Column

なぜ今年の聖光学院は例年以上に粘り強いのか?強烈なキャプテンシーを持った主将のもと始まった日本一への挑戦

2022.08.13

 今年の春の東北王者・聖光学院(福島)。昨秋の東北大会では準優勝、さらに今春の東北大会では3試合連続逆転勝利を果たし、王者となった。今年の聖光学院は、信じられない底力を持ったチームで、東北大会の逆転劇は驚きの連続だった。いかにしてそんなチームになったのか。

なぜ今年の聖光学院は例年以上に粘り強いのか?強烈なキャプテンシーを持った主将のもと始まった日本一への挑戦 | 高校野球ドットコムトーナメント表
夏の甲子園の勝ち上がり

なぜ今年の聖光学院は例年以上に粘り強いのか?強烈なキャプテンシーを持った主将のもと始まった日本一への挑戦 | 高校野球ドットコム関連記事
ダントツの優勝候補の大阪桐蔭は何が凄いのか?大阪桐蔭に対抗できる優勝候補8校もピックアップ
第104回大会 全国47都道府県地方大会の日程一覧
甲子園注目選手

なぜ今年の聖光学院は例年以上に粘り強いのか?強烈なキャプテンシーを持った主将のもと始まった日本一への挑戦 | 高校野球ドットコム大会の詳細・応援メッセージ
第104回 全国高等学校野球選手権大会

打てないチームと評されたスタート時。救世主となったバッテリーの存在

なぜ今年の聖光学院は例年以上に粘り強いのか?強烈なキャプテンシーを持った主将のもと始まった日本一への挑戦 | 高校野球ドットコム
抱き合う佐山、山浅の聖光学院バッテリー *春季東北大会より

 新チームのスタート当初は、期待値は低かった。
 斎藤監督は当時を振り返る。
「私は公式戦に出場するAチームをメインに見ていますが、下級生を中心としたBチームは横山部長を中心としたコーチが見ています。Bチームの特徴や戦力、強み、弱みをしっかりと報告を受けて、新チーム時に引き継ぎます。

 今年のチームは全く打てない。打つことは期待できない分、守備を磨き、小技で点をとっていくしかないチームと聞いていました。実際に見ても本当に打てないチームでした」

 これまでのチームを率いた斎藤監督からすれば、このチームで甲子園に出場できれば、奇跡的ともいえるぐらいの能力値だった。ただ、計算できたのは、エース・佐山 未来投手(3年)、山浅 龍之介捕手(3年)のバッテリーの存在だった。

 「引き出しの豊富さは歴代の投手でもトップクラス」と斎藤監督が評するように、佐山は8種類の変化球を投げる器用さを持つ。山浅は、斎藤監督も高評価するほどのリードの上手さ、スローイング、キャッチング技術の高さを持っていた。高い捕手技術は、楽天シニア時代のコーチの指導で培われたものだという。

 山浅のおかげで勝てた試合があった。むしろそれがなければ、ここまでの躍進はないと評価する。昨秋の福島県大会2回戦の磐城戦で、象徴的なシーンがあった。1対1で9回裏に無死二塁のピンチを招いた。磐城は犠打を試み、チャンスを広げたが、山浅はリードが大きい二塁走者を見逃さず、抜群の強肩で二塁走者を刺し、ピンチを防ぐ。山浅は「こういうプレーは普段の実戦練習から想定していたので、いつも通りできました」とチームに勢いをもたらすプレーだった。結局、延長11回表に3点を勝ち越し、4対1で勝利を決めた。

 そして東北大会では打線も好調。準々決勝はコールド勝ち、準決勝も強豪・青森山田に5対2で勝利。ここまでの勝ち上がりは、まさに佐山と山浅のバッテリーの力のおかげだった。

 センバツでは、二松学舎大附(東京)を9対3で破り、初戦突破。斎藤監督にとっては全国大会で9得点を挙げたことはかなり大きなことだったと評価する。
「最近の甲子園でも9点を挙げた試合はない。新チームスタートした時、打てないと言われていたチームが9点を挙げたことはうちの野球部にとって大きな試合でした」

 2回戦で近江(滋賀)に敗れたが、山田 陽翔投手(3年)と対戦できたことを肯定的に捉えていた。このレベルの投手を打てないと全国制覇はないという明確な目標ができた。

[page_break:名将も絶賛する主将・赤堀颯のキャプテンシー
]

名将も絶賛する主将・赤堀颯のキャプテンシー

なぜ今年の聖光学院は例年以上に粘り強いのか?強烈なキャプテンシーを持った主将のもと始まった日本一への挑戦 | 高校野球ドットコム
赤堀颯(聖光学院)*春季東北大会より

 こうした粘り強いチームへ成長できたのは、赤堀 颯主将(3年)の存在が大きいと斎藤監督は語る。枚方ボーイズ出身の赤堀は、コロナ禍で活動停止があった20年4月当初も強い気持ちで同級生を奮い立たせていた。
「今年のチームを粘り強く、守り勝つチームとしっかりと定めて、戦うことができたのは赤堀の存在が大きいです。彼がBチームにいたときから、強いチームになるためにどうすればいいか。同級生たちと話ができていた。そして我々に言われてなくても、赤堀自らがチームメイトに発破をかけたり、厳しく接したりできる選手でした」

 また指導者にも提案ができる選手でもあった。今年の春季東北大会決勝戦では、アンダースロー・小松 桜吏投手(2年)が先発した。当初、別の投手の先発起用を考えていた。そもそも小松は準決勝の弘前学院聖愛(青森)戦で先発したが、打者2人に四球を与えて降板している。決勝戦の相手は強力打線の東北(宮城)。勝利のためなら、小松以外の先発起用にするのは当然だといえる。それでも3年生たちが小松は必要な戦力だとして斎藤監督に直訴し、小松の先発となった。

 小松は4.2回を投げて、5三振、3失点(自責点1)と力投を見せると、チームは逆転に成功し、東北大会王者に輝いた。今年の聖光学院は指導者の予測を超えるチームなのだ。

 赤堀が目指すのは「全国どころか、今までの聖光学院にもない無類のチーム」だという。

 斎藤監督は「今年は赤堀がいなければ今のチームはないです。今までも男気のあるキャプテンは多かったけれど、ここまで指導者に言われなくても自分からチームを変える、チームを作るキャプテンはいない」と大絶賛する。

 赤堀は「全員主役」というスローガンも掲げている。
 「ベンチ入りできるのは県では20人、甲子園では18人しか入れませんが、スタンド、ベンチとともに一体となって戦えるのが自分たちの持ち味です。スタンドが本気になって笑えて、泣けるようなチームがかっこいいと思っています。全学年ともに同じ思い、魂をもって戦えるチームこそ、日本一を狙えるに相応しいチームだと考えています。そう思っていただけるチームになるためにも、チーム一丸となって戦っていきたいと思います」と夏前にコメントしていた。

 夏の福島大会、甲子園初戦の粘り強い戦いは、まさにそれを体現した戦いだった。

 2回戦では激戦区の神奈川を勝ち抜き、初戦も接戦を制し、堅守を誇る横浜が相手となる。

 10年前のセンバツでは2回戦で横浜に敗れている。聖光学院の歴史に名を刻むためにも、今年の2回戦は重要な試合となる。これまで発揮してきた終盤の強さを発揮し、ベスト16入りを狙う。

(取材=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.04

【春季愛知県大会】注目の師弟対決の決勝、享栄が中京大中京を下して8年ぶり8回目の優勝

2024.05.04

1500人近くの中学生が肩肘検診を一斉に受ける!ポニーのお祭り行事・ポニーフェスタは今年も大盛況!

2024.05.04

【新潟】東京学館新潟、糸魚川がコールド勝ちでベスト16入り<春季県大会>

2024.05.04

【大阪】大阪桐蔭、大体大浪商などがベスト16で夏シード獲得、履正社は2年連続ノーシード<春季大会>

2024.05.04

【奈良】智辯学園、五條、郡山が8強進出、6日に智辯学園VS天理の準々決勝<春季大会>

2024.04.29

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.29

【福井】福井工大福井、丹生、坂井、美方が8強入り<春季県大会>

2024.04.29

【春季埼玉県大会】今年の西武台はバランス型!投手陣の完封リレーで初戦突破!

2024.04.29

東海大相模の149キロ右腕・福田拓翔が6回10奪三振の快投!「甲子園で150キロを投げたい」とセンバツV・健大高崎の石垣をライバルに!

2024.04.29

【石川】金沢、遊学館がコールド勝ちでベスト16入り<春季県大会>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.21

【兵庫】須磨翔風がコールドで8強入り<春季県大会>

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>