第224回 夏のパフォーマンスを支える飲み物とは2019年06月30日

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【目次】
[1]体に浸透しやすい濃度を考える
[2]スポーツドリンクを薄めて飲む理由


 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 暑い時期に行うスポーツは熱中症対策を万全にしなければなりません。野球は屋外で行うスポーツであり、夏の地方大会はどうしても外気温の高い状態で試合をすることが多くなります。そこで今回は練習や試合などで心がけたい熱中症対策の中でも、基本となる水分・塩分補給と運動に適した飲み物について考えてみたいと思います。

体に浸透しやすい濃度を考える



適切な塩分・糖分を含む飲み物をこまめにとろう

 熱中症予防の水分補給として、日本スポーツ協会では0.1〜0.2%の食塩(ナトリウム40〜80mg/100ml)と糖質を含んだ飲料を推奨しています。特に運動時間が長くなる場合(1時間以上〜)は4〜8%程度の糖質を含んだものを摂取することでエネルギー源の補給とともに、より速く体内の水分量が回復するという研究もあります。砂糖(ぶどう糖と果糖が1分子ずつ結合したもの)が含まれた飲料水は、腸での水分吸収を加速させる効果が期待できるだけではなく、選手が「おいしい」と感じるものは飲みやすく、十分に必要量を摂取しやすいため、結果として脱水状態の予防・改善に役立つと考えられています。

《アイソトニック飲料》
体液と同程度の糖分、電解質(塩分)を含む飲料です(糖質濃度は約8%)。体液と同じくらいの浸透圧であるアイソトニック飲料では水分・糖分・塩分がバランスよく吸収されますが、発汗により塩分が多く排出されると体液の浸透圧は低くなり、ハイポトニック飲料に比べて水分の吸収スピードは少し遅くなります。

《ハイポトニック飲料》
体液よりも低い濃度の糖分、電解質を含む飲料です。人間の体液と比べて浸透圧が低く、水分の吸収が速いとされています。そのため、運動中や運動後で水分補給が早急に必要な場合には、ハイポトニック飲料が適しているといわれています(糖質濃度は約2.5%)

【経口補水液がおいしいと感じるとすでに脱水状態?】
 ドラッグストアやコンビニなどで手に入る経口補水液は、脱水症状が見られる場合に素早く対策をとるために開発された飲み物です。基本的には脱水状態の人に対して水分補給を行う目的で作られているため、アイソトニック飲料やハイポトニック飲料などよりも電解質の濃度が高い(塩分濃度が高い)ことがその特徴として挙げられます。脱水症状が起こった場合、病院では主に点滴によって体液に直接水分を補給しますが、この点滴液を経口から摂取できるようにしたものが経口補水液です。

 ベンチ裏などに経口補水液を準備することもあると思いますが、脱水症状を起こしていない選手が予防的に飲むものではなく、むしろ脱水傾向のある選手に積極的に飲んでもらうためのものであることを理解しておきましょう。脱水を起こしていない選手が経口補水液を飲むとあまりおいしいと感じませんが、脱水状態にある選手は経口補水液を「おいしい」と感じることが多いようです。

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プロフィール

西村典子
西村 典子 トレーナー
  • ■ 生年月日:1970年12月5日
  • ■ 出身地:大阪府
  • 奈良女子大学文学部教育学科体育学専攻卒。野球用品メーカーにて勤務後、トレーナーとして10年以上にわたり高校野球・大学野球の現場にたずさわる。野球現場での活動を通して自分たちで自分の体をマネジメントする「セルフコンディショニング」の重要性を感じ、チーム・選手・指導者にむけてスポーツ傷害予防や応急処置、トレーニング(ストレングス&コンディショニング)に関する教育啓蒙活動を行っている。

    一般雑誌、専門誌、ネットなどでも取材・執筆活動中。また整形外科ドクターと野球の傷害予防に関する共同研究活動なども行っている(現在の研究テーマは手指血行障害について)。

    現在、東海大学硬式野球部アスレティックトレーナーをはじめ、さまざまな高校野球部を担当中。
  • ・日本体育協会公認アスレティックトレーナー
    ・NSCA公認ストレングス&コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)
    ・NSCA公認パーソナルトレーナー(NSCA-CPT)
    ・日本スポーツ整形外科学会会員 等
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