側面も含まれます)。このフィジカルコンディションを常によい状態に保ちながら、プレーできることが理想的ですが、このフィジカルコンディションはさまざまなものによって良くなったり、悪くなったりします。

 野球の練習を行うと当然、体は疲労しますし、その疲労回復が十分になされていない状態でさらに練習を積み重ねると、フィジカルコンディションは下がってしまい、より良いプレーができないだけではなく、ケガや体調不良につながることもあります。皆さんは日頃から疲労をためないようにストレッチを行ったり、十分に睡眠をとったりすると思いますが、こうした日々の積み重ねがフィジカルコンディションをより良い状態に保つ秘訣とも言えます。

人によって体力は違う

 同じ練習を行っていても、疲れて動けなくなる選手がいたり、疲労からケガをしてしまう選手がいたりします。一方で「ケガに強い」と表現されるような大きなケガとは無縁な選手も中にいることでしょう。これは個人個人の体力レベルに違いがあるからです。特に成長期にある高校生では体格や体力面で大きな違いが見られることは不思議なことではありません。

 ここでフィジカルコンディションをコップに見立ててみましょう。コップに注がれる水はさまざまな外的ストレスです。コップの水があふれないようにするためには、外的ストレスを減らすようにする必要があります。ここでいう外的ストレスは主に練習やトレーニングなどによる体力的な疲労ですが、減らすためには例えば十分な睡眠であったり、疲労回復のためのクールダウンや入浴、ストレッチ、そして疲労した体へのエネルギー源、体づくりに必要な栄養素を含む食事などが考えられます。このコップ(体)と水(外的ストレス)の関係が保たれた状態であれば、フィジカルコンディションは一定の状態を維持できると考えられます。

 ところがコップに水がどんどん注がれるのに、それを減らすための行動がなされない状態だとやがてコップの水はあふれてしまいます。コップの水があふれた状態はいわゆる「コンディション不良」であり、ケガに直結する状態ともいえます。睡眠不足やコンディショニング不足、偏った食事などが続いてしまうとコップの水はあふれてしまいます。さらにコップの水は体力的な疲労だけではなく、負担のかかるフォームで投げ続けることや体力レベルを超えたランニング量、足元を支えるシューズの不具合など、さまざまな「水」がコップをあふれさせるのです。

[page_break:ハイレベル選手のトレーニングを参考にするとき]

ハイレベル選手のトレーニングを参考にするとき

フィジカルコンディションの考え方 | 高校野球ドットコム
トレーニング動画を参考にするときは、体力とトレーニング負荷を考慮しよう。

 今はさまざまな選手やチームなどがトレーニング内容を公開しています。昔は知る術のなかったプロ野球選手のトレーニングなども参考にすることができます。ここで考えなければならないのは、コップ(体)と水(トレーニング負荷)の関係です。ハイレベル選手のコップはそもそも大きく、より大きな負荷に対しても耐えられるだけの容量を持ち合わせています。ところがコップの大きさが違うところに同じ負荷を注いでみるとどうでしょうか。

 コップの大きさが違うとすぐに水があふれ出してしまう…といったことも考えられます。参考にする際はトレーニング負荷に見合った体であるかどうか、トレーニング量などを自分のレベルにあわせることを心がけましょう。またコップに注がれた水を減らす努力も忘れずに行うことが大切です。

トレーニングはコップを大きくする

 コップから水があふれないように常によりよいフィジカルコンディションを保つことと同時に、コップそのものを大きくすることもできます。これがいわゆる「体づくり」といわれるもので、基礎体力を強化することがコップ(体)を大きくすることにつながります。練習やトレーニングなどで鍛えられた筋力をはじめとする体力要素は、時間をかけてコップを強固に、さらに大きくします。体力強化と体力的な疲労は表と裏の面を持ち合わせていますが、コップの水をあふれさせないようにしながらも、水を入れ続けるという、そのバランスがむずかしいところでもあります(ここはトレーニング指導を行う専門家の腕の見せ所です)。

 コップと水の関係を体と外的ストレスに見立ててみると、どうしてケガをするのか、ケガをしないためには何が必要かといったこともわかりやすくなると思います。さらにコップが大きくなると、それに伴って技術面でもできることが増えていき、パフォーマンスアップも見込めるようになります。皆さんも自分が今行っている体力強化、練習内容とセルフコンディショニングを確認し、コップの水をあふれさせないようにしていきましょう。

【フィジカルコンディションの考え方】
●フィジカルコンディションは「フィジカル」=体、「コンディション」=状態のこと
●コップ=自分の体、水=外的ストレスに見立ててフィジカルコンディションを考える
●水は体力的な疲労をはじめ、負荷のかかるフォーム、用具の不具合などがある
●水を減らすためには休養、栄養、そしてセルフコンディショニングを実践する
●ハイレベル選手のトレーニングを参考にするときは体力レベルと負荷を確認しよう
●トレーニングによってコップを大きくし、よりレベルアップした野球選手を目指そう

(文=西村 典子

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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