第206回 肩の機能解剖 ゼロポジションとスキャプラプレーン2018年11月30日

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【目次】
[1]肩への負担を軽減するゼロポジション
[2]スキャプラプレーンとは


 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 オフシーズン期では体力レベルの向上とともに、体の不安部位や弱いところを強化するためのトレーニングなども積極的に行っていく必要があります。特に投手はシーズン中に負担のかかった肩のコンディショニングを入念に行うことが増えてくるでしょう。今回は肩のトレーニングを行う時に必要な機能解剖の用語(ゼロポジションとスキャプラプレーン)について説明してみたいと思います。

肩への負担を軽減するゼロポジション



図206_1

●ゼロポジション
 肩関節における「ゼロポジション」という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。野球の投球動作やバレーボールのスパイク動作の時に腕を挙げますが、このときにゼロポジションであることが肩への負担を軽減させることにつながると言われています。ゼロポジションと呼ばれるには2つの理由があります。

1)上腕骨と肩甲棘(けんこうきょく)が一致したポジション
 肩甲骨には後面に肩甲棘と呼ばれる出っ張り部分が存在します。この棘と上腕骨は腕を挙げていくにつれて運動軸が一致するポジションがあり、そのポイントをゼロポジションと呼んでいます。個人差はありますがおよそ腕を140°程度挙上したところに存在すると言われています。ガッツポーズの状態を想像するとわかりやすいと思いますが、肩甲棘と上腕骨の運動軸が一致したところでは両者のなす角はゼロとなります。これはレントゲン撮影でも確認できます。

2)上腕骨へのひねりストレスがない
 ゼロポジションになると上腕骨には外旋や内旋といった回旋ストレスがない状態となります(力がゼロ)。肩の安定性を高めるローテーターカフ(腱板のこと、以下インナーマッスルと表記)は前面に肩甲下筋、上方に棘上筋、後面に棘下筋、小円筋という筋肉が存在しますが、ゼロポジションの状態ではそれぞれの筋肉に回旋ストレスがかからないため筋緊張のバランスが保たれた状態となり、関節は安定します。こうした特性は肩関節脱臼時にゼロポジションで牽引すると比較的容易に修復しやすいというところにも見られます(図206_1)。

頭の後ろで手を組んで、そこから肘を伸ばすとゼロポジションの肢位がとれる



図206_2

 ゼロポジションを維持して投球動作を行うことは、運動軸を一致させ、インナーマッスルへの負担を軽減して肩の安定性を保つことに貢献します。選手には「両手を頭の後ろで組んで、そこから腕を動かさずに肘を伸ばす」と伝えるとわかりやすいと思います(図206_2)。また投球時に「肘が下がっている」と指摘されるのは、このゼロポジションの位置から肘が下がっていることを指し、この状態で投球を繰り返すと肩だけではなく肘などにも大きな負担がかかってしまうことになります。

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プロフィール

西村典子
西村 典子 トレーナー
  • ■ 生年月日:1970年12月5日
  • ■ 出身地:大阪府
  • 奈良女子大学文学部教育学科体育学専攻卒。野球用品メーカーにて勤務後、トレーナーとして10年以上にわたり高校野球・大学野球の現場にたずさわる。野球現場での活動を通して自分たちで自分の体をマネジメントする「セルフコンディショニング」の重要性を感じ、チーム・選手・指導者にむけてスポーツ傷害予防や応急処置、トレーニング(ストレングス&コンディショニング)に関する教育啓蒙活動を行っている。

    一般雑誌、専門誌、ネットなどでも取材・執筆活動中。また整形外科ドクターと野球の傷害予防に関する共同研究活動なども行っている(現在の研究テーマは手指血行障害について)。

    現在、東海大学硬式野球部アスレティックトレーナーをはじめ、さまざまな高校野球部を担当中。
  • ・日本体育協会公認アスレティックトレーナー
    ・NSCA公認ストレングス&コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)
    ・NSCA公認パーソナルトレーナー(NSCA-CPT)
    ・日本スポーツ整形外科学会会員 等
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